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4話 甘えん坊

新年明けましておめでとうございます!

「という事で、シロエに頼みたい事があるんだ」

「何でしょうか。そこまで改まって言っているのです。まさか、シロエの全てを欲しいと」

「あ、それは夜に、ね」


 この返答は予想していなかったんだろうな。

 シロエらしくない赤ら顔を見せて俯いてしまった。元よりシロエの好感度が高いのなら嫁にしない理由が無い。それこそ、シロエは可愛くて器量が良くて俺の全てを受け入れてくれる女性そのものだからね。


「単純にこれを調理して欲しい」

「これは……オーガ肉ですか」

「ああ、シロエなら一級の宿屋以上の夕食にしてくれると思ったからね。後、これも頼む」


 広間の大きな机の上に出したのは八百グラムはあるオーガ肉の塊と米、野菜が数種類だ。調味料も出しておいたけどテントの中にあるから使わなさそうかな。


「そのような事は頼まれなくともしますよ」

「いや、可愛い子に頼んで作ってもらうという過程に一つの美しさがあると思うんだ。それに頼まなくなると作ってもらう事が当たり前になってしまうだろう。シロエが大切だからこそ、当たり前にしたくないんだ」

「もう……やっぱり、マスターはマスターのままですね。口が上手くて、いつも私を喜ばせてきます」


 そりゃあ、最初の推しですし。

 ゲームの時は時間経過で食事をするイベントがあるんだ。その度に「ありがとう」とか「大好きだよ」とか言っていたからね。シロエの場合、そこら辺の記憶もあるんだろう。


 それにシロエの料理が絶品なのは事実だ。

 ましてや、シロエが作ると料理にバフ効果が乗るからね。食事イベント自体、仲間の中にシロエがいないと起こらないし……それでシロエは人権キャラとして扱われていた。


 後、単純にシロエ単体が強過ぎる。

 最新のキャラクターが出るまではガチャキャラクターの中で速度ナンバーワンを誇っていた。それもシロエが最初のガチャキャラクターだったから、数年も他に席を譲っていなかったんだよね。


 本当にギリギリのバランスだったんだと思う。

 時代の流れによる敵キャラ達の強化に少しも劣らずサービス終了まで持ったんだから。……そう考えるとオーバーパワーもいいところだったんだな。


「シロエが作っている間に少しだけ狩りをしてくるよ。四十分くらいあれば大丈夫かな」

「問題ありませんが……私も同行しなくて大丈夫ですか」

「うん、レベル上げをしたいだけだから危険な事は少しもしないよ」


 戦闘に危険じゃない事は無いけども。

 それでもオーガの時みたいな無理はしなくていいから安全な方ではあると思う。出てくるのはゴブリンリーダーとかだからね。……ただオーガに比べればってだけで上位種なのには変わりない。


 それを何となく察しているんだろう。

 シロエも少しだけ震えて、行って欲しくなさそうに俺の顔をジーッと見ていた。まぁ、そこまで怖いのなら行かないのも手だが……ダンジョン攻略が遅れてしまう。


 ダンジョン攻略が遅れるという事は異世界の街に行くのも遅れてしまうって事だ。別に異世界の人達と関わりたいわけじゃないけど……結んでおくべき縁とかもありそうだからね。


 運命を信じるとか流石にゲーム脳が過ぎるか。


「嫌なら行くのをやめるけど」

「いえ……私が寂寥感で震えないかと……不安になっただけです。レベルが低くなったとしてもマスターが雑魚相手に負けるわけがありませんし」


 随分と簡単そうに言ってくれるなぁ。

 シロエもそう言ってくれているし……さっさと強くなって期待に応えますか。後、早く戻ってあげないとね。食事ができてすぐに戻って来れるのがベストかな。


「帰って来たら穴埋めでもするよ」

「……仕方がありません。今は調理に集中しましょう」

「ああ、楽しみにしているよ」


 軽く頭を撫でてあげたら許してくれた。

 うーん……ゲームの時って、ここまで分かりやすくマスター大好きって感じだったっけ。もう少しだけクールな感じだった気もするけど……気にしても無駄か。


 ボンキュッボンな美女に好かれて悪い事があるわけがない。ましてや、シロエのような人間がハニートラップなんてするわけが無いからね。


 そのままテントを後にする。

 十四階層の時とは逆にポータルの扉を開けて外へ出た。……明らかに空気が違う。爽やかな風が吹いてきていて十四階層のような鬱蒼とした雰囲気は少しも無い。


 それもそうか、人気の少ないダンジョンとはいえ、ダンジョンが育つには魔力だったり魔素が多くいる。人や魔物が体内に宿すのが魔力で、自然に漂うのが魔素……だったっけか。もっと詳しい説明があった気がするけど忘れてしまった。


 まぁ、どちらにせよ、人が多く行き来したり生き死にしないとダンジョンは成長しないからね。だからこそ、高難易度ダンジョンでも一階層はそれを感じさせないんだろう。いわば罠みたいなものだ。


「さてと……ゴブリンリーダーを狩るか」


 一階層にいる魔物の殆どがゴブリンリーダーだ。数体だけオークリーダーもいるけど……難易度がかなり違うから狙うのはゴブリンリーダーだな。堕天や夢想も使ってみたいからね。オークリーダー相手になめた行動は取りたくない。


 堕天を抜いて一番、近くにいるゴブリンリーダーのもとへと向かう。マップのおかげで目の前の壁が透けて見えるから楽でいい。ルート取りも一々マップを見なくていいしゴブリンリーダーの姿も見る事ができる。


 堕天がゴブリンリーダーに通じるか、とか不安に思う事はあるけどオーガの首を切り裂けたからね。恐らく通じないって事は無いだろう。仮に通じなくても心器があるから問題は無い。


「二体……行くか」


 二体だけど両方とも背中を向けている。

 うん、少なくとも一体は確実に倒せるはずだ。とりあえず試してみよう。隠密をかけてから足音を消して近づいて……。


「ギィ!?」


 おお、さすがの切れ味だ。

 横一薙で片方の上半身と下半身を真っ二つに分けて、もう片方の背中を深く傷付ける事ができた。かなりの出血量だから死ぬのは時間の問題だろうけど待っている理由は無い。


「うるさい」


 距離を取ろうとしていたゴブリンリーダーの体を切り付けることができた。それでも尚、逃げの姿勢を見せてきたから間髪入れずに追撃を行う。さすがに三回も斬られて生き残る事はできないだろう。


 背中を切られてすぐに膝から崩れ落ちた。

 これで二体のゴブリンリーダーを倒したけど……レベルはまだ上がっていないみたいだ。確認し忘れていたがレベル二十で経験値補正が0.01%増加している。いや、これで変わるわけがないか。


 その後も淡々とゴブリンリーダーを狙ってダンジョン内を駆け回る。マップのおかげもあってオークリーダーに出会うことも無く三十分間、狩りを続けた。


 レベル自体は二しか上がっていないが剣術レベルが二になったし、それにゴブリンリーダーを合計二十体ちょっと狩れたからね。街に行った時の良い資金ができた気がする。


 この感じ……明日からは二階層に踏み込んでも良さそうだ。言っては何だけどシロエの強さは俺の数倍はあるからね。こんな場所で時間を潰させるのは良い人材を潰しているようで喜ばしくない。


 まぁ、二階層でも出てくるのはゴブリンリーダーとオークリーダーしか出ないからな。変わるのはオークリーダーが増える事とレベルが軒並み高くなる事くらい。その程度なら俺も全然、食い付けるはずだ。


 さてと、もうシロエが待っていてもおかしくない時間だ。オーガの時とは違って純粋に戦闘を楽しめたし、さっさと帰ってシロエに褒めてもらう事にしよう。

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