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旅的あやかしシェアハウス ~観光地でリモートワークしてたら、神の使いがついてきた~  作者: 飛野猶
第2章 伊勢の夜に聞こえる「火を貸してくれませんか」
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第18話 新たな友人


 その後、川中さんは劇的に回復した。

 検査でガン本体も転移した部分も、すべての病変がきれいに消えてしまったのだという。

 医者たちもなぜガンが消えたのか首をかしげていたらしい。


 そして、川中さんは無事退院してあの家に戻ってきた。

 一時は辞めることを考えていた税理士事務所も、シェアハウスも、以前と変わらず続けられるようになったんだ。


 僕は、この家が気に入っていたし、川中さんと肉吸いのことをもう少し見守りたくて、もう少しシェアハウスの賃貸契約を延ばしてもらった。


 川中さんは世話になったからと言って料金はいらないと言ってくれたけれど、そこはちゃんとけじめとして払わないといけないと思うんだ。こんな居心地のいい家を貸してもらったんだしね。


 川中さんと肉吸いがあのあとどうなったかというと。

 川中さんの仕事が終わる黄昏時になると、薄闇の中からどこからともなく肉吸いは現れて、火のついていない提灯を手に母屋へやってくるようになった。


 その提灯に川中さんが火をつけてあげて二人で母屋の縁側に腰かけ、楽しそうに話している姿をよく見かける。


 今日は僕も仕事が早く終わったから、赤福の支店まで散歩がてら歩いて赤福買ってこようかな。そんで、僕もあの縁側に混ぜてもらおう。

 そうだ。スイカも買ってこなきゃ。縁側でスイカ食べるの夢だったんだもん。


「行こう。アカガネ」


「俺は留守番しててもいいんだが」


「なんでお前、あやかしのくせに物ぐさなんだよ。アカガネの分、買ってやらないぞ?」


「う、うぐ……わかった。ついていけばいいんだろう、ついていけば」


 ぶつくさ言いながら、アカガネも買い出しについてきた。

 もうすぐ日が暮れる。


 今日も、彼女はやってくる。

 火のついていない提灯を持って。

 彼女を待っているあの人のところへ。

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