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2話 上位種、オーガ

 外へ出た瞬間に一気に空気が変わった。

 日本とは打って変わって暗く淀んだ世界、ゲームで見ていたダンジョンよりももっと恐怖を煽ってくるような空間。……早くダンジョンを出たくなってきたよ。


 吹く風がピリピリと肌を刺してくる。

 よくもまぁ、ゲームのキャラクター達は表情を一つも変えずに歩けていたね。俺のステータスが低いからなのかもしれないけど……長時間耐久はキツそうだ。


 それに……多分だけどダンジョンの空気感と一緒に、魔物の敵意も感じているからここまで気分が悪くなっている気がする。本来であれば活躍する殺意感知がここで邪魔になるとはね。


 ただ、だから何だって話ではある。

 隠密を使えば魔物に気が付かれる事は無い。魔物の種類によっては気が付かれるだろうけど、同じ階層にいるのはゴブリン種やオーク種、オーガがいるだけだ。


 コイツらは腕っ節が強いから搦手になるようなスキルは何も無い。ここもゲーム準拠ならって付けなきゃいけないけど……まぁ、仮にバレても逃げる手段はあるから問題が無いかな。


 さてと……やはり、このダンジョンはゲーム準拠みたいだね。ポータルがある時点で何となく察してはいたが入口が土の壁で隠れているとか、ポータル付近には魔物がいないとか、普通では有り得無いだろうし。


 とりあえず……あったあった。

 土の壁のどこかにボタンがあるんだ。そこを押したら扉が現れるようになる。この先に俺が目指していたポータルが……あったな。


 扉を開けて中をチラッと見たらオーガがいた。ゲームの時と同じようで目が合ったけど、中に入っていないから襲われはしない。ただ外から銃とかで攻撃してもダメージが入らないからな。


 オーガは……ゲームと同じく厳つい顔をした鬼みたいな見た目だな。体の大きさは二メートルとちょっと、それに一メートルはある棍棒を持っている。筋肉が常に躍動していて……ボディビルの大会があったら優勝しそうなマッチョメンだ。あの筋肉を付けるためには眠れない日もあっただろうな。


 一応、空間系のスキルで初期スポーン位置へ戻る事はできる。……なら、試しに戦うべきだろう。こういう格上相手にこそ、俺の心器は活躍するからね。

 って事で……いっちょ、やりますか。


 白と黒を構えて自身に隠密をかけ直す。これで確実に初撃は入れられる。オーガがいる場所に入ってすぐに見えるのは体育館程度の広さがある何も無い空間。ここもゲームと何も変わらない。


 せめて、何かしらの身を隠す場所があれば銃士にも優位があるのにね。でも、そういう小細工の素になりかねないものは何も無い。これも銃が弱いって言われる所以だ。運営が極端に銃使いを嫌っている節がある。


「とりあえず……喰らえ」

「グ……ギリィィィ!」


 十五発ずつの合計三十発。

 それを全てオーガに叩き込んだ。数発は外したが二十五発は確実に当てられた。すぐに白と黒を消して新しく出す。これがゲーム内で一番、早かったリロード方法だ。


 オーガを見たらダメージは薄そうだ。

 まぁ、最初からオーガにダメージが通るとは思っていなかったから仕方が無い。それくらい二丁拳銃が弱いのは知っていたからな。ただ少なからずダメージが入っているのは知っている。


 俺の心器の能力は相手体力の0.5%の確定ダメージだ。そして両方が黒魔法と白魔法と呼ばれる上位魔法が使えるようになる。簡単に言えば黒魔法がデバフで、白魔法がバフの力だね。


 まぁ、使っている余裕なんてないけど。

 そもそも、デバフ効果はオーガに大して効かない事は知っている。だから、俺が求めているのは固定ダメージの方だ。今の俺のステータスでオーガを普通は倒せない。それを固定ダメージの力で何とか乗り切る……っていうのが戦略だね。


 ただ……オーガには自己回復ってスキルがあって、五分で五パーセントのHPを回復するから長時間戦闘はできない。それにステータスでは圧倒的に勝ち目も無いからな。


 そこで……。


「ギィ!?」

「あっぶな」


 距離を詰められた瞬間に反対方向に飛ぶ。

 空間把握と空間断絶っていう固有スキルを合わせて転移と同じ事をした。空間魔法の一つに転移って技があるんだけど、こっちだと魔力消費が極端に多いんだよね。ゲーム準拠なら多分、しない方がいいだろう。


 空間把握で場所を選択して、空間断絶で選択した場所へ飛ぶ。……まぁ、魔力消費がほぼゼロに近い代わりに再使用まで十秒間のクールタイムがあるけど……有用度に比べれば些事たる問題かな。


 ギリギリで中距離を保ちながら飛んで。

 そこからまた銃弾の雨を浴びせる。仮に二十五発が当たっていたとして……残りは百七十五発。変に時間をかけなければ十分あれば倒せそうだな。


 おし、今ので十発ちょっと当てられた。

 すぐに心器を消して新しくーー。


「グラァァァ!」

「い、てぇ……!」


 嘘だろ……転移が間に合わなかった。

 タイミングをミスってしまったか。……ああ、やっべぇ、クリーンヒットしたせいで本当に死にそうだ。こんな事をゲームキャラクター達は味わっていたんだな。


 吹き飛ばされて壁にぶつけられ……。

 オーガは勝った気でいるようでゆっくりと近づいてきている。確かに……今の俺を見たらどこぞの中国のお茶と似たような姿だろうし当然か。


 頭を掴まれて……徐々に力を込められる。

 痛てぇな、こうやって苦しませて殺す事に快感でも抱いているのだろうか。だとしたら、結構、悪趣味でしか無いけど。そのまま力が強まって頭から軋む音が聞こえて……そして……。


「まぁ、無駄なんだけどね」

「ッ!?」


 オーガの驚く声だけが響く。

 その隙をついて俺が空間内に入った扉からオーガへ銃弾を浴びせた。さっきは相手を侮ってしまったけど次は無い。もう傷は無くなっているし意識もしっかりしている。


 良くも悪くもスキルを試す機会になった。

 これは空間遡行という固有スキルだ。簡単に言うと時間を巻き戻すみたいなものかな。きっかり三十秒間、自分だけを巻き戻す事ができる。三十秒前の自分は転移する直前だったからね。そこに戻ってきたという方が正しいかな。


 ただデメリットももちろんある。

 例えば三十秒間に敵を倒して巻き戻したら、その間に手にした経験値は破棄されてしまう。後、使った後は戻した時間の三倍経たないと空間遡行は使えなくなるのと、空間系のスキルのクールタイムが五秒間だけ伸びる。


 とはいえ、他でカバー出来るからね。

 それこそ……。


「ガァァァァッ!」


 棍棒の一振に合わせて横に回転を挟む。

 当たった感触はあるけど体へのダメージや衝撃なんかは無い。当たっているけど当たっていない不思議な感覚だ。……と、そこに意識を向けている時間は無いか。


 堕天で首元に横一文字の傷を付ける。

 薄皮……というには深い傷になったな。それを見て即座に転移して距離を取った。ゲームの時と同様に銃士固有の技、ローリングができたからね。ゲームよりもタイミングが簡単に取れるから楽でいい。


 ただ……ローリングのクールタイムは十五秒間もある。その代わり無敵時間を得られるから良くも悪くも使いやすいんだよね。オーガの足の速さからして八秒もあれば詰められてしまうから……他で補填しないと。


 すぐに心器のリロードを挟んで撃ち込む。

 ……オーガは首を抑えながら全弾を受け入れた。どうやら想像の数倍、オーガの首の傷は深かったみたいだ。


 これは幸運だね。さっさとリロードをして……。


「楽にしてやる」


 離れた位置から撃ち込み続けるだけ。

 それを五回ほど繰り返したところで……ようやくオーガは巨体を地面へと沈めた。端的に言うと最初に戦うにしては強過ぎる相手だったな。それこそ、俺のようなチートを持っているから倒せただけだ。


 レベルは……あー、一気に上がっている。

 オーガ一体で既にレベルは二十四だ。ステータスの縁が光っているけど……まぁ、それは外へ出て安全を確認してからかな。今は早く外の空気を吸いたい。


 オーガの遺体を回収して奥へ向かう。

 さっきまでは岩肌だった部分が無くなって一つの扉が浮かび上がっていた。そこに手をかけると中には光が満ちており、地面には円形の何かがある。


 形容し難いけど……これがポータルだ。

 後はこの上に立つだけでいい。そうすると光が一気に強くなって消え去り始める。そして扉を開けるとそこには同じく体育館ほどの広い空間があった。見た感じは何も変化は無さそうだけど俺は分かる。


「ようやく……一階層に来れたな」

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