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第二十九話 波乱な晩餐会

本日7時投稿出来ず、申し訳ありませんでした!

お昼休憩のお供にしてもらえたら嬉しいです。宜しくお願いします。

 レイの表情に不安を覚えながら、(わたくし)はお父様の発表によりざわめく中、一身に注目を浴びる。


「この度は、我がモスフル王国の建国祭にお越しくださり、誠に有難うございます。そして、ただいま国王陛下よりお言葉を(たまわ)りました通り、(わたくし)は今年で成人を迎えました。ですが、まだ若輩者の身。ご教授ご鞭撻(べんたつ)のほどお願い申し上げます」


 実際、成人したばかりの身であり、女の(わたくし)は見下されかねない。

 他の国王陛下、ご子息様を立てながらもモスフル王国の女王になる身として堂々とした態度は必要だ。


 ――これは、それを見せる場でもある。


 話を終えた(わたくし)に盛大な拍手で返事をもらえてホッと胸を撫で下ろした。


「ルキディア王女様は、凛とされていて女王の風格がすでにおありで、モスフル王国も安泰(あんたい)ですね」


 下がっていいとのお言葉に、レイとチャコラがいる(そば)まで歩いていく中、各国の王陛下に囲まれたお父様の方から、称賛(しょうさん)の声が聞こえてきて、やりきったのだと思った。


「ルキディア様、お疲れ様でした。まさかの、花婿候補を募る話には正直驚きましたけどっ」

「チャコラ、有難うございます。(わたくし)も、話を聞かされていなかったので驚きました……。ですが、早い方だと子供の頃には許嫁がいたり、すでに婚姻されたりしているので遅い方だったと思います」

「まぁ、ルキディア様は他国とは違ってこの国の女王様ですからね。大事にされてきたということですよ。でも、お姉さんであるアタシとしては――」


 チャコラは無言で立ち尽くすレイに視線を向ける。

 (わたくし)も思わず視線を追って、レイの強張る表情に眉を寄せた。


 しばらく見つめていると、ようやく(わたくし)の視線に気がついたレイは大げさに肩を揺らす。


「はっ! ……ルキディア様、申し訳ございません。もとより、この身はルキディア様が花婿様を見つけられるまでお守りするお約束でしたので。大変喜ばしいことです……」

「レイ? 全然喜ばしく感じないんだけどぉ……」

「はい、分かっています。国王陛下から詳細がお話しされると思いますので……。無事に、お相手が見つかるまでは……変わらず宜しくお願いしますね」


 力無くうなずくレイは笑っているけれど、明らかに様子がおかしい。こんな表情のレイは初めてで、(わたくし)も困惑してチャコラを見ると、耳と尻尾を下げて首を振るだけで何も教えてはくれなかった。



 その後、お父様によって正式に発表された花婿候補を募り、婚約まで至るのは今年の冬だと知らされる。

 結婚は(わたくし)が20を迎える二年後。つまり、レイと一緒にいられるのもあと二年……。



 翌日、(わたくし)の部屋でお茶会をしているチャコラは闘志を燃やすように両手を握りしめて詰め寄ってきた。


「アタシは! "男"のレイと違って、ずっとルキディア様を支えますから!」

「有難うございます、チャコラ。とても嬉しいです。ですが、チャコラも素敵な方がいましたら、遠慮しないで言ってくださいね? 最大限の祝福をさせて頂きます」

「あー……そうですね? いまは、一人が楽しいので大丈夫です! それに、万一旦那を貰って子供が出来ても、育児しながら頑張るので!」


 耳をピンと立てて尻尾をブンブン振るチャコラに思わず笑ってしまう。(わたくし)にとっては掛け替えのない有難い言葉だ。

 でも、チャコラの子供は正直見てみたい気持ちもある……。


 ――チャコラの弟妹であるシャカさん、マカさん同様に可愛いに決まっているので!



◇ ◆ ◇


 レイはあれから鍛錬に打ち込んで、会話も最小限となってしまった。チャコラに聞いても、詳細は教えてくれない。


 そんなことを考えていると、扉をノックする音がして入ることを許可する。


「噂のレイじゃない。やっぱり、お茶会に参加したくなったのー?」

「いや……鍛錬が終わったから、少し様子を見に来ただけだ。何もないなら、俺は戻る」

「レイ、待ってください。問題は貴方の態度です。(わたくし)たちは、とても良い関係を築けていたはずです……。どうかしたのですか?」


 扉に手をかけるレイの後ろ姿は、どこか物寂しげに見えた。思わず立ち上がって不安をさらけ出す(わたくし)は、シーンと静まり返る室内で微かにレイの息遣いを感じる。


「申し訳ございません。俺の、お嬢に対する気持ち(・・・)は変わりません。昨日も、立派でした。あと数日だけ、時間をもらえますか? そうしたら、この感情(・・)とも折り合いをつけますので……ッ」

「あっ……レイ――」


 一切こちらを向くことはなく、再び部屋から出て行ったレイの後ろ姿と閉まる扉を見つめた。

 しばらく呆然(ぼうぜん)と立ち尽くしている(わたくし)は、チャコラに座るよう(うなが)されてソファーに腰を下ろす。


「大丈夫ですよ! レイも、ああ言ってましたし。何かあったら、アタシがガツンと言ってやりますから、もう少し待ってあげましょう。男って、アタシたち女よりも子供ですから」

「そう、なのですね……。分かりました! レイのことを信じて待つことにします。実は、今後について二人に話たいこともありましたし……」


 20までは自由にしてもいいとお父様は仰っていたけれど、今年婚約を発表したらどうなるか分からない。

 だから、やりたいことをする。


 それには二人の協力が必要不可欠だ。


 けれど、(わたくし)がやりたいことには大きな問題がある。

 何か、この国にとって重要な出来事があって、対処するために(わたくし)が動くことが理想なのだけれど……。




 そう都合のいい話は舞い込んで来ることはなく、昨日の建国祭まで忙しかった一ヶ月はあっという間に過ぎ、今日も平穏な一日が終わる。


 ただ、この後まさかの出会いを果たすことになるなんて夢にも思わずに――。

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