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マナイズム・レクイエム ~Allrgory Massiah~  作者: 織坂一
1. 青年は戦う為だけに全てを業火に焼べる
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青年は青空を仰いで自身の無力さを知る

第2話になります。ここからいよいよ物語は動き始めます。



俺は今、蒼い空を仰いでいる。

時は改暦1097年の晴れた日の昼下がり。俺はこの透き通った青を瞳に映して、心を巣食う空虚はこのまま消えてしまいそうな心地であった。


俺——ラインバレル・ルテーシアは穏やかな風を頬で感じ、耳を撫でる喧噪に嫌という程溜息が出た。

時々俺の横を通り過ぎ往く人が俺の顔を覗き込むが、誰1人として俺に心配の一声も掛けやしない。


ある意味傍から見たら無情極まりないだろうが、理由はしっかりあるがゆえに俺は無言で俺を見捨て通り過ぎて往く人達を責めることはしない。

なにせ、俺がこうして地べたに転がされたのはある人物の行動によるものだからだ。


そのある人物とは、鎧を着た屈強な男。

身長は見たところ2メートル近くはあるだろうか。

このご時世でよくもまぁそこまで育ったものだとある意味感心してしまう程で、筋骨隆々な体ははっきり言って羨ましい。


彼は大きな剣を腰に下げ、銀色の鎧で身を固めたいわば兵士だ。

しかし、この兵士という立場がとても重要なファクターとなる訳で。


そんな風格からして(つわもの)に見える彼は、ある部隊に所属しているがゆえにこうして一般人を遠ざけてしまっている。


彼の所属している部隊とは『聖火隊(セイヴャ)』と言う大陸随一の武装集団。

ここ聖都・セイビアにおいて、守護を担う最強の部隊の一員であるからだ。


それに俺を投げ飛ばした彼がいくら筋骨隆々だからといって、中肉中背の俺を15メートル先の通路へと投げるのはどうみてもおかしい。


俺は今年でようやく18になった訳だが、それでも背は低くないし、むしろ同年代の男性の平均身長よりも高い方だ。当然、体重だってそれなりにある。


だと言うのに、そんな俺をまるでボールを投げ飛ばすような芸当を出来たのは、彼が持つある特性に起因している。


その特性と言うのが呪力。今この世界で戦うには必須な力で、『聖歌隊(セイヴャ)』に所属する兵士はみな呪力による異能を行使することが可能なのだ。

ただ呪力の源泉は憎悪で、平たく言うと彼らは常々心の内でなにかを憎まなければ戦えない。


ゆえに断言しよう、この世界は地獄だ。

さらにこの世界には、呪いによって発症する死の病で日々死体の山を詰む有様だ。

秩序などほぼなく、憎悪なき者は無慈悲に殺されるだけの恐ろしい世界——それこそが改暦と言う時代だ。


一見救いがない世界に思えるが、幸い呪いによる病——通称・『マタ』を発症するには原因がある。

そして『マタ』を発症しない人間にはその原因がないため、こうして白昼堂々往来を大手を振って歩けている訳だ。


その面を鑑みれば俺も呪力がある可能性も十分あるはずなのだが、大柄な兵士は俺を見るや鼻で笑い飛ばした。



「小僧、お前には憎しみが足りておらんよ。そんな清廉潔白なおこちゃまじゃ、この世の邪は討てない」



そう言われ、俺はその場で抗議をした。

『マタ』を発症する人間は呪力に抵抗がない。ゆえに『マタ』を発症するのだが、俺は見ての通り健康体そのもの。


だから呪力への抵抗はある。少なからず憎悪だってあるはずだと。

それにもしかしたら俺も訓練すれば戦えるかもしれないだろうと訴えるが、俺は幾度も囮にすらならないと切り捨てられてきた。


そして兵士に抗議をし続けた結果、目障りだと吐き捨てられて俺は容赦なく明後日の方向へと投げられた訳だ。

俺を無視してこの場を過ぎゆく者達の胸中を代弁するならば、恐らくこうだ。


なんて憐れな人。

あんな細い体じゃ、きっと剣なんて持てないわ。

それに()い人すぎるじゃない。あれじゃ本当に憎悪なんてあるかどうか疑わしい。


……と、大体はこんなところだ。

自慢臭く聞こえるかもしれないが、よくよく考えて欲しい。


俺が事実不甲斐ない人間だったとして、初対面の人を馬鹿にされ罵倒した挙句に力でねじ伏せられれば、誰だって怒って彼を殴るなりなんなりするだろう。


しかし、俺はそう思えない。なにせそんな暴力だけでの解決を望んでいないからだ。

それはある種、俺の精神性を異常と示しているだろうが、見方を変えれば俺がただの意気地なしであるとも捉えられる。

だからそう言った意味合いでも、俺は戦いに向いていないと言われているのかもしれない。


こんな恥晒しの対象となっても、結局全て戦う力のない俺が悪い。最終的にはそんな結論に帰結するのだ。

おかげで働き口の1つである教会の神父達は皆、俺を憐れむように口を揃えてはこう言った。



「君はもう少し、怒ることを覚えた方がいい。そうやって全てを許していれば、使い潰されるだけだよ」



――なんて、仮にも聖職者がそんなことを口にするなんてこの世界は狂っている。


だが、それがこの世界の現状なのだ。

俺はしばらく仰向けになりながら自分の無力さを噛みしめ、精神を安定させるべくしっかり太陽の光を浴びた後、口元についた砂利を拭っては立ち上がり、日雇いの職場へと向かうのであった。



皆様こんばんは、織坂一です。

気付けばふと第1話を書いていました。

そして更新したくなったので、どうか更新させてください。鉄は熱いうちに打て。


とはいえ、また予約掲載設定のお力を借りているので、書いた箇所だけ載せてます。予約掲載設定最強。


正直、現時点(この2000文字とプロローグの1700文字)でこの物語を理解することは不可能……だったので大幅に内容を改変させていただきました。


ただ、まぁ世界観など全て解説しきれた訳ではありません。

なので今回はまぁ、『聖火隊』という団体と主人公のラインバレル様がひ弱なこと、この改暦という世界には『マタ』が蔓延して、呪いで武力を行使することが出来ることを覚えていただければ大丈夫です。


まだまだ先は見えませんが、私も先が見えていません。どうかなにとぞ、温かい目でながーく見ていただければと思います。



⚔そんな第2話の活動報告(と言う名の内容解説)はこちらから読めます!↓

https://syosetu.com/userblogmanage/view/blogkey/3103536/

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