表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

81/98

81.大通りでの戦闘

 破壊の限りを尽くされた市街を北へと進み始めたわたし達の前に、破壊をもたらした元凶が立ちはだかった。


 大通りは、魔人であふれ返っていた。


 奴らは、あらゆる魔装具から生まれ出たのだ。

 何百何千という数ではない。

 結界の中では、おそらく万を超える魔人がうごめいているはずだった。

 紫の肉塊で埋め尽くされた通りを、わたし達は一気に駆け抜ける。

 背後からの狙撃が、その手助けをしてくれた。

 クララさんの射撃は、驚くほど正確だった。

 魔人の弱点である頭を一撃で貫き、敵がわたし達に飛び掛かる暇さえ与えない。

 一歩進むごとに新たな敵が倒れ、死体も残さず消滅していく。 

 だからわたしとアレクは、正面に立ちはだかる魔人にのみ集中していればよかった。

 背後のアレクが撃ち出す雷の蛇や氷の棺桶で敵の足を止め。

「せやっ!」

 掛け声とともに、跳躍したわたしが赤熱の刃で魔人の頭を切り捨てる。

 それを繰り返して魔人を次々屠りながら、大門から真っ直ぐ北へと延びる大通りを駆けていく。

 この通りの、突き当りが王宮だった。

 脇には目もくれず、全速力で突き進むわたし達の前に。

 新しい群れが、立ちはだかった。

 素早い進撃を続けるわたし達に狙いを定めたのか、狙撃を受けて倒されるよりも速いペースでわらわらと集まってくる。

「軽く百はいそうだな」

「迂回なんてしない。真っ直ぐ行くよ」

 アレクの警告を聞いても、わたしは迷わず断言した。

 時間をかければかけるほど、犠牲者が増えるのだ。

 最短の距離を、最短の時間で駆け抜けなきゃいけない。

「そう言うと思ったよ」

 諦めているのか呆れているのか、アレクは驚きもせずに言った。

 マグリット・ライフルに自らの魔力を充填させて、迫り来る戦闘に備える。

「援護は任せろ。一気に突破しよう」

「とーぜん!」

 クララさんの狙撃とアレクの魔法。

 敵を圧倒する二つの力に守られたわたしは、赤い刃を振りかざして、魔人の群れへと突入した。



 魔人の群れは直進するわたしを取り囲み、前進を妨げようとした。

 長距離狙撃で次々に仲間が倒されてもなお、手にした赤い刃を振りかざし、突破を図るわたしを切り捨てようとしてくる。

 赤い血に濡れた十の刃が、四方から降ってきた。

 そのうち三つ。

 背後の三体が氷漬けになり、斬撃が止まる。

 さらに左の二体が背後から突撃してきた雷に噛みつかれ、なぎ倒された。

 わたしは残った右と前の敵を見据えて、半円を描く五つの軌道を見極めた。

 左に一歩動いてから、身体を横に。

 鋭利な刃物が鼻先と背後を通過した直後。

 地面に突き刺さった剣を踏みつけて、短剣を構えて飛び掛かる。

 狙いはたがわず、魔人の単眼に切っ先が突き刺さる。

 ぐらりと後ろに傾いだ敵から剣を引き抜き、胸を蹴って真横に突っ立つ敵の頭を切り裂く。

 わたしは頭を両断された敵の背後に狙いを定め。

「伸びろ!」

 と命じた。

 フラムダガーの魔鉱石が瞬時に反応。

 剣先からさらなる刃を伸ばし、届かないはずの敵の頭に突き刺さる。

 残りは二体。

 後ろに回った魔人は自らの得物を引き戻し、再び上段から切りかかってくる。

 石畳に着地したわたしはダガーを下から切り上げて、赤く濡れた刃を両断。

 回転しながら背後へ吹っ飛ぶ刃を尻目に、打ち上げた勢いのまま、頭を下から切り裂いた。

 残り一。

 横合いからわたしの胴を真っ二つにしようとする敵は。

 背後から飛来した、無数の風の刃がバラバラに切り刻んだ。

「行くよ、アレク!」

 わたしは後ろにいるはずの彼に声をかけ、一点突破を図る。

 数え切れない敵を撃破し続け、ようやく、包囲の突破口が見えて来たのだ。

 目の前に広がる紫の肉の壁。

 その一部に、薄い部分ができていた。

 穴をふさごうと左右から群がる敵は。

「エクスプロード!」

 わたしを中心に広がった爆炎で押し戻し、アレクの【雷蛇】とフラムダガーの斬撃で切り開く。

 そして……

 どうにか壁を抜け出たわたし達の目の前に。


 ぶよぶよとした、肉の塊が鎮座していた。


「な、何あれ?」

 あまりの不気味さに、進撃する足が止まった。

「あれは、これまでとは桁違いの奴だ。近づくな」

 アレクに警告されるまでもない。

 あんなのには近づきたくなかったし、戦いたくもなかった。

 わたしが足を止めたわずかの間に、敵の動きが変わった。

 数十の個体が、次から次へと塊の中へと、飛び込んでいき始めたのだ。

「な、なに!? 何なの!?」

 何をしているのかが、分からなかった。

 召喚獣は召喚した者の命に従う。

 奴らだって、自分が何をしているのかは理解していないだろう。

 ただそうしろと命令されたから、あの肉塊の中に飛び込んでいくのだ。

 仲間を飲み込むほどに、塊は高く大きくなり、すぐさま見上げるほどのサイズになった。

 眼前にそそり立つ塊は、鼓動を打つように脈動していた。

 表面のそこかしこから湯気が立ち上り、ザワザワと何かがはい回るような気味の悪い音を立てていた。

 血のような鉄臭さが鼻を突き、吐き気を催しそうだった。

 五感全てを不快にさせる肉塊は完成したのか、ゆっくりと形を変え始める。

 四つの膨らみが生まれ、それらが長く伸びていく。

 二つの突起が地面に突き刺さって道路を震わせ、石畳に放射状の亀裂が入る。

 不気味な紫の肉塊が手足を持つ人型へと変化して、ゆるりと……


 立ち上がった、のだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ