ファンタジーといえば
クルベストから飛び立った健太郎は、エクササイズ教室の受付であるニーナとミラルダ達を乗せて、エルフの国リーフェルドを目指し東へと空を飛んでいた。
打ち上げた衛星からの情報で真田のいる場所は判明している。
あとはGPSを頼りに真っすぐに飛ぶだけだ。
「ここは巨人の国グルバニアか……」
「巨人か……一度手合わせしてみたいもんだぜ」
グリゼルダの言葉が示す様に眼下には木よりも身体の大きな人影がこちらを見上げ口を開けている。
暫く飛んで見えた街や村の建物も彼らに合わせ大きく、見ていると遠近感がおかしな感じになりそうだ。
「もうグルバニア……じゃあそろそろ大森林、ケベクの森……」
「うわぁ……凄いね、一面緑の絨毯だよ……」
操縦席に座っていたミラルダの声で、後部座席にいたギャガン達も座席を離れ操縦席を覗き込む。
「おお……視界全てが森か……やはり書物の知識だけでは補えないものだな」
「この森の奥に店長が……」
「グリゼルダ、木しかねぇが、エルフってのは木の洞にでも住んでんのか?」
「木と共に暮らしているのは確かだが、洞に住んでいる訳ではない。少し調べた所では巨木の枝に足場を組んで住居を作っているそうだ」
グリゼルダの説明にギャガンは視線を宙に向け想像を巡らせた。
「枝に足場か……栗鼠人族に似てるな」
「栗鼠人族、ロガエストの森林地帯に住む少数民族だな」
「ああ、体は小せぇがレンジャーとしてはかなり優秀だぜ」
「ババババババッ……」
栗鼠人族かぁ……栗鼠の獣人がいるならモモンガの獣人もいるのだろうか……。
「フフッ、ミシマは本当に動物が好きだねぇ……」
「なんだ? あいつなんか言ってんのか?」
「栗鼠がいるならモモンガもいるのかだってさ。モモンガってアレだろ、栗鼠に似た空を飛べる奴?」
「正確には滑空だ。確かロガエストの森に集落を作って暮らしていたな」
「おう、飛鼠どももレンジャーや密偵としちゃあ優秀だ」
「……お前は基本、戦闘関係の情報ばかりだな」
グリゼルダはギャガンを見上げ苦笑を浮かべた。
「それ以外に何が必要なんだよ?」
「暮らしぶりとかあるだろう? そういえばお前達、豹人族はどんな風に暮らしているんだ?」
「俺の一族は基本、国王と一緒に動いてる。んで移動しながら国中に点在してる別の豹人の集落で嫁を貰って子供を作る」
「……そうか……お前もいつか嫁を貰うのか?」
「あん? さぁな、ただ嫁さんもらうとしても、俺が強えと認めた相手以外は興味ねぇな」
「そうか……」
そう言ったグリゼルダは何故だかほんの少し嬉しそうだった。
それに気付いたニーナはおやッと目を開き、その後、いつも見せる笑みを浮かべた。
そんな話をしている間にも一行を乗せた健太郎は大森林ケベクの森を突き進み、周囲は低木の森から巨木の生い茂る密林へと姿を変えていった。
「止まれッ!!」
唐突にそんな声が響き、翼を持つ鷲頭の獅子が健太郎の前を翳めた。
「グリフォン……国境警備隊か?」
「いいなアレ、乗騎用に一頭欲しいぜ」
「ギャガン、飼うならあんたが世話するんだよ」
「止まれと言っているッ!!」
健太郎の前を飛ぶグリフォンの背には薄い金色の髪の女が跨り、手にした弓をこちらに向け声を上げていた。
見れば健太郎を包囲する様に周囲を風を纏ったエルフ達が飛んでいる。
「バッ、バババババッ!!」
エッ、エルフじゃッ!!
「ミシマ、興奮するんじゃないよ……はぁ……とにかく一旦止まろうか」
「バッ、ババババッ……」
わっ、分かった……エルフじゃ……今度こそ本当のエルフなんじゃ……。
憧れの種族に出会えた喜びで健太郎は小さく呟きつつも、翼の端のローターを九十度回転させ空中に制止した。
「最初にダンジョンで話した時も興奮してたけど、なんでそんなにエルフに拘ってんだい?」
「バババババッ」
俺達の世界じゃファンタジーといえばエルフ、エルフといえばファンタジーでみんなの憧れなんだよ。
「憧れって、真田先生に会った時はそんな感じじゃ無かったじゃないか?」
「バババババババッ」
ほら、真田先生は転生者でちょっと特殊だったから……。
そんな事を健太郎とミラルダが話していると、手綱を操りグリフォンを反転させそのエルフは操縦席に近づいた。
流れる金髪、グリーンの瞳、長く尖った耳、透き通る様な白い肌。健太郎が想像していた通りのザ・エルフそのものといった美女が眉を寄せ口を開く。
「何だコレは? 貴様らは何者だ? 如何なる用があって我らの国に足を踏み入れた?」
操縦席のガラス越しにミラルダ達を睨みながらエルフの女は問い掛ける。
「えっと、あたしら里帰りした真田先生に会いに来たんだよ」
「サナダ? 知らん名だ。悪いがお帰り頂こうか、我らエルフは他種族との交わりを望まぬ」
「あの、探しているのはフィー・エルド・メイファーンです!」
門前払いされそうになった事で慌てたニーナが真田のこちらでの本名だろう名前を叫ぶ。
「メイファーン? 貴様らメイファーン家の知己か?」
「はっ、はいッ! 私はここから西のラーグ王国でフィーさんと一緒に働いていた者ですッ!」
「メイファーン……確か族長の息子の一人が国を出ていた筈だな……」
「はい、それで最近里帰りした筈なんですが……」
「……確認を取る。ついて来い……先に言っておくが、妙な真似をすればこのミスリルの矢じりがそのギヤマンを貫き心の臓を射抜くぞ」
エルフは番えた矢を見せながら鋭い視線をミラルダ達に向けた。
「はぁ……何もしやしないよ……」
「噂通り、排他的な種族のようだな」
「面倒そうな奴らだぜ。こっちはただこの姉ちゃんが好きな男に会いに来ただけだってのによ」
「あわわ、ギャガンさん、そういう事は余りハッキリ言わないで下さい!」
「あ? 何でだよ?」
「あの、その……恥ずかしいじゃないですか……」
ニーナの言葉にギャガンは首を傾げた。
「何が恥ずかしいんだよ? 好きな相手に好きって言わなきゃ進むもんも進まねぇだろ?」
「ギャガン、みんなそれぞれ自分のやり方があるんだよ」
「そんなもんかねぇ、俺の国じゃ、男も女も時期が来ればガンガン行ってたが……」
「バババババッ」
それってば、盛りって奴じゃあ……。
「フフッ、そういうのは種族の違いだねぇ」
「何をゴチャゴチャ話しているッ!? さっさと来いッ!!」
「はいはい、行こうかミシマ」
「バババババッ!!」
了解だッ!!
声を荒げたエルフに先導され、健太郎は一際大きな巨木へ向かいプロペラを回転させた。
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