転移者とケバイ魔法使い
登録を終えた健太郎を玄関ホールの椅子に座り待っていたミラルダが笑顔で出迎えた。
「コホーッ?」
どうしたのミラルダ? 何かいい事があったの?
「随分と受付の人と楽しそうに話していたじゃないか?」
「コホーッ!!」
いやぁ、思いの他盛り上がってさぁ!! やっぱエンターテイメントは万国共通だね!!
両手を動かし興奮気味な健太郎を見て、ミラルダはクスリッと笑い「友達が出来たんだね」とはにかんだ。
「それで、ギルド証は貰えたかい?」
「コホーッ」
健太郎は先程受け取った金属片をミラルダに差し出す。
「何々……ミシマ・ケンタロウ、二十四歳……ミシマ、あんた、ケンタロウって名前だったのかい……ケンタロウ……今更呼び方を変えんのは……今まで通り、ミシマでいいかい?」
「コホーッ」
いいよ。俺もケンタロウって名前で呼ばれるとなんか照れるし。
ギルド証を受け取りつつ親指を立てた健太郎にミラルダは頷きを返す。
「しかし、二十四歳って、あんた異界じゃ随分早くに亡くなったんだねぇ」
「コホーッ」
あっ、転生って言うぐらいだから、やっぱリアルで死んだ人が来る感じなんだ。
なるほどねぇ……そこらへんはラノベの影響だろうな。
健太郎がうんうんと腕組みして頷いていると二人に金髪の女が近づいて来た。
その女は胸の谷間を強調する扇情的な服装に加え、かなり濃い化粧で強い香水の匂いを漂わせていた。
「ごきげんよう、ミラルダ」
「フィリス……何の用だい?」
ミラルダは先程とは一変して冷たい声音でフィリスと呼ばれた女を睨んだ。
睨まれたフィリスはニヤニヤと笑いながら口を開く。
「フフッ、なんでも第一階層が主戦場の半獣人が強力なゴーレムを手に入れて、少し調子に乗ってるって聞いてね」
「調子になんて乗ってないよ。用が無いならどっか行っておくれ」
「用ならあるわよ……その青いのが噂のゴーレムね。ねぇ貴方、嫌われ者の半獣人なんか止めて私と組まない?」
フィリスはそう言って健太郎にウインクしてみせた。
「コホーッ」
あっ、結構です。
右手を上げて速攻で首を横に振った健太郎にフィリスは「はぁ?」と顔を顰める。
「この私がわざわざ声を掛けてやっているのに、断るっていうの?」
「どうしたよ、フィリス?」
「将吾、聞いてよ。このゴーレムが私の誘いを断るって言うよの」
将吾と呼ばれた黒髪の金属鎧を着た青年にフィリスは甘えた口調で訴えた。
「あん? 例の青いゴーレムか……てかロボットじゃねぇか」
「コホーッ」
将吾という名前、それに俺を見てロボットと言ったという事はこいつは転移者って設定の様だ。
しかし、フィリスといいこの将吾という男といい、人を小馬鹿にした態度は会社の奴らを思い出す。
夢でまでそんな奴らと付き合いたくはないな……。
そう考えた健太郎は依頼もある事だしと、ミラルダの手を取り行こうと右手の親指でギルドの出口を指し示す。
「そうだね……フィリス、仕事があるんだ。悪いけど失礼するよ」
「ちょっと待ちなさいよッ!? まだ話は終わってないわよッ!」
「アンタの誘いをミシマは断った。それで話は終わりだろ?」
「待てよ、獣女」
嘲りを含んだ将吾の声音に健太郎の足がピタリと止まる。
「コホーッ!!」
ミラルダを馬鹿にするな!! ミラルダは頼りになって、ちゃんと子供達の面倒も見てて、その上、綺麗でそれでいて可愛い所もあって……とっ、とにかく凄いんだぞッ!!
「ミシマ、私の事で一々そんなに怒らなくてもいいよ」
「コホーッ!?」
何でだよッ!?
憤り両手を振り上げプンプンと怒りを表現した健太郎を将吾は鼻で笑った。
「なんだコイツ。いっちょ前にキレてんのか?」
「ブシュー!!」
「何の騒ぎですかッ!?」
放熱版から蒸気を吹き出した健太郎に気付いたクニエダが、受付のカウンターから出て四人に駆け寄って来る。
「チッ、どうせお前達も赤竜の洞に潜るんだろ? 精々背中には気をつけな。行こうぜフィリス」
「あっ、ちょっと待ってよぉ、将吾ぉ!!」
捨て台詞を残し足早に立ち去った将吾を追い駆け、フィリスもその場を後にする。
「まったく、なんであいつらは、いつもいつも絡んでくるかねぇ」
「コホーッ?」
いつもああなのか?
「まぁね……」
「はぁ……またあの二人ですか……」
カウンターから駆け付けたクニエダがやれやれとため息をついて首を振る。
「コホーッ?」
また? あの二人、そんなに問題起こしてるの?
そう言って首を傾げた健太郎にクニエダは苦笑を浮かべ答える。
「黒崎将吾さんとフィリスさん、黒崎さんは転移者で強力なスキルを持っています。フィリスさんも魔術師としては一流なんですが……いかんせん、二人とも自分の能力を誇って他者を見下す悪癖がありましてね……ミシマさんも余り近づかない様にして下さい」
「コホーッ」
そうするよ。忠告してくれたクニエダにうんうんと頷きながら、健太郎はかつての同僚たちを思い浮かべていた。
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