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海外出張(6)夢の後

 寄港地に停泊し、客がオプショナルツアーで上陸して観光している間に、食料などを積み込む。

 それに上手く紛れ込んでセレとモトは船に戻った。

 そして、最終到着地まで2日間をのんびりと過ごし、飛行機で日本へと帰国した。おかしくないように、お土産も買いこんでいる。

 そのチョコレートを、セレ、モト、リクは食べながら、報告会をしていた。

「ラビットか。性質の悪いクラッカーだぜ。あいつもマリカの所にいたのか。

 あ、言っておくけど、オレの方が凄いからね」

 リクはラビットに敵意を燃やしている。

「それより、情報が洩れてたのが困るよ」

 セレが言うと、モトも渋い顔をする。

「メールか何かからかも知れんな。普段は二重暗号を使っているメールを使っているが、職員の誰かが、隙でも見せたのかもな。薬師に報告はしておいたがな」

「及川もいたとはなあ」

 リクが言う。

「ま、モトはこれでカタがついて良かったな」

「ああ」

 脳裏に子供を抱いた妻の笑顔が浮かび、モトは自然と頬が緩んだ。

 そして、咳払いして誤魔化す。

「で、こっちの方はどうだった。何か変わった事はあったか?」

 それにリクが、ああ、と言って表情を引き締めた。

「女子高生が殺されたんだけどな。セレと同じ学校の生徒で、爪を剥がされ、何カ所も刺されたり切られたり、焼き印みたいなものを押されたりしていたらしい」

 それで、セレとモトの表情も引き締まる。

「それって……」

 モトがかすれた声を上げた。

「ああ。まるで女子高生拷問殺人の再来だぜ」

 部屋の中の空気が、シンと冷えたようだった。


 律子は、その事件を報道した記事を繰り返し読んで、眉をひそめていた。

「水島晴美……この子って、コピーしてた、片方の子じゃない……」

 ワイドショーでも、「悪夢の再来」「模倣犯か」などと報道されているが、そこに写った被害者の顔写真は、ビラをコピーしていた2人組の生徒のうちの片方だった。

「たまたまよね」

 そう呟いてみるが、自分でも空々しく聞こえる。

 そして、セレに連絡しようと思ったが、連絡先を交換していない事に気付いた。もしかしてと思って笠松に連絡してみたが、同じだった。

「なんでゲルの番号があって梶浦君のがないの」

 憮然としてスマホを睨みつけるが、夏休み前にラインに誘っておかなかった自分を呪うばかりだった。


 生徒が殺害されたというショッキングな事件に、教師達も浮足立った。

 それも、事件の内容が、やはり生徒の親が犯人とされた事件に酷似しているというので、余計だ。

「まさか、この生徒が犯人という事はないでしょうね」

 教頭が言うのを、東雲はキッと睨みつけた。

「教頭先生、なんて事を言うんですか!」

「し、しかしだね」

「梶浦君は、そんな子じゃありません!」

 それに学年主任も唸って口を開く。

「この被害に遭った女子生徒は、例のビラを貼って回っていた1人らしいじゃないか。腹を立てて、という事はないか。梶浦は、成績はいいが、暗くてロクに友達もいない生徒だろう」

 東雲は、机をバンと叩いて抗議した。

「物静かで、大勢よりも少ない友人を大切にするんです!」

 臨時の職員会議は、

「とにかく、生徒に動揺を与えないように。マスコミには何も答えないように。ビラやイタズラ書きの事は言わないように。それと梶浦が在籍している事も」

という事で決着した。

 しかし、止めていても、誰かが洩らすものである。

 梶浦真之の息子がここに在籍し、中傷するビラを貼り付けていた1人が被害者であると、警察にも、マスコミにも知らされたのだった。



 

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