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マナイズム・レクイエム ~Allrgory Massiah~  作者: 織坂一
2. 過去と未来は交差して綾模様を描いては終へ墜ちる
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2人を繋ぐ歪な絆



神の御業を継承する資格を持つ平凡だった青年は、ある男の意識に触れたことで真なる覚醒を果たす。

今現在では、青年が何者になるかは定かではない。

しかし、青年がこのままリアムという彼岸の主を討ち取り、ありとあらゆる悪を断罪する断罪者となるならば、きっと彼は世界に終わりを与える大破壊と化すだろう。


そんな危険を帯びた因子と、因子を生んだ親元が今こうして意識を繋いでいるのは何故なのか?

結論から言おう、彼らの意識が結ばれているのは根底にある感情が同じだからである。


かつて大事な家族を失った青年(いんし)は、この世の誰よりも無力な自分自身を憎んでいる。

そして(おやもと)は、己が未熟で無力と自身の非力さを嘆いているからこそこの世界に顕在していた。


怒りと憎悪、悲嘆と憎悪。それぞれ片方はベクトルこそ違えど、彼らの共通点は正に憎悪を抱いているからこそのもの。

ただ憎悪だけで彼らが繋がっているなら、親元である男はありとあらゆる人類と意識が繋がっていてもおかしくない。


この世界に存在する何十億の人類と男の意識が繋がるかどうかは、結論から言えば不可能な話である。

では、何故青年だけに限定されるのか? この問いも至って簡単なものだ。

憎悪の他に彼らを結ぶものは、特定の誰かに対する愛情と個々が胸に抱く贖罪であった。


因子(せいねん)は、亡き姉や家族を愛している。

そして因子(せいねん)は彼らを呆気なく死なせてしまった自分が憎く、だから彼らを直接的に殺した原因をこの手で滅ぼす――それが彼の贖罪だ。


そして親元(おとこ)の愛情とは、かつて亡くした愛しき女性へ対してのもの。

彼女がこの世を去ったのは、その彼女自身の自死に近いが、根本的な原因となったのは親元(じぶん)であった。

そんな愛しき女性を殺した男の贖罪とは、この世界で1人孤独で生き続けるという罰を受け入れることにある。


このように彼らは最も愛すべき存在を失っており、どちらも自身の無力さがゆえにそれらを亡くしている。

だからどうか彼女らが眠れますようにと、悲愴(いのり)を謳い生き永らえているのだ。

因子と親元どちらとも、さして生きる意味など左程ない。そして生きる意味さえも似ているからこそ、2人の意識は繋がれてしまった。


さらに因子は親元と同じ呪力を有しているため、余計に親和がしやすくなっている。

同じ呪力を有するというのは、すなわち別の個体に同一の存在を入れ分けたようなものだ。

だから、因子(かれ)親元(かれ)で。

親元(かれ)因子(かれ)なのだ。


そしてその同じ呪力の所有者こそ『原初の災厄』(ファースト・スカージ)という存在。

彼は因子へ自身の呪力で編んだ『業火の仮面』(ぶき)を与え、かつて親元にはその核を喰い千切られた。

おかげで『原初の災厄』(ファースト・スカージ)が意図的に注いだ残りの呪力と、かつて奪われた呪力の残滓もまた2人を繋いでいる。


ここに、『原初の災厄』(ファースト・スカージ)本人の意思は介在していない。

彼が他者へ抱く悪意も、殺意も、人生の終着点への羨望も、他者が散り逝く様を見たいという願望も全てだ。


言ってしまえば、因子と親元(かれら)は磁石のように引かれ合っているのだ。

今もこうしてお互いが干渉しようがしまいが、全ては因子である彼が断罪者へと辿り着くためだけに事象と親和は深まっていく。


ゆえに、どちらにせよいつか断罪者は完成される。

この世に存在する邪神を討ち、あらゆる悪をこの世界から排斥する絶対的存在が。

だからこそ、本来であればこの断罪者の完成を遠ざけなければならない。

むしろ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


そんな断罪者の完成を、ただ1人親元である灰色の瞳の男だけは阻んでいる。

もし断罪者という自身とよく似て対極な存在が生まれ出でたのなら、彼はなにを以てしてでも断罪者を駆逐する。


ああ、そうだ。あの断罪者(がいちゅう)を駆逐しない理由などどこにあると言うのか。

奴はこの世にとっての害悪であり、自身の幸せと愛しい人との過去(みらい)に唾を吐く者。

だから殺してやる。それ以外の理由などない。


そしてこれは、断罪者に未だなりえない雛鳥も同じだ。

邪神(おまえ)はこの世にとっての害悪だ。だから俺が“罪業”という“法”にてお前の魂を融解してやると猛る。


彼らは内心でこんなどうしようもない猛り声を互いにあげながら、表面上は理性的に話せている。

はたしてそれは何故か――そこまでは誰も理解し得ていない。

だが、どうしてもと理由を出せというのなら、この一言に尽きる。


()()()()()()()()()()()()()()。だから、変に溶け合っては今も妙な同居を繰り返している。

今や因子の青年は親元である男を毛嫌いしているが、やがて彼らの関係は異様な化学反応を起こす。

それが親元である男の後悔によるものなど、もはや話にならない。


ただ、あのとき彼が――ラインバレル・ルテーシアが泣かなかったのなら、きっと未来は違ったであろう。

無慈悲で利己的で、愛しい彼女と自分以外守るべき者などないはずの邪神が彼に同情した瞬間、全ての運命は狂い始めた。



最近、やたらと予告なしの急な更新が多くてすみません。

本来なら土曜日に前回の続きを掲載するつもりだったのですが、1つ話を差し込ませていただきました。

というのも、全文読み返してもこの2人がどうやって意識が繋がったのかを明確に記していなかったからです。


なので、完全にこれは後付けですが、一応既に物語は書き終えているのでこのように調節しています。また内容からして、今回は特に活動報告での振り返りもありません。

今後はこのようなアクシデントは無いよう努めます。


ただ、どうしてこの2人が惹かれ合ったのか、この後ラインバレル君が泣くと宣告されているけど何故ぇええ―――ッ!?


では、また次回お会いしましょう。


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