第69話【盗賊に臆し逃走する護衛達】
順調に見えたリボルテへの旅も後半に入り、僕が張っていた探索魔法に何かが引っ掛かった。
「シミリ、この先で多くの人が集まっているみたいだがどうも様子がおかしい。
もしかすると馬車が盗賊に襲われているかもしれない」
いつもの僕ならば直ぐに駆け出していただろうが、今はシミリがいてさらに商品を積んだ馬車もいる。
僕が単独で進むにはリスクが高すぎた。
「オルト君、行かないの?」
シミリは僕の性格をよく理解しているので僕の次の行動が分かっていた。
「でも、君と馬車を街道に置いて僕だけ行くわけにはいかないんだよ」
(そうだよ、僕の知らない人が危険な状態だとしても僕には直接関係ないんだ。
それよりもシミリや馬車に被害が出ることが怖いんだ)
僕が判断を決めかねていた時、街道の向かい側から数人の冒険者らしき男達が走ってきた。
全員慌てた様子で、まるで何かから逃げているみたいだった。
「おい!いったいどうしたんだ!?何かあったのか?」
僕は何となく理由が想像出来たが確信にするために惚けてみた。
「あんたらリボルテに向かってるのか?
ならば引き返した方がいいぞ。
この先で10人からの盗賊達が待ち構えていて、とてもではないが勝てる相手じゃない。
見たところ護衛を連れていないじゃないか?それで行ったら奴等の餌食だぞ!」
盗賊が冒険者達だけを襲うことなど殆んど無い。
たいしたお金も持ってない、戦力が高くリスクも高い冒険者を襲う盗賊は居ないというのが常識だ。
それなのに襲われたと言う事は他に襲う理由があったと言う事。
普通に考えれば商隊等の護衛だった可能性が一番高い。
「で、一緒にいた人達はどうしたんだ?」
僕の誘導質問に冒険者の一人がうっかり喋った。
「あれだけの盗賊には勝てる訳がないから、囮にしてその隙に逃げてきたんだ!
あんた達も逃げた方がいいぜ!」
「馬鹿野郎!いらない事を喋るんじゃねぇ!」
やはりボロが出たな。
冒険者として、いや護衛を受けた者として依頼主を見捨てて逃げるとは見下げた奴等である。
「あきれた奴等だな。
依頼主との契約を破棄して逃げ出すとは冒険者ギルド規約に反するんじゃないのか?」
「馬鹿かお前は!?
あれっぽっちのはした金で命をかけて倍以上の盗賊を相手に出来る訳ねぇだろ!
どうせあの家族は盗賊に殺されるか連れて行かれるかだ。
ギルドにはバレたりしないさ。
依頼は失敗になるだろうが死ぬよりマシさ」
(考え方の違いか・・・。
確かに誰だって命は惜しい、が契約は契約。
精一杯達成できるように努力はしなければいけないと思うのだが)
僕は探索魔法で盗賊達と襲われている人の状況を確認していると逃げてきた冒険者達が勝手な事を言い出した。
「慌てていたから食料もなにも持ち出せなかった。
カイザックに戻るまでの食料を分けてくれ」
「残念だがそれは出来ない相談だな。
こっちはリボルテに向かう途中だし、人数分の用意しかしていない。
非はお前達にあるのだから自分達で狩りでもして調達するのが当たり前じゃないのか?」
僕の言葉にカッとなった冒険者達はお互いに目配せをした後、馬車を取り囲んで言った。
「そうかい、ならば力付くで頂こうか!」
問答無用とばかりに男達が次々に僕に斬りかかってきた。
「ふう、冒険者と言えどもその辺のゴロツキや盗賊となんらかわりないじゃないか」
僕はため息をつきながら門兵に貰った模擬剣で男達を次々に殴り飛ばしていった。
馬車やシミリに被害が無いようにスピードを通常の数倍に上げて対応したので男達の目には僕の残像しか見えなかったことだろう。
「がはっ!」
男達の態度にイライラしていた僕だったがシミリの前だったので殺さない程度に抑えた力加減で全員ぶちのめした。
「シミリ!襲われている人達を助けに行こうと思うけどシミリも心配だ。
僕はどうすればいい?」
「オルト君!直ぐに行って助けてあげて!
私は大丈夫。オルト君がくれたペンダントがあるから、ゆっくりと馬車を進めていくわ。
でも、私がペンダントを使ったら直ぐに戻ってきてね」
「わかった!直ぐに終わらせて戻ってくるから!」
「ところでこの人達はどうするの?」
シミリは気絶をしている冒険者達を指差して僕に聞いた。
「放っておいていいよ。
運が良ければ助かるし、悪ければ気絶している間に獣に殺られるだろう。
自業自得さ」
「分かったわ。そうしておきますね」
僕は冒険者達が直ぐに目覚めない事を確認し、その場に放っておいてから襲われている人達の救出に走り出した。




