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予行演習

 ギャガンが真田(さなだ)に申し込んだ手合わせ、それにロミナが口を挿んだ。


「ギャガン、その手合わせとやら、私も混ぜろ?」

「あん? バトルロイヤルか?」

「違う、私とお前、二人で組んで真田と戦うのだ」

「ふざけんなよ、俺はコイツとタイマンで勝負してぇんだ」


「まぁ聞け。本戦、グリモラだったか、真田の見合い相手を含め殆どが精霊魔法の達人の筈だ。奴らは上位精霊の召喚をしてくる可能性が高い。つまり真田は多対一の戦いを強いられる事になるだろう」


 ロミナの説明にギャガンは「なるほどな」と小さく呟く。


「俺達との戦いを本戦の予行演習にするって訳だな」

「そうだ。どうだ真田?」

「……せやな、一回試しとくのも有りやな」


 そう言うと真田はボロボロになった長袍を脱ぎ捨てた。


「あの、ギャガンさん、ロミナさん、骨折とか大怪我するような攻撃は……」


 話を聞いていたニーナは眉根を寄せてギャガン達を見る。


「心配するな、怪我をしてもグリゼルダが治してくれるさ」

「私はクスリ箱ではない。それに骨接ぎは出来んぞ」

「分かってるよぉ、ちゃんと寸止めはするつもりだぁ」

「手加減はいらんで。本気や無いと予行演習になれへんから」

「ふぅ……ニーナ、真田先生もやる気みたいだし、私達は離れていようか?」

「……分かりました。店長、気を付けて……」


 心配そうに真田を見たニーナに彼は優しい微笑みを返した。


「大丈夫や、わい最拳は最強の拳法やで、それはニーナはんが一番よぉ知ってるやろ?」

「……そうですね、わい最拳は最強ですよねッ!!」


 見つめ合いピンク色の空気を出す二人を健太郎(けんたろう)は少し離れた場所で眺める。


「コホー……」


 思い合う二人か……なんかこうキュンキュンするなぁ。


「ピポピポッ!!」

「コホー?」


 何だコロ、お前もこの気持ちが分かるのか?


「ピポピポッ!!」


 健太郎の問い掛けにコロはうんうんと頷くと真田達に近寄り、何処かから取り出した花吹雪を真田達の上でパッパッと撒き始める。

 花吹雪は空中で拡散、キラキラした光の粒子となって真田達の周りを舞った。


挿絵(By みてみん)


「わぁ……綺麗やねぇ……」

「コロ、店長を応援してくれてるの?」

「キラキラしてて、なんだか結婚式みたいだねぇ」

「結婚式ッ!?」

「ピポピポッ!!」


 ミラルダの言葉を聞いて顔を赤らめたニーナを見て、コロは嬉しそうにカメラアイを細め、更に勢いよく花吹雪を撒いた。


「ちょっと待てコロ。それは真田が我々と戦ってからだ」

「そうだぜ、真田がどれだけ仕上がってんのか分かる前に花吹雪たぁ、気が早すぎるぜ」

「確かにな」

「ピポ……ピポピポッ!!」


 ロミナ達の言葉を聞いたコロは一瞬戸惑った様子を見せた後、今度はロミナ達に花吹雪を振りまいた。


「……よく分からん奴だ……まぁいい、真田。そろそろやろうか?」

「そうやな。ニーナはん、それとみんなもちょっと離れといてくれる?」

「はい」

「了解だよ。コロ、あんたもおいで」

「ピポピポッ!!」


 ミラルダが呼ぶとコロは彼女の腕の中に納まった。


「えっと、ルルだっけ? あんたもこっちにおいでな」

「ニ゛ャー(わかったぁ)」

「随分、人に慣れたキマイラだ」


 そんな話をしながら真田達から離れたミラルダ達と入れ替わりに、健太郎は彼らに歩み寄った。


「コホー」


 俺が審判をするよ。


「ミシマが審判をするってさッ!!」

「まぁ、お前なら巻き込まれても死ぬこたねぇよな」

「話は聞いたがそこまで頑丈なのか?」

「ミシマはんはわいが思いっきり技決めても吹き飛ぶだけやさかい。多少の魔法やったら効かんと思うで」

「竜の牙の剣でも傷一つ付かねぇしな」

「ふむ……では巻き込みを気にする必要は無いな……ギャガン、貴様はやりたい様に攻めろ、私は上位精霊を呼び出してサポートに当たる、本戦もこういった形が多い筈だ」

「了解だ」


 ギャガンの言葉を最後に真田とロミナ達は自然と健太郎を中心に距離を取った。

 真田は拳を構え腰を落とし、ギャガンは腰に佩いていた練習用の木刀を抜いた。


「コホー……コホーッ!!」


 えー……では始めッ!!


 健太郎は首を振って真田達を確認すると、呼吸音と共に腕を交差させた。


「店長ぉッ、頑張ってッ!!」

「ピポピポッ!!」

「どっちも怪我するんじゃ無いよッ!!」

「その通りだッ!! なるべく仕事を増やすなッ!!」

「ニ゛ャー、メェエエエェ」


 ニーナ達の応援の声が響く中、ギャガンは飛び出し、真田は精霊に呼び掛け右手に炎、左手に水を纏わせた。


「万能なる魔力よ、我が剣に宿り敵を打倒す刃となれ、魔力付与(エンチャント)


 ギャガンが呪文を唱えると彼の左手中指に嵌めた指輪が輝き、木刀に青白い光が宿った。


「ホンマに獣人の身で魔法を使うんやな?」

「使えるのは今んとこ低級魔法だけだがなぁ」


 輝く刃を手にしたギャガンは舞う様に真田に襲い掛かる。真田はその神速の剣を水を纏わせた左手で流れる様に受け流した。

 しかしギャガンは受け流された勢いを利用し体を回転させ、そのまま独楽の様に斬撃を放つ。


「受け流しを利用する……流石獣人や」

「へッ、ミシマから聞いてるぜ。お前ぇの拳法は体幹を崩してカウンターを狙うのが極意だってよぉ」

「聞いただけで対応出来るもんや無いと思うんやけど」


 会話しながら二人の攻防は続く、その動きはまるで決められた演舞を観ている様だった。


「コホー……」


 二人とも凄いなぁ……。


「ギャガン、一旦離れろッ!!」

「おうッ!!」


 ロミナの声に合わせギャガンが後ろに跳ぶと同時に真田に向かって燃え盛る拳が打ち下ろされた。


「同時で無いなら対処は出来るでッ『氷霊(フラウ)!!』」


 真田はその炎の拳を左手一本で事も無く絡め取り、よろめいた火炎魔神(イフリート)のみぞおちに、炎から氷に切り替えた右拳を叩き込んだ。

 撃ち込まれた槍の様な拳は魔神の腹を抉りその巨体を吹き飛ばす。


『グオオオオッ!!』


「おお……これは想像以上だ」

「魔法の切り替えは成功やな」

「面白れぇ、面白れぇぞ真田ぁッ!!」


 その後、日が中天を超え、西傾くまで予行演習は続いた。


 戦いは様々なパターンで続けられその間、暇になった健太郎は彼らの動きを参考にしながら技の繋がりを練習する事にした。

 早々に飽きたミラルダはいち早く眠ったルルの背中によじ登り昼寝を始め、グリゼルダも途中まで頑張って起きていたが、いつの間にかルルに寄りかかり眠ってしまった。

 結局、最後まで真剣に見ていたのはニーナとピポピポと応援を続けたコロだけだったという。

お読み頂きありがとうございます。

面白かったらでいいので、ブクマ、評価等いただけると嬉しいです。

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紺碧のミシマ 設定資料集

各章の登場人物や地図、設定等を纏めました。

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