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第80話【調薬の報酬と治癒士との再会】

「シミリ、ただいま。何とか終わったよ」


「お帰りなさい。

 また派手にやってしまいましたね。

 バレたら色々と聞かれるでしょうから何か聞かれてもシラを切った方が良いかもしれませんね」


「苦労かけるね。

 多分大丈夫だとは思うけど早めにこの場から離れた方がいいかもしれないな」


「そうですね。

 ギルドに顔を出してさっきの書類を提出したら宿に帰りましょうか。

 あそこならばまだ他の宿泊客が居ないから騒ぎにはならないでしょう」


「うん。そうしよう」


 僕達はまだざわついている現場から目立たないように歩いてギルドに向かった。


 ーーーからんからん。


 冒険者ギルドの定番ベルが鳴り響いた。


「あっ!オルトさん。

 坑道の様子はどうでしたか?

 ギルドからの派遣者がまだ帰って来てないので最新情報がなかなか入って来ないんですよ」


「ああ、とりあえず落ち着いてきたみたいで、今は残務処理をしてるんじゃないかな?

 僕達は傷薬の在庫が無くなったからこれを貰って先に帰ってきたんだ」


 そう言って僕は受付に傷薬の納品証明書を提出して処理をして貰った。

 報酬は後日出るとのことだったので今日のところは宿に戻る事になった。


「ただいま戻りました。ディールさん」


「お帰りなさいませ。

 オルトさん、シミリさん。

 坑道の崩落現場に応援依頼を受けて行かれてたのでしょう?

 大変でしたね、あれほどの事故はこの街が始まってから初めての規模だったそうですよ」


「そうなんですね。

 確かにかなりの大規模事故でしたからね」


「今回の件で特産の鉱物生産に影響が出なければ良いのですけど・・・。

 やはり私どもの商売はお客様あってのものですので街の景気が良いと消費も向上しますが仕事が減って人が流出すると死活問題になりますからね」


 ディールは少し困った顔をしながら宿の開店の準備を進めていた。


「ーーーよし。これで全部かな?

 正式なオープンは明後日にして明日は色々と仕入れや挨拶回りをしないといけないな」


「おっ!明後日オープンですか。

 繁盛すると良いですね」


「ははは。宿の方はいきなりは難しいですね。

 いくら新しいとはいえ、それだけでは今の宿を変えてまで泊まってくれる人はいませんよ。

 ですが、オルトさんが教えてくれた料理で人の胃袋を掴んで宿泊もしたいと思わせられれば勝ちですね」


「そうなると僕も教えたかいがありますよ。

 あっ!せっかくなんでもうひとつ良い物を教えておきますね。

 コイツを宿泊客へのサービスにしたら以外といけるかもしれませんよ」


 その後僕はディールに『プリン』の作り方を伝授し、それを食べたディールがあまりの感動に叫んでいた。


   *   *   *


 次の日、僕達は朝から冒険者ギルドに顔を出していた。

 昨日の報酬の件もあったが、せっかくリボルテに来たので他にも依頼を受注してみようとなったからである。


 ーーーからんからん。


 冒険者ギルドにいつものドアベルが鳴り響く。

 僕達の姿を確認した受付嬢がすぐに声をかけてきた。


「あっ!オルトさんにシミリさん。

 先日のお薬に対する報酬が出ていますよ。

 こちらに書類がありますので必要事項を記入してくださいね」


 僕は受付嬢の提示した書類に目を通してサインをした。


「ありがとうございます。

 こちらが報酬になります。

 それでもし良ければ追加で傷薬の依頼がありますので受けて貰えると助かります」


(まあ、あれだけの事故だったから傷薬の在庫はほとんどの無いのだろうから依頼が出てるとは思ってたよ)


「調薬依頼は引き受けてもいいのですが、昨日の件で僕も在庫を吐き出してしまっていますので新たに調薬しないといけないんですが、幾つかの素材をきらしてましてすぐには作れないんですよ」


「そうですか・・・。

 では、素材はギルドで調達しますので調薬だけの依頼なら引き受けてもらえますか?」


「そうですね。それならば大丈夫だと思いますよ」


「では、必要な素材と量を教えてください。

 出来るだけ早く揃えられるように素材収集依頼を緊急で出しますので3日後くらいにギルドに来てもらえれば準備はしておきます」


(では、よろしくお願いします)


 僕はそう言うと出口に向かおうと後ろを振り返った。


「きゃっ!?」


「うぉっ!?」


 ギルド内との事で少し気が緩んでいたのか、後ろに人がいるのに気がつかず振り返った時に軽くぶつかってしまった。


「ああ、すみません。気がつきませんでした」


 本来は真後ろに立つのもどうかと思ったけど、元日本人の常で思わず謝まってしまった。


「いえ、こちらこそすみません。

 あの、昨日助けてくれた方ですよね?

 本当にありがとうございました。

 ところであなたは“薬師”なんですか?確か昨日は魔ほ・・・」


「ちょっと待った。

 悪いけどこっちに来て貰えるかな?」


 僕の感が“この娘はまずい”と言っていたので思わず彼女の手を取って横に併設されている酒場の端のテーブルへ引っ張っていった。


「とりあえずここで話を聞きましょうか」


(さあて、どう誤魔化すか考えるんだ。

 閃け僕の頭!)


 後ろでシミリが怪訝そうな顔でこちらを見ていたがこちらも説明している暇はなかった。


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