冒険者ギルド
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アドルフ・フィッシュバーン伯爵。
そう名乗った金髪角刈りおじさんからの仕事、竜の卵、もしくは幼生体の捕獲を健太郎は請け負う事にした。
リゼルが言い出した騎士団への加入は断った健太郎だが、フリーで仕事をする事に抵抗は無かった。
彼が忌避したのはあくまで上下関係の発生する組織への参入であり、働く事自体が嫌になっていた訳では無かったからだ。
「そうだ、ミシマ。お前ぇ、冒険者ギルドには登録してんのか?」
「コホーッ?」
冒険者ギルド? いや、ダンジョンから脱出してからリゼルの所為でバタバタしてたから。
首を振った健太郎に金髪角刈りおじさんは告げる。
「じゃあ、登録しとけ。ギルドを通した正式な依頼にしときゃあ、嬢ちゃんの触れを出す時に都合がいいからよ。んじゃあ、俺は城に戻って諸々の事やっとくから!」
そう言うとおじさんは赤い手綱の白馬を操り颯爽と走り去った。
「コホーッ」
あっ……せっかちなおっさんだ。
「ふぅ……慌ただしい人だったね。でもまぁ、ギルドに登録しておくのはいいかもね。流れ者でも国民として戸籍も貰えるし」
「コホー?」
そうなんだ?
首を傾げた健太郎にミラルダは答える。
「ああ、ギルド証は身分証としても使えるしね。そういう訳だからさミシマ、取り敢えずギルドに行こうか?」
そう言うとミラルダは首に掛けていた米軍の認識票の様なペンダントを取り出すと、健太郎にニコッと微笑んだ。
そんな訳で健太郎は現在、街の中心のあるレンガ造りの建物のロビー、その受付カウンターで面接を受けていた。
道々聞いたミラルダの話によれば、ギルドに登録していなくてもダンジョンには潜れるそうなのだが、ギルドの後ろ盾があれば身分証明の他にも税金とか色々と都合がいいらしい。
「名前はミシマ・ケンタロウさん。年齢は二十四歳、住所はフィッシュバーン伯爵領、領都クルベスト、平民街三丁目二十五の三、間違いありませんね?」
「コホーッ」
腕で大きく丸を作った健太郎を見て、受付を担当している黒髪眼鏡で七三分け男はクイッと眼鏡を上げ無言で頷いた。
「次に戦闘スタイルは大剣にカラテ……カラテというのは転生者が使う格闘技ですね……確か片眉を落とす事で力が増すとか……」
「コホーッ?」
片眉ぅ? と首を捻った健太郎に「違いましたか、失礼しました」と男は返し咳払いを一つした。
彼の名はクニエダ、異界語(主に日本語)に精通しており、漢字、ひらがな、カタカナも読む事が出来たので、コミュニケーションに難のある健太郎の担当に付いたのだ。
自己紹介の際、その事を説明され、その後、最近の異界の情報を根掘り葉掘り聞き出された。
どうやらクニエダは転生者の孫らしく、幼い頃から祖父がこの世界で集めた漫画、小説に触れて育ったらしい。
健太郎もそういう話を社会に出てから人と話していなかったので、小一時間程、アニメや漫画の話で盛り上がってしまった。
恐らくそれも自身の願望の現れだとその時の健太郎は思っていたが……。
「それでは職業的には戦士という事でよろしいですか?」
「コホーッ」
再度、健太郎は腕で大きく丸を作る。
「実力については魔法使いのミラルダさんから、ドラゴンスレイヤーだと証言を頂き、討伐の証である鱗等も確認いたしましたので登録は問題御座いません。何か質問は御座いますか?」
そう言って再び眼鏡を持ち上げたクニエダに、健太郎は渡された紙に質問を書いて提示する。
そういえば、えらいすんなり登録出来たけど、俺みたいなゴーレムって他にもいるの?
「いえ、ゴーレムという例は私の知る限り初めてで御座います。ですが転生者の方は祖父の例もある様に珍しく御座いませんので。それに伯爵様からも上手く取り計らって欲しいと要請が御座いましたので」
「コホーッ」
なるほどな、どっちかっていうと角刈りおじさんの口添えがかなり効いたんだろうな。夢世界でも権力者の一言は効果抜群って訳だ。
「他には何か?」
クニエダの言葉に健太郎は首を横に振り、質問はもう無いと伝える。
「そうですか、ではこちらを」
すっと机の上に差し出されたのはミラルダの物と同じ、米軍の付ける認識票に似た鎖のついた金属片だった。
「こちらにミシマさんの氏名、所属、連絡先等が記載されています。身分証としても使える他、モンスターとの戦いで命を落されても、他の冒険者によってこれが発見されればご家族に連絡が行くようになっております。紛失した際はお早めに最寄りのギルドまでお知らせください」
「コホーッ」
似てるとは思ってたけどホントに認識票だった……多分死ぬ事は無いだろうけど、無くさない様に気を付けるか。
認識票を受け取り手を振ってギルドの受け付けを去ろうとした健太郎に、クニエダがあの……と眼鏡を光らせながら声を掛ける。
「コホーッ?」
何かな?
「あのですね……また、動く漫画……アニメのお話をお聞きしたいのですが……時間がある時で結構ですので、お願い出来ないでしょうか?」
「コホーッ!!」
勿論さッ、俺も夢世界にどんな漫画や小説があるか知りたいしねッ!!
親指を立てた健太郎にクニエダはフフッと笑うと、健太郎を真似てグッと親指を立てた。
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