フワフワな二人
電撃でキュベルと彼女に操られたミラルダを気絶させた健太郎は、二人を小脇に抱え窓から飛び出し背中のスラスターを噴射させ空へと逃れた。
その健太郎をグリゼルダが乗った竜が回収する。
「コホーッ」
説得出来なかったんで、取り敢えず連れて来た。
竜の背に乗った健太郎を見てグリゼルダは苦笑を浮かべる。
「それがキュベルか? というか、なぜ二人ともそんな髪に」
グリゼルダの指摘通り、ミラルダとキュベルは見事なアフロヘア―になっていた。
「コホー……」
いや、ミラルダがキュベルに操られちゃってさぁ……攻撃する訳にもいかないし、ドラマやアニメみたく簡単に気絶させる方法なんて知らないから、やむを得ず電撃で……。
二人を竜の背に横たえ、ポリポリと頭を掻く健太郎にグリゼルダは冷ややか視線を向けた。
「……やはりお前の言葉は分からんな……ふむ、念話の魔法を研究してみるか……」
「よぉミシマ、キュベルって女には会えたのかッ!?」
「コホーッ!!」
オーグルが乗った竜に便乗していたギャガンが横を飛びながら声を張り上げる。
彼の問いに健太郎は両腕で丸を作り、自身の前に横たえたキュベルを指差す。
「じゃあ、取り敢えずの目的は達成だなッ!? んじゃ逃げるとしようぜッ!!」
「了解だッ!! ラーグに帰還してくれ」
「シャアアアッ(分かったですぅ)」
グリゼルダは緑の鱗の竜の首をポンと叩き彼に帰還を促した。
その後を追い陽動の為、攻撃を仕掛けていた他の竜たちも高度を上げて王宮から離れた。
■◇■◇■◇■
「ググッ……キュベル様……」
健太郎が吹き飛ばしたキュベルの従者、グラハムは壁に激突し意識を失っていた。
それから復帰した彼はヨロヨロと立ち上がり、主であるキュベルの部屋へと向かう。
そこに主の姿は無く、あるのは開いた窓とそこから聞こえる混乱した兵士達の声だけだった。
「あのゴーレムに……」
グラハムは部屋を出ると、王宮の前庭で竜から受けた被害の対応に当たっていた下士官の一人を呼び止め詰め寄った。
「キュベル様が攫われたッ! すぐに捜索隊を組織するんだッ!」
「キュベル様? 公娼の?」
「そうだッ! 恐らく青いゴーレムに攫われたと思われるッ!」
「青い?」
「あっ、俺見ましたよ。青いゴーレムが誰かを抱えて窓から飛ぶの」
話が聞こえたのだろう、気絶した兵士を担架に乗せ運んでいた救護兵がグラハムたちに声を掛けた。
「本当かッ!? それでそのゴーレムはッ!?」
「緑色の竜に乗って北西に……」
「そうかッ、ではすぐに後を」
「……ローベル卿、今は事態の収拾と怪我人の収容が先でしょう。それに相手は竜、一般兵では返り討ちにされるだけですよ」
「クッ……」
「では小官は任務に戻ります」
下士官は顔を歪めたグラハムに敬礼を返し、竜が破壊した建物に向かい駆け去った。
救護兵も黙り込んだグラハムから逃げる様にその場を後にする。
「あのゴーレムと竜に勝てる物……」
俯き小刻みに視線を彷徨わせていたグラハムは、やがて顔を上げるとある場所を目指し歩き始めた。
■◇■◇■◇■
「ふぅ……ミシマ、操られてあんたに攻撃した事は確かに悪かったけど、こりゃあんまりじゃないかい?」
竜の背の上で意識を取り戻したミラルダは、フワフワなアフロヘアーを手で触りながら健太郎に苦情を申し立てた。
「コホーッ」
いやー、メンゴメンゴ、咄嗟に止める方法がアレしか思い付かなかったんだ。
「全くもう……」
「フフッ、いいじゃないか。中々に似合っているぞ」
グリゼルダは以前、可愛いと言われた事の意趣返しのつもりか振り返りニヤッと笑みを浮かべた。
「コッ、コホーッ」
そっ、そうだよ。グリゼルダの言う通り、フッ、フワフワで可愛いよ。
「そうかい? フフフ、可愛いかい? じゃあ、まぁいいか……それでこの娘、どうしたもんだろうね」
ミラルダは竜の背で眠るキュベルに視線を向け、眉根を寄せて首をかしげる。
「ミラルダ、お前はコイツに見られた事で操られたんだったな?」
「ああ、あの瞬間、この娘の事が可愛くてしょうがなくなって、何でもいう事聞いてあげたいって気持ちが、こうぶわぁと湧いちまってねぇ……」
「ふむ……恐らく魅了の視線だな。それで王宮の連中を虜にしていたのだろう。魅了の視線……淫魔や吸血鬼なんかが使う事はあるが……」
「コホー……」
淫魔に吸血鬼……そんなのもいるんだ……淫魔か……やっぱエロいのかなぁ……。
健太郎の脳裏に格闘ゲームに登場したサキュバスの姿が浮かぶ。
「はぁ……ミシマ、馬鹿な事言ってないで対策を考えておくれよ」
ミラルダはボーっとゲームの事を思い出していた健太郎に、ジトっとした目を向けながらため息交じりに言った。
「コホー……?」
対策って言われてもなぁ……視線で魅了するんだったら目隠しでもすればいいんじゃないの?
「目隠しなんて直ぐに外されちまうだろ」
「そうだな、布で覆ったぐらいでは少々心配だな」
「コホーッ」
じゃあ、簡単に外れない様に鉄仮面的な奴を……そういえば、ビジュアルは知ってるけどあの人、何で鉄仮面を被ってたんだろう?
健太郎はスケバンが刑事になるドラマの事を思い出しながらミラルダに提案する。
「鉄仮面ねぇ……それで魅了を封じれるのかねぇ」
「多分、いけるだろう。吸血鬼の物も互いの視線が合う事が条件だった筈だからな。鉄ならそう簡単に壊される事もないだろう」
「じゃあ、バルバドさんにでも相談してみるかねぇ」
「当面はそれでいいだろうが、説得に応じないなら制約の魔法でスキルを縛る必要もありそうだ」
「あんまりそれはしたくないけどねぇ……」
「コホーッ」
よく分かんないけど、俺も無理矢理ってのは嫌だなぁ。
「だよねぇ……頑張って説得するしかないかねぇ……」
「まったく、お前らは……」
グリゼルダは呆れを含んだ苦笑を浮かべたが、自分の主張を固辞するつもりもないようだ。
ともかくとしてキュベルの視線を封じ、彼女をなんとか説得するという流れになりそうだ。
しかし、アフロなミラルダに鉄仮面なキュベルか……なんだかどんどん悪目立ちする感じになってきたなぁ……。
そんな事を考え、自分の所為ではあるがと思いつつも健太郎は思わず肩を竦めた。
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