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3 要するにただアホなだけ

異世界に来た私は、なんともロマンチックな出会いをしたドラゴンと共に、旅を始めることにした。

「まず初めにすべきことは…ここがどんな場所か理解するところからかな。」

私はずっとこちらの顔を覗き込んでるドラゴンに、

「ちょっと飛んでくれるかな?」

なんて突拍子もないお願いをしてみた。

するとドラゴンは、

『キュル!!』

待ってましたとでも言わんばかりに翼を大きく広げ、尻尾で私を優しく包むと、背中にぽんと軽く乗せた。

「ありがとう、じゃあお願い!」

『キュア!』

恐らく言葉は通じているようで、話しかけるたびに反応が返ってくるのがまた可愛いもので、つい細かなことも話したくなってしまう。

そして空を飛んでみると、景色は全く違うものになった。

「おー、遠くまでよく見えるね!」

『キュルル♪』

期待していた村や森は遠くにいくつも点在していて、どれから行くか迷うほどだった。

「ん〜…何処から行けば良いんだろうな…ドラゴンさん、あなたは何処から行くべきだと思う?」

するとドラゴンは急に速度を上げだして、目の前の村まで一直線で向かっていった。

「ぉぉ!速い速い!」

すると、村の方から何か聞こえてきた。

「ーー!ーーーろ!」

なんだろう、とても警戒してるような…いやまあそうだよね。乗ってるのドラゴンだ、心地良すぎて忘れてた。

「ちょっと、手前で降りてくれる?」

『キュ!』

ドラゴンはゆっくりと村の門らしきところの前で降りた。

「てめぇら!何者だ!この村を襲うつもりならただじゃおかねぇぞ!」

「あ、いえいえ、私達は旅の者ですよ。ここらへんのことが良くわからなくて、色々聞きたいことがあって…」

「あぁ!?そのドラゴン引っ込めてから話せ!他の村がドラゴンに襲撃されてんだ!この村まで襲わせてたまるか!」

襲撃……そのせいでドラゴンに対して警戒心を強めてるってことか…でもこのドラゴンはそんなに悪意があるとは思えないけど…でも出会ったばかりだし、すぐ知った気になるのは良くない…

と、私が考えを巡らせていると、

「いいえ!村を襲っているのは私達ではありません!!」

聞き覚えのない声が真後ろから聞こえてきた。

そこには、ドラゴンが居なくなった変わりに、綺麗な白いドレス、白い髪、そして二本の角を生やした女性が仁王立ちしていた。

「いいですかっ!?私はホワイトドラゴン!村を襲っているのはレッドドラゴンとブルードラゴンですっ!なので、私は関係ありません!!どや!!」

赤い眼がギラリと光り、きっぱりと言い切った。

「………あの」

「あぁっ!!?知ってるって事は関係あんだろうがよ!同じドラゴンとして落とし前つけてこいやあ!」

「えぇ!?」

そりゃそうなるでしょ…

「知ってるとというか、先程飛んでいるときに見えたんですよ!あ、自己紹介が遅れました、私はシロン。ホワイトドラゴンのシロンです!」

シロンはすぐにケロッと態度を変え、私に自己紹介をした。見えたって…まさか千里眼とか使えるのかな…まぁいいか。

「あ、ああ…あなたがさっきのドラゴンだったのね。えっと、私はカレン。まぁその…出会ったときから色々ありがとうね、これからもよろしく。あと…あなたは…」

「まぁ、そうだな。自己紹介くらいしてやっても良いだろう。俺はベル!このアロー村随一の門番だ!」

「うん、よろしく。それと…私達に危害がないって分かってくれたかな…」

「敵意がないってことは認めてやろう。だが!この村を拠点にするのなら条件がある!」

まだ拠点とは決まってないけども…

「レッドドラゴンとブルードラゴンの襲撃を止められたら拠点にすることを許してやろう!」

「うぅ……やっぱりそうなりますよね…」

シロンは明らかに肩を落とした。でもここで拠点ができるのはとても心強いな…

「シロン、どちらにせよ、放っておいてはおけない問題だよ。…やろう。」

「むむむむ…カレンさんが言うなら仕方ありません!!このシロン!命を懸けて!」

「そこまではしなくていいよ!」

「けっ!お前らにやれるならやってみやがれってんだ!…とにかく!そんなことならてめぇらは客だ!来訪を歓迎してやる、着いてきな。村を案内してやるよ。」

ベルはまだ警戒心を解いていない様子だったが、なんとか村に入れてくれた。何だかんだで優しい人で良かった…、戦闘イベントをする心の準備は流石にないからね…。

「ところでベル、確認するけどまだアロー村は襲われてないんだよね?」

「おう。それには理由があるらしくてな、ドラゴンには特性があるらしい。レッドドラゴンの属性は炎、つまり比較的暑い場所を好むらしい。そしてブルードラゴンの属性は氷、寒い所だな。」

ベルは細かくドラゴンの属性について教えてくれた。もとの世界でのレッドドラゴンやブルードラゴンのイメージとあまり変わらないな。

「それでホワイトドラゴンは……ううむ…イマイチ分からん…。そもそもドラゴンてのは喋らねぇし人の姿もしてねぇんだ。だからあんたがホワイトドラゴンだっつー確証がねぇ。」

「んなっ!ちゃんと角あるでしょう!」

ベルの言っていることが正しいなら、ホワイトドラゴンはレッドドラゴンやブルードラゴンとは違う存在ってことか…いやドラゴンって種族は同じなのかな?

そんな話をしていると、沢山の家々が点在している場所に辿り着いた。

「ここは、居住広場。村の中心ってとこだな。」

「うわぁ……!」

居住広場には、想像していた家よりも相当上を行くレンガの家がずらりと並んでいた。真ん中には噴水もあるし、中々豪華だ。

「おぉ…こるはもう村というより町では…。」

うん、シロンが言ったとおりこれは町だね…。

「ほっほっほっ。我が村をそこまで言ってくださったのはあなた方が初めてですぞ。」

「おぉ!じいさん!」

すると奥から、老人が出てきた。流れ的に村長さんかな?

「えっと、村長さん?」

「おう、じいさんは何十年も昔からアロー村の代表をしてくれてる。」

「ベルや、そんなに誇張する事でも無いわい。」

ベルはとても嬉しそうに村長さんの事を話す。村長さんもまんざらでもない顔をしている…微笑ましいな。

「それで貴方は、旅人さんですかな?」

「あ、はい。まだここら辺については知らない事ばかりで…村や町を探したらここに。」

「そうですか。しかし…今はドラゴンの襲撃対策にほとんどの労力を使っておりましてな…おもてなしは出来ないと思いますがの…」

ベルがこっち凄い睨んでくる!

「い、いえいえ、そのドラゴン達を退治しようと。」 

「そ、それはありがたいですな!しかし…何か策はあるのですかな?」

ううむ…確かに策があるかと聞かれたら無いんだよな…

「私に案が!」

「おぉ!シロン、どんな案?」

「私がぶっ飛ばせば良いのです!」

シロンは力こぶを作って微笑んだ。

「さて、計画を立てましょうか。」

…考えが暴力的すぎるわ!


「ちょっと…あの子…」

「やだ…もしかして襲いに…」

「遂にここにも…」

村長さんの家に向かうため、私達が居住広場を歩いていると、こそこそ何か聞こえてくるのに気がついた。

「ふっふっふ。私の可愛さに見惚れているんですね!」

「ちがうよ!あなたに警戒してるの!」

「何故です?こんなにも可愛い娘を警戒するのは不自然では??」

ドラゴン娘が平然と村の真ん中歩いてる事が不自然だよ!連れてきたのは私だけど!

「皆の者、静かにせんか。客人に失礼な態度を取るでない。」

「でっ、でも村長さん、片方はドラゴンじゃないか!ドラゴンに警戒するのは当たり前だろ!」

ある男性がそんなことを申し立てた。確かに村民からすれば当たり前のことで、ドラゴンはすぐに追っ払ってしまいたいのだろう。

「皆は分かっていないようじゃが、この娘はホワイトドラゴン、伝説の白龍じゃ。」

「なっ!?あの古文書に書かれてる伝説は、本当だって事かよ!」

「ああそうじゃ。『蒼紅現れし刻、白もまたそこに現れん。白は忽ち蒼紅を沈め、再び安寧が訪れる。』…ここの白というのはホワイトドラゴンのことじゃ。彼女、シロンはこの村を、そして他の村も救うということじゃ。」

なんと…シロンって物凄い子だったのか…

「私が伝説の…。おおう、なんと…むふふふ。」

何だかシロンがニヤついている。…完全に調子に乗ってるな…

「あ、あの!皆さん、お気持ちは分かりますが、シロンは悪い子では無いので!どうか…」

私はできる限り村の人たちにシロンの潔白を伝えた。私も出会ったばかりでシロンのことを全て知ってる訳じゃないけど、そんな人を襲う性格じゃないはずだ。

「はぁ…分かったよ。村長さんが言うならそうなんだろうしな。皆も、信じてみよう。」

「うん…まぁそうね。確かに悪い子には見えないし…」

「この位で良いかの。ではそこをどいておくれ。」

村長さんは歩き出し、村の人たちは引き下がっていった。

「何とか説得できて良かった…さぁシロン、行こう…」

そこには頭に桶をかぶったシロンが。

「…何してんの。」

「……こういうこと…ありません?深くて大きいものを見つけるとかぶりたくなる…みたいな。それで抜けなくなる…みたいな。」

「ないわ!いやいや、頭が抜けなくなるのは分かるけど、角が刺さって抜けなくなる経験は流石にない!!」

…前途多難だ…うん、悪い子じゃないよ。ただ良い子すぎるんだね…。

遅くなりました。申し訳ありません…。

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