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4 黒き竜?白き竜?

一悶着あったものの、無事村長さんの家に辿り着くことができた。


「この村は防衛手段がございませんので、もし宜しかったら、二方に分かれて討伐して頂ければ儂らも助かるんですがな…」


確かに、別れたほうが村としては安全だけど…私は戦力として見ちゃいけないし、ただ無駄死にするのならシロンと一緒に行ってひとつ潰した方が確実だろうな…


「あ、えっと…私は魔法とか剣術とか使えなくて…シロンと一緒に行けたらなとは思ってはいたんですけど…」


「あぁいえいえ、無理にとは言いませんよ。では、村の場所や特徴についてお話しますので、どうぞお座りくだされ。」


その後まず最初に向かう村を決め、次の日には出発という形になった。私は今すぐにでもと言ったのだが、村長さんが万全を期すためにと宿を用意してくれたため、今日は泊まることになり、しかも五階建ての頑丈そうな宿だ。


「おもてなしが凄い…」


私が村長さんのもてなしに感嘆していると、シロンが訝しげに、


「ううむ…。」


「どうしたの?シロン。」


シロンはさながら名探偵のような雰囲気を醸し出している。


勿論のこと、全く似合っていない。


「どうにも怪しいものですね…初対面の人にこんなもてなしますかね??」


シロンはどうにも村の人達が信用できないようだ。まぁその気持ちは分からなくもないけどね。


「でも、ドラゴンに襲われるかもって思ったらさ、助けてくれるって人には感謝するでしょ?だからもてなすんじゃないかな。私ならそうするよ?」


「そうですか!ならそうですね!おやすみなさい!」


シロンはそう言ってベッドに入ってすやすやと寝息を立てる。


いやいや…自分の意見変えるの早くないか?てか私達も初対面同然だからね?


「まぁ…いっか…うん、気にしててもしょうがないし、今日楽出来るんならいいや!寝よ!」


私は初めての異世界での一歩を踏み出したことに満足しながら、目をつぶる。


深夜 アロー村


「……」


周りに溶け込むように暗い濡羽色のドレスに、黒い髪を長く伸ばした少女が体を起こし、ベッドに座って状況を整理する。


「はぁ…また面倒なことになったようだね…」


部屋にはベッドが二つあり、少女が座るベッドの向こう側にもう一つある。そこにはカレンが寝息を立てていた。


溜息をつくこの少女は、シロンであり、またシロンではない。日が指す時間は陽気な性格になり、日が沈んだあとは大人しくなる。つまり二重人格というものなのだ。


「外が騒がしい…お祭り…では無いようだけれど。」


シロンは窓から外へ目を凝らす。宿は高台の方に位置しており、遠くまで一望できる。何故か今日は宿に泊まる客は居なかったために、人気の最上階を借りれる事になっていたため、余計よく見える。


門から入ってきたのは、一人の騎士だった。その男は馬に乗っていて、明らかに強そうな見た目をしている。

そしてそこに、村長が急いで向かう。


「さすがに話し声は聞こえないか。まぁ、聞き耳を立てるのは造作もないけどね。」


シロンは目を閉じ、門の方向へと意識を集中させる。すると、段々と話し声が聞こえる。


『期限が近づいている。準備は出来ているのだろうな。』


騎士の男は村長を睨みつけながら気だるそうに話す。


『ええ。ホワイトドラゴンは既に我々の手中にあります。ギリギリまで現れなかったのは好都合でした…睡眠薬を異常なまでに強力にできたのでね…ヒヒッ…。連れもすやすやと寝ておりますわい…』


村長は悪辣な笑顔を浮かべながら騎士を一瞥する。


シロンは目を開き、納得したように頷く。この村、アロー村には居てはいけないと理解したのだ。


「彼らの事情は殆ど知り得ないけど、私が狙われてるのは間違いなさそうだね。さて…どうしようかな…」


シロンは立ち上がり、カレンの顔を覗く。


「うん、言ってた通り強力そうだ。ならそれはこちらにとっても好都合ということだ。」


シロンは手を伸ばし、そこから影を出したかと思うと、自身の体を覆い、部屋から出て歩いてみる。この部屋を確認しに来たであろう村人がその姿を見ても、まるで見えていないかのように通り過ぎる。シロンが使ったのはただの隠密魔法である。


「この程度の影魔法さえ見抜けないとはね…。魔法文明はかなり遅れてるみたいだ。」


シロンはその事実に驚く。大抵の村や国は、魔物や人間に攻め入られたときに対処出来るよう、そこを治める者から身を守る術を教わる筈なのだ。例えば影魔法は汎用的なため、真っ先に教えられる事が多い。隠密や転移などが影魔法にあたる。それらを活用して他の魔法を駆使するのだ。


「まぁ、そのほうが探りやすいし、気にすることじゃないか。」


シロンは吐き捨てるように呟き、足を進める。


まず訪れたのは、村長の家だ。騎士の男と喋っていた村長の家に直接向かえば、手っ取り早く真相が掴めるとシロンは踏んだのだ。


「ククッ…にやけがとまらねえな…」


家に入ると、椅子に座って悪人顔でずっとニヤニヤしている男がいた。


「我らがようやく開放されるのだ…笑みが止まらぬ訳もあるまい…。」  


その向かい側には、同じくニヤついている老人、村長が座っていた。


シロンはその光景に苦笑しながら、鍵がかけられているドアの前に立つ。


「これも…鍵とは言えない代物だよ…こんなの開けてくださいって言っているようなものじゃないか。」


シロンは再び影を掌に灯し、南京錠に向かって放つ。すると、南京錠をはボロボロに崩れ、塵となって消えた。


「さてさて、何があるのかなっと…」


シロンは部屋を一望し、引き出しや棚の中を隅々まで探した。すると、一つの封筒が見つかった。


「開けてみるか…まぁ、痕跡は後で消せばいいよね。」


シロンは爪で封筒を切り、中身を出す。


それは、令状らしきものだった。



ー罪人・盗賊一味ー


一、一つの村を国まで成長させよ。


ニ、他国や他村に援助を求めずに作物を育てよ。


三、戦闘に関する物の製造を一切禁じる。


四、白竜を見つけ出し報告せよ。


五、これらの事は口外無用である。


以上の事を全てこなせば拘束を解く事を約束する。


             ー王都ヒークセリアー



その令状には、すべての原因と見られる内容が書いてあった。


「へぇ、なるほどね…ここは盗人の村、いや国だったって訳だ。多分四つめ以外は出来てたんだろうね。運良く私達が来たと。…随分と王都は白竜を求めているらしいね…。」


王都ヒークセリアは罪人への罪としてこれらの条件を提示していたのだ。そのため、結界を張ることもできず、村を発展させながらずっと白竜を待っていたのだろう。


「盗賊一味…名の知れた盗賊ではあるけれど、相手が王都ともなると、逆らう気も無いみたいだね。」


シロンは影を纏い、宿へと戻る。


「カレンも巻き込んじゃうけど……うん。まぁきっと大丈夫だ。彼女ならやれる。」


シロン(黒)もまた、少しばかり抜けているのかもしれない。

大変遅くなりました。申し訳ありません。投稿ペースは未だ掴めておりませんが、安定するのを目指します……。

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