切れるカードは多い方がいい
クルベストの職人街、その職人街にあるこの国では珍しいドワーフの店バルバド工房。
その工房でこれまたこの国では珍しい、獣人と魔人が店主のバルバドと話をしていた。
「何? ギャガンちゃん、その子、恋人?」
「あ? 誰がこんな女と、こいつはただの仕事仲間だよぉ」
「その通りだ。それより先程聞いた鉄仮面についてだが?」
「ええっと、目隠しに使えて簡単に取り外せない頑丈な物だったかしら?」
ドワーフの鍛冶屋バルバドは、グリゼルダの言葉にニンマリとした笑みを返した。
「なになに、そういうプレイが好きな人がお友達にいるの?」
「プレイ?」
「いねぇよ、んな趣味の奴は。捕虜にした相手が視線が厄介な奴なんで、取り敢えず封じてぇだけだ」
「なんだ、つまんない」
「ギャガン、プレイとは何だ?」
「……お前は知らなくていい。それよりあるのかバルバド?」
「ええ、丁度いいのがあるわ。そういうのが趣味のお貴族様の依頼で作ったんだけど、その人、汚職がバレて捕まっちゃって、在庫が一つ残ってるの、引き取ってくれるなら安くしとくわよ」
そう言うとバルバドはギャガンに向かってウインクを送った。
「そういう趣味とはなんだ?」
「だからお前は知らなくていい」
「むぅ……貴様が知っていて私が知らないとは……」
「ウフフ、グリゼルダちゃんだったかしら、貴女、なんだか可愛いわねぇ」
「むっ、戦士に可愛さなど不要だ!」
「バルバド、いいから早く持って来てくれ」
「はいはい」
バルバドはギャガンに急き立てられウフフと笑いながら店の奥へと姿を消した。
「ふむ……しかし先程の話も謎だったが、この店にある物もよく分からん物が多いな」
「そうか? 大体、武器防具の類だと思うが」
「魔人族は武器と言っても細剣かナイフぐらいしか使わん、大体魔法でどうにか出来るからな」
「なるほどな……」
そう言うとギャガンはグリゼルダの頭の先からつま先まで視線を動かした。
「なんだ?」
「いや、お前ぇもトーマスと一緒に剣術を習ってみねぇかと思ってよ」
「私が剣術を?」
「おう、軍隊なら画一した装備や戦闘法は有効だろう。だがミシマ達と付き合って冒険者やってくんなら色々使えた方がいいだろ?」
「ふむ……」
グリゼルダは顎に手を当て暫し視線を泳がせると、やがてゆっくりと頷いた。
「確かに一理あるな」
「だろ。俺も王宮襲撃にゃあついて行ったが、お前らみてぇな魔法がねぇとああいう場面じゃ役に立てねぇ」
「なるほど、交換条件という訳か?」
「話が早い奴は好きだぜ」
「獣人に魔法か……」
今度はグリゼルダがギャガンの体に探る様な視線を送る。
「見てみたがそもそもの魔力量が少ないから、お前は恐らく初歩魔法ぐらいしか使えんぞ」
「分かってるよぉ、だが切れるカードは多い方がいいだろ?」
「ふむ……臨機応変に対応するならそれもありか……分かった今の仕事が終わったら教えてやろう」
「おし、出来れば剣の切れ味が増すとかそういうのを頼むぜ」
「魔法を使ってもミシマは斬れんと思うが?」
「やってみなきゃ分かんねぇだろうが」
「まったく、お前は……」
グリゼルダは呆れを含んだ苦笑を浮かべていると「お待たせ」とバルバドが木箱を抱え戻って来た。
「ほらこれよ。あとこの手枷もサービスで付けてあ・げ・る」
そう言ってバルバドが箱から取り出した物を見て、ギャガンとグリゼルダは顔を見合わせ苦笑を浮かべた。
■◇■◇■◇■
金竜王の迷宮、その最奥にある古代の神殿の敷地に魔法で作られた簡易小屋の中、金髪で褐色の肌の女が土魔法で生み出された椅子に座っている。
その周囲には赤い髪の半獣人の他、青黒いゴーレム、獣人、そして数人の魔人族が彼女を取り囲んでいた。
みんなごきげんよう(*^▽^*) 魔族の国、エルダガンドのアイドルキュベルだよ(≧▽≦)
今、私はミシマとかいう転生者のゴーレムに捕まって、どこだか分からない場所に連れて来られちゃったの(´;ω;`)
何だか変な目隠しされて、ずっとお説教みたいな話聞かされるし、ホントもう最悪ヽ(`Д´)ノプンプン
大体、なんで私の物語に他の転生者が絡んでくるのよ、転生とか管理してる神様も空気読んでよねッ( ・`д・´)
そんな風に頭の中で愚痴を言っていた仮面を被らされたキュベルを見て、健太郎は似てるなぁと思ったがあえて追及はしなかった。
「ちょっと聞いてんのかい?」
「聞いてるよ」
「じゃあ、もう他の国にちょっかい出したり、悪だくみしたりしないね」
「…………」
「なぁ、やっぱ始末した方が早いぜ」
始末と聞いてキュベルの腹に冷たくせり上がってくるような感覚が走る。
「ギャガン、それは無しだって言ったろ」
「だが、この公娼様がいるとエルダガンドは滅茶苦茶にされちまうぜ」
「ミラルダさん、やっぱ制約の魔法でスキル使えないようにするしかないッスよ」
「うーん、でも制約も絶対じゃないし、あたしゃこの娘に世界にゃ色んな人がいて、それぞれが繋がって生きてるって分かって欲しいんだよ」
「コホー」
そうだぞ、みんなそれぞれ役割があって世界は回ってるんだ。必要ない人なんていないんだよ。
「ほら、ミシマもそう言ってるよ」
「だからミシマの言葉はお前しか分からんのだ」
どうやらあの赤い髪の魔法使いミラルダと青いゴーレム、ミシマは私に考えを改めて欲しいみたい(;´・ω・)
でもなんでそんな手間のかかる事を(・ω・)?
私はこの世界に転生した時に自分の理想の世界を創ろうと決めたの<(`^´)>
美しい様々な人種の男の子たち、彼らに囲まれて生きる理想郷をねッ(∩´∀`)∩
「あのさ……」
「なんだい?」
「今は色んな種族が別れて暮らしてるよね? でも色んな人が混じり合い交流した方が皆にとっていい事じゃないの?」
「……私もそう思うさ。でもあんたのやり方じゃ、沢山の人に迷惑が掛かるだろ?」
「改革に犠牲は付き物だって、転生前住んでた国の偉い人は言ってたよ?」
「コホーッ」
そうやって切り捨てられる弱者も同じ命だッ。誰だって懸命に生きている、捨てられていい命なんて無い筈だッ。
「……そうだね……ねぇキュベル、簡単に犠牲っていうけどそいつは命なんだ、あんただって変化の為に死んでくれって言われたら嫌だろう?」
「…………」
勿論死ぬのは嫌だ。でもでも変化しようとしないその人達が悪いじゃないの( `з´)?
みんな仲良く暮らす事の何が悪いのよ。入り混じって多様性が生まれるって駄目な事なの(´-ω-`)?
「もう、分かんないよ……」
「コホー……」
キュベル、君が君の人生を生きている様に、他の命もそれぞれ同じように生きてるんだよ……。
「あんたも何言ってんのかわかんないッ!!」
「ふぅ……今日はここまでにしようか……ほらおいで、ご飯を食べさせてあげるから」
「ご飯なんかいらないッ! 私をエルダガンドへ返してッ!」
そう叫んだキュベルのお腹がくーっと鳴った。
恥ずかしさで頬が熱くなるのを感じたキュベルの手に柔らかな手が触れる。
「フフ、強情張ってないで、おいでな」
「うぅ……分かった」
空腹もあったが、笑ったミラルダの声がとても優しく感じられて、キュベルは下唇を突き出しつつも彼女に従った。
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