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マナイズム・レクイエム ~Allrgory Massiah~  作者: 織坂一
2. 過去と未来は交差して綾模様を描いては終へ墜ちる
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キクキョウ家の人間

今話から5話になります。よろしくお願いいたします。



あれから2週間。俺達は『血濡れの剣(ブラッド)』から発行されたパスポートを持って、狂界(きょうかい)を越えようとその門前まで辿り着くことが出来た。

『オリベ』から狂界(きょうかい)まではほぼ休まずに進んだため、俺達は比較的早く狂界(きょうかい)の入り口へと来れたのだ。


狂界(きょうかい)を越えると言っても、狂界(きょうかい)と『オリベ』の境目など、巨大で強固な門1つが隔つだけ。

つまり、この巨門を越えれば、彼岸までの道のりはすぐそこである。


俺はまるで冥府へ下る門のようだと巨大な門を見てぼんやり思う中で、門番兵達は俺達の持つパスポートを確認する。だが、早々にアクシデントが発生した。



「ん? フランベ総裁は今現在、聖都・セイビアの問題を対処しておられるはずだが……発行日に違いがあるんじゃないか?」


「「は?」」



俺と『原初の災厄』(ファースト・スカージ)は口を揃えて拍子抜けし、驚愕の言葉を漏らす。一方俺の隣にいるカナタさんは笑みを浮かべているが、その白い顔はどこか蒼褪めている。



「えっと、つまりこれは……」



静かに隣にいるカナタさんへ言及という名の視線を向ければ、カナタさんは顔を逸らして小さく舌打ちする。



「――ちっ、気づきやがりましたわね」



そしてここで真実が明かされる。このパスポートは本物によく似た偽造品だと。これ以降、この場にいる各々の取る行動など火を見るより明らかだ。



「貴様ら、何が目的でこんな真似をしたッ!?」



当然、門番は俺らの罪を言及し、槍を構える。



「仕方ありませんわね! ここは力づくで通らせていただきます!」


「待って、カナタさん! ここはなんとか穏便に!」



そしてこちらも当然、力づくで通ろうとする。

俺はなんとか和解の道はないかと必死に思考を巡らせるが、向こう側からすれば和解など不可能。

なにせ俺達は正式的な手続きが必要なものを偽造した。当然これは立派な犯罪行為だ。


やっと『ラジアータ』を前に、リアム討伐の始まりに立った矢先でのアクシデント。

ここはもう隙を見て、強行突破するしかないなどまた人の道を踏み外しそうになったときだった。



「おい、邪魔だ」



それぞれの思惑で意識が煮え湯のように高揚し、今にも争いが起きようこの状況で、氷のように冷たい横槍が入ってくる。

俺達は声のした方へ振り返れば、そこには1人の青年が立っていた。

その青年は俺と恐らく同年代のようだが、あまりにも異質な見た目に俺は一瞬怖気が立った。


なにせ、青年の右手は銀色に輝いており、それは義手だと一目で分かった。

加えて右頬に痛々しく残された火傷痕と、眼鏡のレンズ越しの瞳も異様だった。

両目共色は漆黒(くろ)く、夜闇のようだが、右目の瞳孔は焔のように紅々と燃えるように縁取られている。


明らかに歪なロボットのようなその様は、青年の纏うオーラもあってか殺戮兵器を連想させた。

そして、彼がこの場に現れた瞬間に門番兵達は背を正した。



「これはキクキョウ様、大変申し訳ございません!」


「キクキョウ、だと?」



瞬間、門番の言葉に目を細めたのは『原初の災厄』(ファースト・スカージ)であった。

そして、キクキョウ家の人間だと呼ばれた青年は懐からネックレスのようなものを取り出すと、それを門番兵へと見せる。

すると彼はあっさり門の先へ通される訳だが、青年は俺とすれ違った際にこう口にした。



「あの場で助かったのならば、そのまま生きておけばいいものを……」


「は?」



同時に、俺は彼の声に覚えがあると少し前の記憶を想起させる。

想起した記憶はあのとき――俺が『業火の仮面』(アケーディア)に込められた呪力に体を蝕まれていたときのことだ。

あのときの無機質で感情の見えない低い声音が、俺の中で今重なった。



「——ッ! 待ってくれ!」



気付けば俺は青年を呼び止めていた。

青年は俺の方を振り向くが、青年は無機質な黒い瞳をこちらに向けるだけ。



「なに?」


「君も『ラジアータ』へ行くのか? と言うよりキクキョウ家の人間なんだろ?」


「だから? キクキョウ家の特権でも使わせろと?」


「いや、そうじゃなくて……。ただこの先の道のりを知っているのならば詳しく教えて欲しいな、って」



と、俺は下手にこの青年をこちら側へと引き摺りこもうとしていた。

俺がしようとしたのは青年が口にしたキクキョウ家の特権を使わせろだとか、そんな恥知らずな頼みではない。


現状こんなことを考えてる場合ではないが、折角命の恩人と再会出来たのだから、せめて礼の1つや2つはしないと心地が悪いという気持ちだけで俺は青年へこう出てしまった。


しかし、彼を繋ぎ止める言葉が見つからない以上、弁明も説得も出来ない。

青年はあまり手間取らせるな――そう目を細めては俺を睨み、切り捨てるようにこう吐き捨てた。



「それはしっかり身分証を見せて、許可を得てからにしろよ。最も俺がアンタ達になにかを教える義理もないしな」


「待って、お兄さん」



俺が言葉に詰まり、カナタさんが歯ぎしりをした瞬間、『原初の災厄』(ファースト・スカージ)が青年へと一歩近づく。

すると青年は眉を顰め、どこか構えるように姿勢を変える。しかし争う気はないと『原初の災厄』(ファースト・スカージ)は首を横に振る。



「確かキクキョウ家には3人の子供がいたよね? ……ん? 違ったなぁ、確か2人に減ったんだっけ? 10年前に」


「……何故、それをアンタが知っている?」


「簡単だよ」



『原初の災厄』(ファースト・スカージ)はにこりと笑い、青年へ並ぶと背伸びをして、青年の耳元でなにかを囁こうとする。

そして、『原初の災厄』(ファースト・スカージ)の口角がさらに吊り上がった瞬間、青年は目を見開く。

直後にこの場に沈黙が流れ、青年は数秒ほど思案した後に、門番兵を見遣る。



「悪い、こいつらは俺の知り合いだ。急な話だが、『ラジアータ』攻略に協力を仰いだ」



とあからさまな嘘を吐き、門番兵は顔を見合わせる。

門番兵も青年の言葉が嘘だと理解しているが、青年は眼力だけで門番兵にこの場は見逃せと訴える。

結局折れたのは門番兵達で、俺達はこの青年のおかげで門をくぐることが出来たのであった。




いやー早々アクシデント発生で困ってしまいますね、どうも織坂一です。


つかカナタさんの用意したパスポートは偽物って……。おい。

なんとか、偶然通りかかったキクキョウ家の人に助けてもらいましたが、『原初の災厄』さんGJ。というか彼はなにを言ったのやら……。


そして、この青年こそかつてラインバレル君を助けた例の人です。なんか見た目が殺戮兵器なのはびっくりですね。



⚔20話の内容解説(活動報告)はこちらになります!↓(※多々ネタバレが含まれますのでご注意ください※)

https://syosetu.com/userblogmanage/view/blogkey/3139093/


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