地上から天に昇る星
健太郎が変形し巨大化を続け作り出したのは小型のロケット発射台だった。
ロケットの大きさは二メートル程、健太郎の視界にはイグニッションまでのカウントダウンが表示されている。
ええーッ、ちょっと待ってちょっと待ってッ!? コレってミサイルとかじゃないよねッ!? 誘拐犯を倒してもタニアまで巻き込んだら意味無いんですけどぉ!?
体の意図が分からず健太郎がアタフタしている間にも、刻一刻と発射迄の時間は減って行く。
『打ち上げまで残り1分、打ち上げ台周辺の作業員は安全の為、今すぐ退避して下さい』
いないよッ、作業員なんてッ!! てか喋れるじゃないか!? 俺が思った事じゃないけど……。
『注水開始』
ロケットエンジンの燃焼ガスから射点を守る為、大量の水がエンジンの真下に溜められる。
あっ、なんか凄いモヤモヤする。おしっこする夢を見た時みたいな……まさか、本体は洩らしてないだろうなッ!?
健太郎がブルーシートの家で眠っているだろう身体の事を案じている間にも、射点保護用の水は溜まり秒読みは進んで行く。
『打ち上げまで残り30秒、ジャイロ正常稼働中、ブーム切り離し』
ロケットを支えていたブームが切り離され、燃料を注入していたと思われるケーブルが外れるとジャイロ制御されたロケットは自動で揺らぎを調整した。
『打ち上げまで残り10秒、9、8、7、6』
「ミシマッ、何やってんだいッ!?」
ギャガンに支えられたミラルダが、健太郎を追って屋上の端に顔を出す。
あっ!? ミラルダ危ないッ!! クソッ、打ち上げは中止だッ!!
『3、2、1、イグニッション』
健太郎の気持ち等お構いなしに彼の体はエンジンに点火、閃光と大量の水蒸気を発生させロケットを打ち上げた。
「ぶわっ!?」
「うおッ、こりゃあ砂竜の時と同じ!?」
「おいッ、何が起こっているッ!?」
「グリゼルダさん、アレッ!!」
シャラが指差す先には炎を吹き出し空へと駆け上がって行く小さなロケットが見えた。
「何だアレは?」
「凄い、一瞬であんなに高く……」
「お星さまみたい……」
庭に出たグリゼルダと子供達、そしてキューはポカンと口を開けて登ってゆくロケットを茫然と見つめていた。
一方で屋根に上ったミラルダとギャガンは、水蒸気が風で流れポツンと空を見上げていた健太郎に駆け寄る。
「ミシマッ、アレは一体何なんだいッ!?」
「何か筒が空に昇って行ったが……?」
「コホーッ」
俺にも良く分かんないんだ。でもタニアを見つけられる何かだと……ん? 何だコレ……。
健太郎の視界にウインドウが開き、そこに航空写真の様な映像が映し出される。
最初は広域を映し出していたそれは、やがてズームし二匹の鳥らしき影を表示した。
その横には広域マップらしき物が表示され鳥が何処を飛んでいるのか一発で分かった。
「コホー……」
これは……こいつ等がタニアを……。
「タニアッ!? ミシマ、何か分かったのかいッ!?」
「コホーッ!!」
ああッ!! ケントの情報通り北西に向かっているッ!! ミラルダ、ギャガン、後を追おうッ!!
「了解だよッ! ギャガン、ミシマが誘拐犯を見つけたッ!! 出発の準備を!!」
「おうッ!! ミシマ、さっきの奴が何なのか後で教えろよッ!!」
そう言うとギャガンはミラルダを抱え上げ屋根から飛び降りた。
それに続き健太郎も屋根から飛び降り庭へと降り立った。
その健太郎の下にトーマス達が駆け寄る。
「ミシマさん、ミラ姉がタニアの居場所が分かったって言ってましたが!?」
「コホーッ!」
ああ、今も追跡中だッ!
健太郎が親指を立てるとトーマスはホッとしたのか、強張っていた表情を緩めた。
「やっぱり北西に向かってた!?」
「追いかけるなら似顔絵も持って行って!」
「怪しい奴はやっぱり竜人族だったのッ?」
「タニアは無事なのッ!?」
「ドラ○もん、タニアちゃんは元気だよねぇ……?」
「キュエーッ!!(タニアは何処なのッ!?)」
ケントは自分が仕入れた情報の確認を、ルックは似顔絵を差し出し、ジェフは自分の推測が当たっていたのか不安げに尋ねた。
シェラとミミ、女の子二人は共にタニアの身を案じ、キューはタニアの居場所を尋ねた。
「コホーッ!!」
みんな安心してくれ、必ずタニアは傷一つ付けさせず取り戻して見せるッ!!
健太郎がミミの頭を撫で、子供達に視線を送り頷くと彼らは多少安心したのかぎこちなく笑みを浮かべた。
そんな子供達の後ろにボンヤリと浮かんでいたレベッカが健太郎に向け口を開く。
"ミシマ、前に話した竜神へ至る道についてだけど……あの時は話さなかったけど、奴らは竜の血を飲むだけじゃないんだ……"
「コホーッ?」
血を飲むだけじゃない? 他に何を?
"あいつ等、子竜をバラバラにしてその肉を……神の肉体を身に取り込むとかなんとか……"
「コッ、コホーッ!?」
バッ、バラバラだってッ!?
"今回の奴らが竜神へ至る道と同じかどうかは分からない。でも、もしそうでも儀式には順序がある、すぐにはそうならない筈だよ。だけど時間をかけちまえば……なるだけ急ぐんだ"
「コホーッ!」
了解だッ! 奴らにはタニアの血の一滴だって渡さないよッ!
"頼んだよ、もうあたしにゃどうにも出来ないからさ"
力強く頷いた健太郎に、レベッカは霊体となった自分の右手に視線を落しながら小さく呟く様に答えた。
お読み頂きありがとうございます。
面白かったらでいいので、ブクマ、評価等いただけると嬉しいです。




