ヨボヨボ男爵と婚約させられました。私の引取り対価は銀貨1枚です。
「困ったなー。金庫はカラッポだぞ」
「そうね、もう打つ手がないわ。いくら進言しても聞かないバカ伯爵だから」
「今月もお給金なしかなー?」
「あなたも?そろそろ転職を考えた方がいいかもね」
ミリオネア王国マドレイヌ伯爵領の財務官はバカ伯爵の治世を嘆きながらもなんとかしようと苦心していた。
そんなとき、バカ伯爵はゴリダ男爵からせしめた結納金で買った女の腹の上で亡くなった。
バカ伯爵の子は茶屋の女を孕ませてできたグレース・マドレイヌだけだった。
私の名はグレース・マドレイヌです。本当の母は亡くなってます。3日前にバカ伯爵と揶揄されているマドレイヌ伯爵がやってきて継父に銀貨1枚(ニワトリ1羽分)を渡して私を引取り、ヨボヨボのゴリダ男爵と婚約させました。ゴリダ男爵邸に着いてから3日間教育を受けたとおり話したのですが、最初の挨拶で貴族の話し方ではないとバレてしまいました。いくら歳をとっても平民の血が混じっている者とは結婚できないと言われ、婚約を破棄されました。一方的な破棄でしたから結納金の金貨10枚は請求されませんでした。仕方なくお家に帰りましたが、継父は新しい女と暮らしていてお家に入れてもらえませんでした。途方に暮れて道ばたで座っていると田舎村の村長さんがふかし芋をくれました。村長のゴンゾウさんは自分の子にならないかと言ってくれました。ゴンゾウさんがいなかったら私は餓死していたでしょう。たかが芋ですが村にとって芋さえ大切なものだということはわかっています。そんなときマドレイヌ伯爵領の財務官バンズとドロシーと名乗る人が現れ、私が当主になったから来るように言われました。
バンズさんが私の部屋に来て涙ながらに訴えてきました。
「グレースお嬢様今日からあなたがマドレイヌ伯爵家の当主になりました。そこで相談ですがこの赤字をなんとかしていただけますか。溜まった給金を支払っていただけるとなおいいのですが、できればこの家の金目の物をいただける許可をください。パンだけではなく肉も食べたいのです」
「人を連れてきていきなりそんなこと言ってもわかりません。それなら赤字を黒字にすればいいのではないですか?」
「すばらしい。そのとおりです。その方法を聞いているのです」
分厚い資料を見たけど、全くわからない。だって読めない字が沢山あるんだもの。
『損益計算書は毎年マイナスです。おかげで貸借対照表の純資産の部がとうとうマイナスになりました』
バンズが一生懸命説明してくれるが、言っている意味がわからない。
『芋ない?』
「おーーーそうですか。そうですよね。『芋』かあー。気づかなかったー」
昼食の時間だからいつも食べている芋が食べたかった。私の世話係として来てもらったゴンゾウさんに貴重な芋をふかしてもらった。ゴンゾウさんは村長を子供に譲って私に付いて来てくれた。ゴンゾウさんのふかし芋は火の調整が抜群で誰のものよりも美味しい。
「おい!ドロシー、グレース様は平民との子と聞いていたが、すごいぞ。俺の作った資料をパラパラとみただけで食糧不足の解決策をみつけたぞ。芋はこれから植えるのにちょうどいい季節だ。他領から芋を購入するぞ。それを種芋にして増やす。芽が出たらどんどん植えて増やすぞ。領民にもすぐに実行させよう」
「バンズの作った資料をよく理解できたわね。字は汚いし、接続詞がやたら多いのに大したものね」
「それで種芋を買うお金はどうするの?」
「それは聞いてなかった」
「あんたは肝心なところが抜けてるわね
「ごめん」
「じゃあ。グレース様が本物の救世主か確かめるわ。私が行ってくる」
「ああ、ドロシーにまかせる」
「グレース様、相談があります」
「私にわかることですか?」
「バンズはあなたなら解決できると思ってます。まあどちらにして最終判断はグレース様です。どのような回答であっても借金はグレース様が背負うことになります」
「はあー。なんでしょう?」
「マドレイヌ伯爵領では前伯爵が浪費家で、しかも不作が続いて金庫はカラッポです。領民も難儀しています。食料危機については先ほど解決していただきましたが、お金がないと種芋を買うことができません」
「ねえ、教えて!私、もうヨボヨボ爺と婚約しなくていいのよね?」
「もちろんですよ」
「もう爺は嫌なの。別に運命と思って諦めてるけど爺は口が臭いのよ。せめて30歳までにして欲しい」
「その手がありますね。さすがです。婚約して結納金をいただきましょう。今度は若い子にしますよ。早速どこかに打診しますね」
「バンズ!!グレース様は天才だね、それに自分を商品にしてまで解決してくれたわよ」
ドロシーの作った釣書の最後に書いてあった文言が決定打となり、公爵家の長男とお見合いすることになった。
それは……
『なお、彼女の得意とするのは絶対に無理と思えることを一瞬にして解決することです。今なら結納金はお安くできますよ。お買い得ですよ。急がないと跳ね上がりますよ。最後に……まだ12歳ですからきっと美人になりますよ~』
ビジョン公爵家の跡継とお見合いをすることになった。まだ28歳だったからゴリダ男爵よりはましなんだけど、美男子は他にもいたのよ。でも私の選んだ伯爵の子は『この家は旧家ですが金をもっておりません』といってドロシーが却下した。
「なんでも解決するというのは君かい?」
「はい?なんのことでしょう?」
「釣書にでかでかと書いてあったよ。まあ誇大広告だと思うけど、僕も両親も藁にもすがりたいほど困っているんだ。それに将来美人になるらしいからね」
私の容姿はつい最近まで近所の子と外で遊び回っていたから顔も手もまっ黒に日焼けしている。元気な子供だ。
「君の容姿は、まあ将来に期待するとして、時間がもったいないから早く始めよう!秘密を話すんだから期待した答えが出なかったらゴミ箱に捨てるからね。ついでに君の領地も召し上げだよ」
(何でも解決できるなら今頃ここにいませんよ)
「ビジョン公爵領では山賊が爆発的に増えて治安が著しく不安定になっている。しかも討伐軍の兵士になろうとする若者がいなくて困っている。このままではビジョン公爵領は荒廃する。君だったらどう解決するかな?」
(なんか難しいことを言ってるわ。山賊?盗賊のこと?夜出るのは何だったけ?思い出せない。う~ん。あ、そうだ)
『夜盗よ!』
(それと)
『鐘ばい』
(しまった。貴族の話し方がまだ慣れなくて方言が出てしまった。山賊が襲ってきたことを知らせる鐘が鳴ったら逃げないとね)
「そうかーーーー!!その手があったか!!事実だったんだね。ぜひ婚約させてくれないか。通常の結納金の3倍支払うから他の誰とも婚約しないでほしい!!」
「はい?」
まだ何も返事をしていないのに、財務官のドロシーがさっさと婚約契約を締結してしまった。
結婚した後のマドレイヌ伯爵領はビジョン公爵領の一部となって、金持ちの公爵からいくらでも金を引っ張ることができるから万々歳らしい。
「父上、彼女はすごい。我が領の10年にわたる問題を一瞬で解決しました。父上の許可を受けずに申し訳ありませんが、他の貴族に獲られないようにその場で婚約しました」
「オスカリ、まだ12歳だろう?それほどの子か?」
「はい。この10年間で兵士は山賊に殺され、新たになる者も少なく半減しました。最近では山賊を恐れて兵士の成り手がありません。ところが彼女は発想の転換をしたのです。その山賊を『雇う』のです。そうすれば山賊の数は減り同時に兵士も確保することができます」
「山賊を雇うといっても、相手が承諾するか?」
「やつらは路頭に迷って山賊をしてるんですよ。山賊専門の兵士として『雇う』のですから『金』を通常の『倍』出せばいくらでも承知してくれますよ。それだけ出してもこれまで失った財産の十数分の1にも満たないですよ」
「それだけの解決策を一瞬で出したのか?」
「はい、要点だけをわかりやすく言ってくれました」
「他の貴族に獲られるな!すぐ結婚しろ」
「いいのですか?アイデアだけもらって解決すれば婚約を破棄すればいいのでは?」
「だめだ。兄上がミリオネア王国の国庫にある金貨が減り続けているからなんとかしてくれと相談があった。グレースを公爵家に入れておけば儂が次期国王となったときにグレースに解決策を出させればいい。捨てるのはそれからだ。しょせん平民との間にできた子などおぞましい」
「父上の考えがよく理解できました。私も賛成です」
「ドロシー、お見合いはうまくいったんだな!」
「そんなもんではないわ。明日結婚式よ。公爵家の長年の問題を一瞬で解決してしまったわ。それにマドレイヌ伯爵領もビジョン公爵領の一部となったからもうお金の心配はないわ」
「だったら俺たちはクビか?」
「何言ってるのよ。二人とも公爵家の財務官に昇進したわ。それもグレース様付きの特別財務官よ。給料が倍になったわ。グレース様に付いていけばもっと昇進できるわ」
「俺もグレース様に一生を捧げるぞ」
私は何もわからないうちにオスカリと結婚式をしている。ドロシーとバンズが全部やってくれるから困らないのだけどね。
国王の弟の子の結婚式だから国王も参加する予定だったのだけど結婚式の前日に兄弟で仲良く山登りをして滑落死した。なんでも人に聞かされない話をしていたらしい。バンズよると私の扱いらしい。
国王には子がいなかったから弟が国王になる予定だったのだけど、まさか国王と一緒に亡くなるとは誰も考えなかった。
結局オスカリが国王になった。私は王妃?平民からいつのまにか王妃になってしまった。
オスカリとは一度しかしていない。初夜は女官がきちんとできているかを確認するしきたりがあった。オスカリは嫌そうだったが女官が見ているから最後まできちんとしなければならない。私とのあとはすぐに第二夫人のところに行っていた。どうも平民の血が嫌らしい。嫌なら結婚しなければいいと思う。でもできてしまった。
王妃になって半年、安定期に入ったからドロシーを伴って散歩に出た。仕事熱心な彼女は昼食を食べながら公爵家の財務内容を報告してきた。お昼くらい休ませて欲しい。
「この国は思ったほど豊かではないようです。金山があったのですが最盛期の10分の1以下に減っていて王家の保管している金塊も最盛時の3分の1まで落ちてます。この調子でいくとあと数年でなくなります。新たな税として他の国のように消費税を導入しましょうか」
「だめよ。いまだって結構もらっているのに、これ以上税金を増やせば庶民の暮らしはどうなるのよ。物価が必ず上がって暮らしていけない。芋さえ食べられなくなるわ」
「庶民から税金をもぎ取るのが財務官の務めですからしょうがありませんよ」
「そんなの認めないわよ。だったら新たな金山を探せばいいのではないの?」
「それはみなやってます。ですが採算の見合う新鉱がほいほい発見できるものではありません」
「ここの山々は綺麗だけどなぜ掘らないの?」
「王族直轄の山々はお留山となってます。許可無く掘れば罰せられます」
「だったら私が許可出せばいいのね?」
「お留山は誰にも許可を与えないからお留山の価値があるのです。そのおかげで綺麗な山並が維持できるのです」
「だったら王族が掘ればいいのに?」
「そんな自分で何とかしようとするような気の利いた王族なんていませんよ」
「グルグル……」
お腹痛い。
「トイレに行きたい。覗かないでよ」
草むらをかき分けると目前に子供が屈んで入れる程度の洞窟があった。すこし中に入って大きい方……。
「あ~落ち着いたわ。紙は……」
紙が……ない。洞窟だから木の葉もない。どうしよう。
「ドロシーーーーー!!紙をもってきてーーー!!」
ドロシーは身重の私が心配だから私の恰好が見えない程度の距離まで来ている。
ドロシーは草むらをかき分け私のところまで来てくれたが、紙を渡してくれない。振り向くと私のとぐろを見て、ドロシーは紙を持ったまま呆然と立っている。
「こ、ここ、これはーーーーー!!大発見」
「そんなに見ないでーーーーー!!我慢していたからいっぱい出たのよ」
「その黄金色はーーーー!!!」
「ごめん。大きくとぐろを巻いて臭いよね~」
「お尻が寒いから早く紙ちょうだい」
「あっ、はい」
「は~すっきりした」
「わたしもすっきりしました。これで問題は解決しました」
「あなたも糞したの?」
「違いますよ。この石英から出ている黄色い鉱脈です。これで当分金の心配はありませんよ。流石です」
「は?」
ドロシーが驚いていたのは私の『大きな黄金色に輝く野糞』ではなかった。洞窟の岩肌からに出ている白色の石に含まれる金の含有量がこれまでの数倍ある金鉱脈だった。王城からこんなに近い小山にあるのに王族はこれまで何もしてなかった。自分たちの領土から汗水たらして稼ぐという考えが全くない人種だった。
それからというものドロシーは毎週お留山に一緒に付いてくる。私が一緒でないと入れないということもあるが、彼女の目が期待している。そんなホイホイゴキブリではあるまいし大切な資源が見つかるわけないよ。
そう思っていたが、王家のお留山は広大であるにもかかわらず誰も立ち入っていなかったから沢山の鉱脈が発見できた。
大臣達は国の重要な問題を私に相談しに来る。私はただの平民です。まともな教育も受けてません。国王がいるのだから国王に相談してよ。私をそっとして欲しい。
「バンズ軍務大臣いいかしら」
「ドロシー、なんだ。今国境のことで忙しいから声をかけるな」
「今日グレース様が我が国最大の金鉱脈を発見したわ」
「数年は採掘できるのか?」
「そんなものではないわ。あれはこれまでの歴史でも一番の鉱脈と思うわ。洞窟の中は全部鉱脈だったから100年は問題無く掘れる金鉱山よ。それにお留山は全く人が入っていないから宝の山よ。これから探せばまだまだ他の鉱脈がみつかるわよ。グレース様は『運子』よね~」
◆国王派◆
「儂は国王様に付いていく。国王様も『余はミリオン侯爵を次の国務大臣に考えている』とおっしゃった。古参の貴族は皆第二王妃か第三王妃の子を次の国王にするつもりだ。あんな伯爵と平民の混血の王妃に従えるか!やはり家柄だ。国王と第二王妃との間にできたギドロ様は利発で次の国王になれる男の子だ。昨日も紅茶をこぼすという不始末をした女官を牢獄に入れておったわ。すばらしい。貴族の機嫌を損なう者は極刑にすべきだ。あんな平民出の子のメアリーなど王女ですらもったいない」
「ミリオン様、国王と貴方の投資されている商船が台風で全滅しました」
ミリオン侯爵は破産し、国王も財産のほとんどを失った。
バンズ軍務大臣がまた頭を掻きながら難問を持ってきた。
「グレース王妃様、国境の湿地地帯から隣国が侵攻してきました。どうしましょう」
(そんなこと私に分かるわけないわ。それを解決するのが軍務大臣の務めでしょ。煮詰まったから、なんか策を求めているんだろうけどね。私は専門家ではないわ)
『鉄壁な策ねー』そんなものあるわけない。
(やっぱり何も浮かばない)
「国王が困ったことを儂に持ってくるな。グレース様に聞けとおっしゃったのですが、流石です。『柵』を設けましょう。湿地ですから『有刺鉄線の柵』は効果抜群ですね」
「おい、グレース様がまたダイヤモンド鉱脈を発見したらしいな?」
「そうなのよ。お留山で拾った石を文鎮代わりにしていたけど、それがダイヤモンド鉱石とわかったのよ。これでグレース様の発見したものは金鉱脈3つ、銀鉱脈2つ、銅鉱脈3つ、ダイヤモンド鉱脈2つよ。この国の財産の4分の3はグレース様のものよ。国王は先日の商船沈没でほぼ財産を失ったわ。もう力なき無能な国王よ。誰も従わないわ」
国土開発大臣のゴンドウ侯爵がグレース様にお話があるそうです。
執事のブロンが教えてくれた。ひさしぶりに会える。今日は何の用かな?
「グレース様、お久しぶりです」
「手土産はあるのでしょうね」
「もちろんでございます」
「ふふ、ありがとう」
私とゴンドウ侯爵は昔の話をしながら手土産のふかし芋を食べている。
「これが一番おいしいわ」
「そうですな。どんな食事よりもこれですな」
「ところで、今日はなんの用?」
「一部の国王派貴族が破産したようでグレース様の暗殺を企てていました。すでに廃除しましたかが一応忠告にきました」
「私はお金に興味はないわ。ときどきふかし芋が食べられればいいのよ。その貴族のことも含めてあとのことはあなたとドロシーにまかせるわ。私はこんなキラキラした服が着たいわけではないの」
「そこなんですよ。あなたは欲がない。それに発見した金塊やダイヤモンドそれに貿易で稼いだお金を国民のために使っている」
「だめなの?」
「いいえ。いいことですよ。おかげでこの国の民は飢えなくなりました。ですが、それではこれまで既得権を持っていた貴族が許さないのです。残念ですがその中に国王も入っているのです」
「あの人は国庫のお金を散財しました。そのうえ投資に失敗し、保険料を惜しんで掛けていなかったから財産のほとんど失ったようです。最近もまたお金をくれと言ってきました。手切れ金として金貨を1,000枚渡しておきましたが、ほとんど第二王妃と第三王妃のところに入り浸りで国務をしてません。
芋を食べている私とメアリーは平民の臭いがして気持ち悪いらしいわ。
私は娘のメアリーとふかし芋を食べているときが一番幸せです。家臣さえしっかりしていれば国王は誰でもいいと思う。私は国王には私欲に走らないで国民を大切にして欲しかった。
ねえ元村長のゴンドウ侯爵あなただけよ。私を子供扱いしてくれるの。これからもときどき手土産を持ってきてね。あのときのことを忘れたくないの」
「もちろんです。さてメアリー様にも手土産を持っていきましょう。ジイジイのふかした芋は宮廷の食事より美味しいと言ってもらえますからな。それにメアリー様を見ているとあの頃のグレース様を思い出す。ははは」
「ドロシー財務大臣、最近グレース様がやたら綺麗になってないか?国王もグレース様を大切にしていればこんなことにならなかった」
「バンズ軍務大臣もそう思う?グレース様も20歳だから出るところは出て、身長も国王様より高くなってしまったわ。私が男だったら惚れてしまうわね。グレース様さえいれば国王は誰でもいいわ。国王は浪費するだけで何の才覚もないものね。バカ男爵とよく似てるわ」
「そうだな。世間では平民から王妃になったシンデレラ王妃と言われているが、国王と俺たち、それに大臣たちはグレース様に付いて来た者達だ。それに今力をもっている貴族もグレース様に従った者たちだ。平民出には従いたくないといって反目していた者たちはみな落ちぶれてしまった。グレース様がラッキーガールではない。グレース様に会えた俺たちがラッキーなんだ。国王は自分がラッキーボーイだとわかっていない。今議会で帝国制に移行する審議が行われている。来月にはこの国は帝制ミリオネア国となる。初代帝王はグレース様で決まっている。実質的な旧貴族廃除だ。二代目帝王もメアリー様で決まっている。国王は元の名字に戻り侯爵に格下げとなる。実質的な離婚だ。最後まで出自で差別されてきたグレース様が帝王だ。これから大変だぞ。グレース様は興味ないようだが毎日のように求婚の申込が来ている」
「私達も捨てられないようにしないとね」
「俺はグレース様に命を預けているから心配していない」
「そうね。だったら早く子供つくらない?メアリー様にも婿が必要でしょ」
「いいのか?」
「だって、あなた私のこと好きでしょ」
「知ってたのか」
「もちろんよ」
「グレース様は俺たちの『あげまん』だな。俺たちもこれから公爵の仲間入りだ」
「Fin」
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