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マナイズム・レクイエム ~Allrgory Massiah~  作者: 織坂一
3. 運命は廻り、徐々に崩れ逝く現実
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天より神は降臨し、彼岸の主も舞台へ上がる

今回から11話になります、よろしくお願いします。



「……さて、我が半身(わたし)よ。あの青年らの罪状は如何に?」



『ラジアータ』と言う異界が地を血で赤く染め上げる中、ただ赤に染まるだけの地獄を天から1人の男が覗き込む。


男は金糸のような髪を一束摘んで指の腹で撫でると同時に、自身の中に存在する半身とのコンタクトを取り始める。


いよいよ、『ラジアータ』は地獄の窯と化した。

かつて自身がこの彼岸と現世を隔てるため、幾つか結界や障害を置いたものの、自身の恩恵を踏みにじった馬鹿共がいる。


淡々と呪力が『ラジアータ』を浸していく中、実に彼らの行動が憐れでならないと、男は柘榴色の瞳で彼らを睥睨する。そして男の中に同居する半身はこう答えた。



「なにを言っているのです、ソフィア。彼らはあなたの愛を踏みにじった……本来ならば、罰を下すところ」


「ですが、それでは他の神々との輪を乱します。ここで私に(ペナルティ)が課せられれば、それこそ『ラジアータ』は私の管轄外となってしまう。それだけは……」



傍から見れば男が1人2人役を演じているだけの奇妙な絵面であるが、それも彼自身が特殊な成り立ちゆえにだ。

彼が神の一柱であるためには、自身の中に宿る2つの属性が調律を取ることが必須だ。であれば、奇妙だろうが滑稽だろうがこの珍妙な劇に逆らえる訳がない。

そして彼の神性(はんしん)は、本体(ふぞくひん)の意思を尊重することを選んだ。



「……分かりました。では、また私達は1つとなりましょう。ヘレ・ソフィアという“繁栄”をもたらす神であるために」



そう、彼こそが“繁栄”を司る神の一柱であるヘレ・ソフィア。

たった1人——この場で唯一生き残る資格を得ている青年の罪状を一瞬で自身の中で採決を取ってはいよいよこの世界に顕現する。彼自身もまた神としてすべきことを成すそのためだけに。


―—そして同時刻。地上でも、異変が生じていた。

1人血濡れた大地を踏みしめる黒衣の男は、『ラジアータ』一体を満ちていた呪力を自身の肉体一点へ収束させる。


今、このとき狂界(きょうかい)の外側どころか、この世界そのものを包んでいた男の呪力は一瞬にして消え失せた。


何故に今になってこうも綺麗に呪力が消えるかなど、あまりにも呆れるほど愚かしい問いかけである。

神が自身の愛する(せかい)を守るために動いたように、男もまた自身の全てを守るべく、自身と愛する彼女の庭を踏み荒らす害獣を駆逐する必要があるのだ。


無論、それだけが黒衣の男——もとい『ラジアータ』の主である邪神と神を動かす理由ではない。だが目的はどちらとも同じで、あまりにも似すぎている。


決して彼らは事前に話し合いなどしていないし、示し合わせたかのうようにこの世に顕現したのは本当に偶然のことだ。

最後にお互いの顔を見たのは、もう1300年近くも前の話。

痛み分けをしたあの日以来、彼らはお互いそれぞれ別の道を歩んでおり、その道はこんなにも早く交わる予定ではなかった。


しかし、いつか正しく廻るはずだった運命の歯車に、不要なパーツが紛れ込んだのならば話は別。

彼らは一時的に、この過酷な現実に紛れ込んだ異分子の駆除をしなければならなくなる。

そんな運命も、必然かつ自明だ。



「……ラインバレル、俺は忠告したぞ。ここに来るのは止めておけと。なのにそれを無視したのは紛れもないお前だ。所詮は救世主になどなれない器のくせに」



お前に邪神(おれ)を討つことなど不可能だ。

邪神はそうラインバレルの運命を見定めながら、愛しき彼女の亡骸を抱きしめる。



「大丈夫だよ、マナ。あいつらがいなくなれば、また俺達はここで静かに暮らせるんだ。……だから、今だけは俺を赦してくれ」



邪神の抱きかかえる亡骸はなにも答えない。

しかし、リアムは彼女にこう問わずとも彼女の口にするであろう答えを知っている。


ええ、本当に最悪。

リアムってば、また無理をするんでしょう? あのときみたいに――そう彼女はリアムへ苦笑する。

そんな彼女の苦言に、邪神は参ったと釣られて微苦笑を浮かべた。



「少しの無茶ぐらい目を瞑って欲しい、俺はそんな無茶をしてなんぼなんだから」



そうね、本当に馬鹿な人と返事が自身の内側から返って来た瞬間、いよいよ邪神はこの霊碑街から動き出す。


今から自身の前に現れるのは、等しく害悪だ。

1人は神から特別に器を与えられた救世主としての資格を持つ者――ラインバレル・ルテーシア。

だが、彼は敵としてあまりにも矮小だと邪神は吐き捨てる。



「今のお前じゃ救世主になんかなれない、なれても昔の俺程度だ」



なにより救世主ではなく断罪者としての素養を肉体にいっぱい詰め込んだ挙句、さっき別れた異分子の方も最悪である。


今やかの災厄は少年の姿をしているが、邪神には彼が一体どんな存在なのか見えている。

この世にいてはならぬ存在がまだいる以上、駆除をするのは当然のこと。しかし自身だけでは少々心もとない。

ゆえに、仇敵の性格を利用し今の事態へと持ち込んだのだ。



「……もう少しで、奴はここに来るか」



と、邪神は徐々に『ラジアータ』(ひがん)まで近づいてくる仇敵の気配を肌で感じる。



「——なら、始めるか」



ここは、自身の愛する人の墓を中心に創り上げた不幸(こうふく)の庭。

かつてこの場所には神により結界が張られ、長らく動くことはおろか、眠ることだけを命じられて屈辱ながらも邪神は結界内で守られていた。


だが、それも今この瞬間で終わり。

かつて交わされた条約を破棄し、もはや神に傅く必要すらない。

邪神は『ラジアータ』を創生後、長く眠っていた場所から数キロに展開されていた結界を呪力を暴発させて強制的に破壊する。


そして、結界の向こう側にいるのは2人の青年。

邪神は彼らの姿を確と捉え、必然と彼らは自身の敵であると見定める。



「言っておくが、俺のような小悪党を殺せないなら、お前達に生きる資格など一切ない。なにより……」



世界全体に満ちていた憎悪がこの数キロに展開されれば、無論呼吸をするのも難しい。だがそんな人間の事情に構う必要もない。



「たかが敵討ちで、俺と彼女の楽園を踏み荒らしたその罪はお前達の命を以て償え」



こうして、長く眠りについていた邪神は真価を発揮する。

彼が視界に映せば命などなく、今世紀一の難題が2人の青年を襲う。



前回まででとうとうヒロイン2人が退場し、いよいよ戦いも激化してきました。

もうラインバレル君のSAN値はゼロだというのに、この神様と彼岸の主はめちゃくちゃラインバレル君に困難しか与えていません。


現在、神様もといヘレ・ソフィアがどちら側に付くのかは不明ですが、まだこいつは出てきません。出来るなら一生出てこないで。



⚔50話の内容解説(活動報告)はこちらになります!↓(※多々ネタバレが含まれますので、本編一読後に閲覧するのを推奨します※)

https://syosetu.com/userblogmanage/view/blogkey/3166306/


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