第41話【シミリからデートのお誘い】
「オルト君、デートをしましょう」
領主邸から帰った次の日、朝食を食べている最中にシミリが突然そんなことを言い出した。
いきなりの言葉に僅かに動揺した僕だったが平静を装って答えた。
「いいね。それでシミリは何処に行きたい？」
シミリの事だ、どうせ恋愛感情の思惑も無く別の意味でどこかに行きたいのだろうと考えてあえて僕は普通に返した。
「そうですね。まず商人ギルドに顔を出してから港の市場を見に行きたいです。
「リサーチ？」って言うんですかね。
商売するにも今何が求められているかを研究しないと在庫ばかり抱える事になりますからね。
いくらオルト君がスポンサーでも不用品ばかり仕入れをしたら申し訳ないですから」
（うん。まあ、シミリならばそんな所だろう。
リサーチなら初めからそう言えばいいのにな。
確かに若い男女が市場で買い物してたらデートに見えなくもないかもしれないが、普通に財布と荷物持ちになりそうで怖いな）
「ああ、分かったよ。それじゃあ食事が済んだら準備して出掛けようか。
今日のホストはシミリにお任せするよ」
「ええ、任せてくださいね」
僕達は食事を早々に済ませると、必要な物を手早く準備して商人ギルドへ向かった。
「本日はどんなご用件でしょうか？」
商人ギルドでは情報を集める商人達と依頼をするために訪れている貴族の使用人や素材の依頼をする技師など様々な人達で溢れていた。
僕達は依頼ボードをざっと確認してから受付に行って市場の様子を聞いてみた。
「そうですね。今、市場では商船が複数到着していて他国の珍しい物が市場に並んでいます。
彼等は主に食料品を買い込んで帰るのですが装飾品や薬草なども買い付けしているようですね。
薬師のオルトさんならば良い話が出来るかもしれませんよ」
「ありがとう。今からシミリと行ってみるつもりだったんだ。
ゴルドさんも居るかな？」
「多分いらっしゃると思いますよ。
彼の商会も商船の方々と取引がありますから」
その後、僕達は商人ギルドを出て港の市場に向かった。
港までは以外と距離があったが近づくにつれてどんどん賑わいが増していった。
市場の入り口に来た時、僕達は受付らしい青年に声をかけられた。
「そこのお二人さん、初顔だね。
市場には観光かい？それとも商談かい？初めての人には説明してるんだけど、この市場は運営費の一部を来場者の入場料で賄ってるんだ。
観光ならば一人銀貨一枚、商談ならば一人小銀貨五枚、つまり二人で銀貨一枚だ。
但し商人ギルドのカード提示が必要だけどな。
入場料と引き換えに商人には商談カードを渡すから商談の時は提示をしてくれ」
「一応商談の予定だが、商人は彼女だけで僕はスポンサーなんだがその場合は銀貨一枚と小銀貨五枚になるのか？」
「いや、商人がスポンサーを連れてくる事はよくある事だよ。
その時は商談として扱うから二人で銀貨一枚で大丈夫だ。
商人の方には一応、商人ギルドカードは提示して貰うよ」
シミリが懐から商人ギルドのカードを出して受付に提示した。
僕はふと思い出して特化型特殊許可プレートを受付に提示してみた。
「先日、領主様からこれを貰ったんだが割り引きとかあったりするのか？」
「こっこれは！？特化型特殊許可プレートじゃないか！君は特殊な技能を持っているんだね。
なかなかこれを持てる人は居ないよ。
ただ、残念ながら入場料は割り引きにならないんですよ。
だけど市場の中での食事や取引で割り引いて貰えるはずですから提示をしてみてくださいよ」
「そうか、ありがとう。楽しんでくるよ」
僕は銀貨を一枚を渡してから商談カードを受け取り片手をあげて礼を言った。
「どういたしまして。
よい商談があることをお祈りしています」
受付の青年は笑顔で僕達を見送ってくれた。
