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ファンタジーハンター  作者: Who
その手に掴むモノ
11/49

その6

「……ぃよ、っと」

「ういさぁ!!」


それぞれに少しばかりおかしな掛け声で手に力を入れる。そうしてやっと穴から頭を覗かせることができた。


「大丈夫そうだな」

「だな」


辺りを見渡し、見える範囲に何もいないことを確認すると、ようやく体ごと穴から這い出る。

穴に落ちてからすでに30分ほどが経過している。それが長いのか短いのかはわからないが、ともかく。俺たちはこうして元の場所まで戻ってきた。


「さて、じゃあ探索の続きといくか」


ぱん、と手を叩いてマークが足を動かし始める。さっき落ちたのを気にしてか、今度の足運びはどこか慎重そうだ。

その後を追いかけながら、そっと胸ポケットの包みに手を添える。そこには確かな存在感。先ほど手に入れたドラゴンの指、その一本がおさまっていた。

結局、跡形もなく消えてしまってはサンプルどうこうと言ってられない。指一本でも確保できたことで良しとし、救難信号の探索を続けろ、という話になった。


「ん? どしたー?」


ふと、下げていた視線をあげれば、少し先にマークの姿。どうやら足が止まってしまっていたようだ。


「なんでもない、今行く」

「おう、気をつけてな」


手を振って答えてから、足を一歩前に出す。


(……?)


出してからまた、足を止めそうになる。その原因は、自らの胸。ちりちりと、何かが焼けつくような、それでいて痛くもなく、妙に暖かい程度と言った違和感。それがさっきからずっと続いていた。


「っと、ついたな」


今度はすぐ隣からマークの声。

また知らないうちに下がっていた視線にはマークの足。いつの間にかすぐ近くまで追いついていたらしい。

そして、追いついたということはマークが足を止めていたということで。


「さぁって、じゃあ続きは上の階で、だな」

「ああ」


目の前には、さっき通り過ぎた階段。その階段にまずマークが足をかけた。


「二階にもさっきみたいなのねぇかなぁ……」

「…そうだな」


さっきみたいなの。つまりはドラゴンの死骸ということだろう。

そういえば目の前のこいつは、あれが消え去った時に叫んでいたな。こいつにとって、あれはそれほど惜しいモノだったのだろうか。


「なぁ」

「んー?」


思わず口が動く。

動いてから、何を言うべきか迷うぐらいには。


「お前はどうして、ドラゴンに相対しているんだ?」

「あれ? 言ったことなかったっけ?」


聞いたことない。いや、もしかしたら聞いていなかっただけかもしれないが。

本人の反応から言った覚えもあまりないのだろう。特に躊躇することもないのか、あっさりとその答えを口にした。


「単純に興味だな」

「はぁ……は!?」


あっさりすぎて、聞き逃してしまったのかと思った。


「ちょ、その反応は流石にひどくないか?」


そっちから聞いてきたんだろ、などと言われてしまえば確かにその通り。

驚いたものの、謝罪を口にする。


「悪い、まさかそんなこととは思わなくて」

「そんなことってなんだよー! だってドラゴンだぞ!?」

「お、おう……?」

「あのファンタジーの王道、まさか本当に現れるとは……。しかも俺たちの武器や兵器は一切効かないときた。そんなのもう興味湧きまくりだって!!……うへへ、ぐふふ、ひひゃひゃ…」


最後の、漏れるように聞こえてきた言葉は聞かなかったことにしよう。

ついでに言えば、その言葉を繰り出しながら動き回る怪しい手の動き。それも見なかったことにする。

どうやら、こいつも大概らしい。まさかあのドラゴンどもを、そんな興味の対象として見ていたとは。世の中はいろんな奴がいる、と言うことだろうか。

そんな。そんな、気持ち悪いほどの動きをしていたマークの手が止まる。滲み出るように漏れていた気持ちの悪い笑い声も、同時にピタリと止まっていた。


「裕二」

「ああ」


短く呼び合う。そして。


「そこにいるんだろ? 出てこいよ」


物陰に振り向き、言葉を投げる。ぱっと見は何もない脇道。今改めて見ても何の気配もない。

それでも、そこを睨み付ける。そうして少し。マークがもう一度声をかけようとした時。


「ぁ……わわ、っと」


そんな声が聞こえ、物陰から足音が聞こえてくる。


「も、もしかして信号を受信してくれた人たちですか……?」


やがて現れたのは、小さな女性。いや少女か……?

そう思ってしまう程、小さな背の人物。その言葉からも、彼女が俺たちの探し人らしい。ただし。


「あ、あの。どうしてそちら・・・を向いているのですか……?」


現れたのは、俺たちの向いた方向の少し右。

通路の少し先にある、別の物陰からだった。

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