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5話 シロエの料理

「ごめん、待たせたか」

「いえ、丁度、準備が整ったところです」


 帰って早々、幸せな気持ちにさせられた。

 温かい夕食、美人な女性、そして在り来りだけど幸福感を増幅させてくれる返答……どれを取っても最高の空間でしかない。


 出来上がっているのは……シチューかな。

 それと煮込んだ肉やステーキ、ご飯やサラダ、そしてワインなんかも置いてあった。シチューとご飯を別にしているところからしてシロエはよく分かっている。……まぁ、自分は混ぜる派だけどね。ただ嫌な人は嫌だろうし。


「それでは頂きましょうか」

「あ……いや……うん、そうだね」


 当たり前のように俺の隣に座るのはどうしてなんだろうね。俺用の皿に移していると見せかけて胸を押し付けてきたりしているし。


 今ならお触りしても……いや、やめよ。

 俺の心の童貞の神が悪魔を殴り倒してくれた。こういう時に可愛らしい天使が出ないあたり……本当に俺って……。


「どうかしましたか」

「イヤ、ナンデモナイヨ」


 本当にコイツは……。

 わざとらしく小首を傾げて、分かっているのに教えてくださいって聞いてきているんだ。このまま揉んでしまった方がシロエを懲らしめるためにもいいんじゃないのか。


「これ以上、虐めるのなら本格的に嫌いになるよ」

「虐めるとは……私は何もしていませんよ」

「そうか、なら、離れて食べようかな」


 一々、胸を押し付けられても食べ難いし。

 気分的に気持ちよくはあるけど三大欲求は別に満たしたい。食欲なら食欲、性欲なら性欲、睡眠欲なら睡眠欲って感じだね。


 それにそう言ったらシロエは謝ってきた。

 やっぱり、わざとだったんだろう。これは何かしらの対策は必要そうだなぁ。それこそ、「ハレンチですわ!」とか言って止めてくれる人が欲しい。そういうところもレベルが上がれば解消されそうだから……頑張るしかないか。


「嬉しいけど今はシロエの食事に集中したいな」

「お気持ちは嬉しいのですが……マスターと二人でいられる時間なんて今だけでしょうし……」


 後半は小声だったけど聞こえてしまった。

 なるほど、だから、こんなに分かりやすくイチャイチャとした行動をしたがっていたのか。……別に他の仲間が現れようとシロエが不必要になるわけじゃないのに。


「なら、食べさせてくれないかな。実は結構、疲れていてね。スプーンを持つのも億劫なんだ」


 まぁ、嘘だけどね。

 ただシロエに甘やかされるのは悪い気がしない。それに俺自身もイチャイチャしたいから気持ち的には同感なんだ。そのやり方があまり嬉しくなかっただけで程々には甘やかされたいんだよなぁ。


 だってさ、美女のアーンだよ。

 それを喜びながらやってくれるなら……役得以外の何物でもないだろ。大きな目と高い鼻、身長に見合わない小さな顔、そして灰色の肩までしかないサラサラとした髪……どれを取っても美しくて可愛いという他ない。


 そんな人に甘やかしてもらえるなんて……。


「あーん」

「ん、美味しいよ」


 シロエ特製のシチュー……美味しいな。

 さすがにシチューをおかずにワインを飲んだりはしないけど……それなりに合いそうなくらいには濃いめの味になっている。ここら辺も俺の好みが分かってやっているのかな。


 呑み込んだのを見た瞬間に箸でサラダを一つまみ取ってくれる。ドレッシングは……和風ドレッシングかな。すごいな、和風ドレッシングそのものは無かったはずなのに……一から作ってくれたのか。


「ありがと、すごく美味しい」

「ふふ、お口に合ったようで安心しました」

「うん、毎日作って欲しいくらい俺好みの味だよ」


 想像の数倍、喜んでくれたな。

 まぁ、捉え方によってはプロポーズにも取れるからだろうね。別にシロエがずっと一緒にいてくれるのならそれでもいいけど。ただ……このままイヤンイヤンされていても困るな。


 やっぱり、ご飯は自分で食べるべきだ。

 後、アーンするだけだったらシロエが夕食を食べられなくなるだけだし。どうせなら一緒に食べたいからね。


「シロエ、やっぱり、自分で食べるよ」

「何か……不手際がありましたか」

「無いよ。単純に一緒に夕食を楽しみたいって思っただけ。ワインだって一人で飲むより二人で飲んだ方が美味しく感じるでしょ」


 ぶっちゃけ、ワインの知識は無いけどね。

 俺が知っている酒の味はビールくらいだ。小さな頃に間違って飲んだ記憶しかないからビールすらも良い思い出は無い。


 でも、このワインは質の高いものだったから不味いって事は無いと思う。これでお酒を楽しめる人間になったら……多少はカッコよく見えるんじゃないかな。


「はい!」

「あ、ありがとうございます!」

「一緒に飲もう。今日は一つの記念日みたいなものだからね」


 シロエと自分用のグラスにワインを注いだ。

 既にコルクが抜かれていたから面倒な事はしなくて済んだね。……コルクが抜かれているから当たり前だけど、シロエってコルクを抜く方法とかも知っているのか。色々な事を知っているんだなぁ。


 一口だけ口の中に含んで飲み込んでみる。

 うん、ビールとは比べ物にならない程に美味しくて俺の口に合う。これが良いワインの特徴なのかは分からないけど癖が強くないな。葡萄の香りと甘みが強くて飲んだ瞬間に口に広がって……悪くは無いね。


「美味しいですね。さすがはAランクのワイン」

「グフッ!?」


 危うく吹きかけてしまった。

 今シロエは何と言った。……Aランクのワインって言ったよな。それって親愛度をあげる時に渡したりする課金アイテムの一つで……売れば金貨五十枚になる代物だ。


 確か説明では……円換算で一本五百万円。

 俺はそれを飲んでしまったのか。……いや、飲んだら駄目な理由は無いけど少しだけ罪悪感を覚えてしまう。まぁ、課金して多めに買っていたから一本減ったところで大した事では無いか。


「もしかして……開けてはいけませんでしたか」

「いや、高い物を口にする心構えができていなかっただけだよ。こんなに良い物をシロエと飲めるんだ。開けちゃいけない理由なんて無い」

「もう……マスターったら……」


 どうせ飲むのなら楽しみながら飲む。

 シロエも喜びながら飲んでくれているし……課金って最高だなぁ。


 それによく見たらショップで課金アイテムを、この世界のお金で買えるみたいだから金を稼げば消費して問題は無いみたいだ。それでも高い事には変わりないけど。


 脂が滴る肉を一切れ口に運ぶ。

 ガーリックが効いている、塩胡椒のかかった普通の肉なんだけど……美味すぎて涙が出てきそうになる。あのオーガの見た目からは想像が付かないほどの濃厚な脂と、それを生かす最低限であり最大限の調味料達。そのどれもがマッチしている。


 そこに一口だけワインを口内に注ぎ込む。

 なるほどね、これがワインの楽しみ方ということか。口の中に残る油分がサッパリとしたワインによって残らなくなる。これが本当の合うってものなんだろう。


 よくワインにチーズが合うと聞くからもっと美味しく感じる可能性もある。今度はシロエに頼んで作ってもらおうかな。シチューが作れたのならチーズも何とか出来そうな気がする。


「どうですか」

「最高だね。ワインの質に見劣りしないだけの美味しい料理だよ」

「ふふ、明日からもマスターの口を楽しませてみせますよ」


 シロエからそう言ってくれるとは。

 ますます、明日からの異世界生活が楽しみになっちゃうじゃないか。今日だって食事を楽しんだらテントの温泉に浸かって、その後はシロエと一緒に寝るんだ。


 まだまだ夜は長そうだ。

実は作者は日本酒専なのでワインの詳しい説明がかけません。飲んだりとかはしているのですが日本酒のような甘みが無くて美味しく感じないんですよね。もしかしたらワインの良さはそこじゃないよと言われてしまうかもしれません。そうであった場合は申し訳ありません。日本酒なら良さとかを語れるんですけどね……。


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