竜超人対ガラケーのミシマ
健太郎達がカレンから情報を聞いてから三日が過ぎた。
ロドン商会のベッカーは予定通りタニアを連れて取引場所である朽ちた寺院を訪れていた。
「時間通りですね」
呼びかけた相手は以前と同様、フードで顔を隠した老人と恐らく少年だろう小柄な人物だ。
「念願の竜の幼体ですから、年甲斐もなく興奮してしまいまして」
「そうですか……ではさっそく……こちらがお求めの青竜の第一幼体です」
ベッカーは手にしていた物を床に置き、掛けていた布を捲った。
布の下からは大きな鳥かごに入れられた青い鱗の子竜が姿を見せる。
「おお……確かに」
「では残金をいただけますか?」
「ええ、お確かめ下さい」
老人は手にしていた鞄をベッカーに手渡す。
鞄を開くと中には袋が全部で十個入っていた。
「一袋で金貨100枚、全部で千枚です」
ベッカーは袋の一つを取り出し中身を確認すると静かに頷いた。
「確かに」
「全て確認しなくてよろしいのですか?」
「信用していますよ。それにあなた方も我々を敵に回したくはないでしょう?」
「……そうですな、ここまでの仕事が出来る組織を敵にする気はありません」
「では、この度はご利用ありがとうございました。今後も何かあればお声がけ下さい」
「はい、よろしくお願いいたします」
「それでは」
そう言うと鞄を手にしたベッカーは部屋を後にした。
コツコツと廊下を歩く足音が響き、やがて小さな羽音と共に静寂が寺院を支配する。
「……よし、これで赤竜、緑竜、金竜、青竜、四つの力が僕の物になったね」
「あとは土竜、黒竜、白竜あたりでしょうか?」
「そうだね、その三つがあれば僕はほぼ無敵になれる筈。このカミヤ・バルバドスが世界の王として一歩を踏み出すには十分だろうね」
そう言うとカミヤはフードを外し、床に置かれた鳥籠の中のタニアに歪んだ笑みを向けた。
口枷を嵌められたタニアは鳴く事も出来ず彼に怯えた目を向けている。
「さて、君はどう料理しようか。ステーキの他にはロースト、シチュー、腸詰なんてのもいいかもしれないねぇ……ガフッ!?」
そんな事を話しながらカミヤが籠に顔を近づけた時、天井から落ちて来た何かが彼の頭を直撃した。
「坊ちゃまッ!?」
落下して来た何かはカシャカシャと音を立てながら、痛みで頭を抱えたカミヤ達の前で青黒い金属のゴーレムに変わる。
「コホーッ!!」
お前達の一連のやり取りはこのガラパゴス携帯のミシマが全て記録したッ!! 諦めてお縄につけッ!!
「……!?(硬い人ッ!?)」
「ググッ……何だ貴様はッ!?」
「メタルゴーレム……モンスターが入り込んでいたとは……」
「キュエーッ!!(タニアッ、助けに来たのッ!!)」
「……!!(お兄ちゃんッ!!)」
カミヤとローグが健太郎に警戒している隙を突いて、寺院の窓から飛び込んだキューがタニアの入った籠を掻っ攫う。
「なっ、青竜がッ!?」
「コホーッ!!」
ナイスだキューッ!!
「ローグ、君は子竜を追えッ!! 僕はコイツを始末するッ!!」
「分かりました坊ちゃまッ!!」
ローグは籠を抱え寺院から飛び出したキューの後を翼を広げ追った。
「コホーッ……コホーッ!!」
あっ……仕方ない、カミヤだけでも眠ってもらうか、サンダー・ナイト・フィーバーッ!!
健太郎はカミヤに向けて右腕を掲げ電撃を撒き散らした。
しかし電撃を受けたカミヤは何の痛痒も見せず笑みを浮かべていた。
「コホーッ!?」
何だとッ!?
「電撃を放つメタルゴーレム……珍しいなぁ……そうだ、始末するのは止めて、君は僕のペットにしてあげよう」
踊る電撃の中、カミヤは平然と歩みを進める。
「コホーッ!!」
断るッ、電撃が駄目なら拳で決めてやるッ!!
腰を落とし、わい最拳の構えを取った健太郎を見て、カミヤは鼻を鳴らした。
「フンッ、竜の力を得た僕と素手でやるつもり? やっぱり、モンスターは知能が低いなぁ……」
そう言うとカミヤはフード付きのマントを投げ捨て、翼を広げた。
その翼がはためくと、カミヤは一瞬で間合いを詰め健太郎に右手の爪を振るう。
「なっ!?」
だが無造作に袈裟斬りの要領で振り下ろされた爪は健太郎に受け流され、寺院の石造りの床を深く抉った。
「グワッ!?」
その直後、たたらを踏んだカミヤの胸に健太郎の繰り出した猛虎硬派斬がさく裂した。
カウンター気味に入った打撃はカミヤの体を吹き飛ばし、石で出来た寺院の壁に激突させた。
壁の一部が崩れカミヤはその瓦礫に身を埋める。
「コホー……」
初めて実戦で本格的に使ったけど、凄いな、コレ……。
健太郎がわい最拳の強さに感動していると、ガラガラと瓦礫が崩れる音が聞こえた。
視線を向ければ、そこには土埃で汚れてはいたものの無傷のカミヤが瓦礫の中から立ち上がっていた。
「フフッ、やるじゃないか。これはもっと強烈なのが必要みたいだね」
パンパンと服に付いた埃を払いカミヤは酷薄な笑みを浮かべている。
「コホー?」
強烈ってブレスとかは多分俺には効かないよ?
小首を傾げた健太郎にカミヤは一瞬頬を引きつらせた。
「随分余裕を見せてくれるじゃないか……でもこれを見てそんな態度が取れるかな? ウォオオオオオッ!!」
叫びと共にカミヤの体は膨れ上がり服が弾け、体中に赤、緑、金の鱗が生えオーラの様な光を噴き出す。
「コホーッ!!」
変身ッ!! 凄い、スーパーサ○ヤ人みたいだッ!! かっ、カッコいい……。
「フフッ、竜超人になった僕はさっきまでの僕とは一味違うよ」
その言葉どおり先程とは段違いの速さでカミヤは踏み込み、左ジャブからの右ストレートを健太郎に叩き込んだ。
「なッ!? グワッ!?」
しかし健太郎はジャブを右手でスッといなした後、ストレートを掻い潜り伸び切った右手首を掴み受け流す。そしてバランスを崩したカミヤの身体に密着状態から鉄山靠を叩き込んだ。
「コホーッ!!」
わい最拳、超強いッ!! ありがとう真田先生ッ!!
再び吹き飛ばされたカミヤに視線を送りながら、健太郎は惜しみなく技を伝授してくれた真田に感謝の声を上げた。
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