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第60話【ゴルドのリボルテ情報と秘密のお節介】

「ふう。やはりこのお好み焼きは麺も入れたフルトッピングが最高ですな。

 いや本当に君達には感謝してるよ」


 お好み焼きを平らげたゴルドは満足そうにしたあと従業員に片付けを頼んでから、先ほどの資料をテーブルに広げるとリボルテの街の現状と幾つかの商品の説明を始めた。


「いいかい?まずリボルテについての情報だ。

 あそこはクロイス様の領地で随一の鉱物の産地なんだ。

 特に鉄と銀が主力であるため武器や防具の生産が盛んだ。

 だからあそこの冒険者ギルドはいい武器を求めて多くの冒険者が集まるんだ。

 そんな彼等が大量に消費するものの一番が“酒”だ。

 だからこその依頼なんだろうけどな。

 次が“塩”だな。

 鉱山で働く男達は汗を大量にかくので塩分多めの食事を求めるんだ。

 だがあそこは海から遠いので塩の運搬が大変だ。

 品質の良い塩は高く買い取ってくれるぞ」


「ああ、なるほど。

 だから魚の塩漬け干物も運搬品目に上がっていたのか」


「そう言うことだ。

 まあ、それだけだと君達には有益な情報ではないだろうから、特別に教えてあげよう。

 あそこの商人ギルドのギルドマスターは“甘いものに目がない”んだ。何か良いものがあったら手みやげにすれば何かと融通してくれるぞ。

 ああ、だが不正は許容しないから駄目だぞ。

 例えば欲しい素材の手配だとか街の裏情報とかな」


「なるほど、参考になりました。

 では今の話から運搬対策や追加の商品選択をシミリと話し合うようにします」


「ああ、それが良いだろう。

 やはりそういった事はふたりでよく話し合って決めた方が後で揉めなくていいと思うよ」


 ゴルドは何やら昔を思い出すように天井を見上げて何か呟いていた。


「そうだ!オルト君、ちょっとこれからふたりだけで話しが出来るかな?

 シミリさんには悪いけど席を外して貰えると助かるんだが・・・。

 ああ、時間潰しに店の装飾品売り場でいろいろと着けたりしてみればいい。

 係の者に案内させよう」


 ゴルドはこちらの返答を待たずに人を呼び、シミリの事を頼むと言って下がらせた。


「一体どうしたのですか?

 シミリを外して話す話とは?」


「うん。ちょっとお節介が過ぎるかとも思ったんだがね。

 君にはいろいろと世話になっているから話しておきたい事があったんだ」


 ゴルドは少し声のトーンを下げて僕に頭を近づけて話しだした。


「いいかい?まずはリボルテの冒険者ギルドについてだ。

 さっきも少し触れたがあそこは武器を求めて冒険者が集まる。

 中には荒事を好む戦闘馬鹿もいるようだ。

 そこにシミリさんを連れて行くと彼等が絡んでくる可能性は十分にある」


(あー。なんだか何処かの街でも似たようなことがあったような気がするな・・・)


「普通に戦うのならば君がそんな奴等に負ける事はないと思うがひとつ気をつけて欲しいのが“酒豪対決”だ。

 あそこのギルド所属の酒場は何か賭ける時には“酒”で決める変な風習があるんだ。

 まあ、暴れてギルドから放り出されるよりはいいのだがね。

 だが、これに負けて売上をとられる商人もいるくらいだから楽観視は出来ないんだよ」


「そんなの受けなければ良いのではないですか?」


「まあ、理屈はそうだが商人ならばともかく、冒険者となれば“逃げた”とされてまわりから舐められる事になるんだ。

 これは仕事を承ける段階で結構厄介だぞ」


「そうですね。

 僕はお酒はあまり飲まない方なので何か対策をとっておきますね。

 ところでこの話はシミリに聞かせられないものなんですか?」


「いや、ここまでは話していい話だ。

 ここからが君だけに話したい内容だ」


 ゴルドはそう言うと指輪を3つ取り出した。


「これは私の妻達との結婚指輪だ。

 君も知っているだろうが、この国は一夫多妻制度が当たり前になっている。

 ちなみに私の妻達は3人いるが全員“商人の証”を持って各店の管理を任せている。

 この意味は分かるかい?」


「この国では“商人の証がないと店の店主にはなれない”からですよね」


「良く知ってるじゃないか。

 その通りだ。だから男性の商人は出来るだけ商人の証を持つ女性を妻にする。

 支店を出す時に妻を店主に出来るからだ。

 だから商人の証を持つ独身の女性が居たら取り込んで妻にするか証を持てなかった息子の嫁にするかして家族内での店舗拡大をしていくんだ」


(まあ、確かにシミリも借金のからめ手で支配下に置かれそうになっていたんだからよく分かる気がする)


「君達のいまの立場は『スポンサーと雇われ商人』になるんだよね。

 対外的には『パートナー』と言ってるのかな?」


 僕が頷くとゴルドは首をふって続けた。


「いいかい?カイザックでは今のところ君とシミリさんは常に一緒に行動しているからトラブルは無いだろうけど、別の街に行けば話は違う。

 雇用契約しかないパートナーなんて“いつでも引き抜いてください”と言っているようなものだ。

 現にそういう事があったと聞いている」


「それって本人の意思で断ればいいのではないですか?」


「そう簡単にはいかないんだよ。

 悪どい奴はいろんなからめ手を使ってくる。

 例えば君に女を仕掛けてその間に騙して契約させたりとかね」


「そんな事までするんですか?」


「するんだよ。

 まあ、悪い事は言わないから君がシミリさんを大事に思ってこれからも行動を共にするつもりならば早めに決断した方がふたりのためだと私は思うよ」


 ゴルドはそこまで言うと真剣だった顔を崩してにんまりと笑った。


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