マジック・ストーン
三題噺:ストーン、黄色、不気味
とある森、薄暗く誰も近付かないような不気味な森を歩く一人の男。
かつては色鮮やかに輝いていた黄色いスニーカーは土埃にまみれ今は見る影もなく、
堂々と太陽を浴びるべく伸びていた背は卑屈に曲がり石を投げつけられた跡さえある。
太陽の光を映し出し輝いていた瞳は曲がった背が陰を落とす。
しかし、追い詰められた獣のような色を宿し、内より溢れる炎は何かも焼き付くさんとより熱を増していた。
男は歩む。その手に持った半分ほどまで書き込まれた地図の続きを記しながら。
かつての軽やかな足取りは見る陰もない。しかし、一歩一歩、大地へと刻み込むように歩みを進めていく。
男の歩みが止まった。
曲がっていた背が伸び、目の前の『モノ』を呆然と見つめる。
それは、石だった。人々が見ればただの石じゃないかとすぐに興味を無くすような石。
だが、男はその石をしばらく見つめると満足そうな笑みを浮かべ、力尽き倒れた。
脱げ落ちたスニーカーは、汚れ、見る影もなかろうが、確かに黄色だった。
後にその石は人々に歓喜と驚きをもたらし、別の男の名と共に『マジック・ストーン』ともてはやされた。
倒れた男の名は傍らに小さく記されていた。




