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第1話【現実逃避の日常と少しばかりの勇気】

作品を読んでくれてありがとうございます。


この作品は昨年完結をしておりますが、まだまだ文章的におかしな箇所や誤字、脱字が自分の中でも見られる為、現在大幅な改稿・修正をしています。


本文の大筋は変更しませんが、小タイトルの変更や本文の言い回し等が変更になることがあります。


修正を入れた所はタイトルの通し数が【第○話】としていますので直ぐに分かると思います。


出来るだけ早く全ページの修正をしたいと思っていますのでご了承ください。


2021.2.15

 その日もいつもと同じ夜のはずだった。


 現代日本で社畜のように使い捨てにされ、ようやく辞められたと思ったら新たに勤めたバイト先はブラックばかり。


 現実逃避に異世界転生モノのライトノベルを読んで自分が活躍出来る世界の妄想を膨らませる事が毎日を生きていく僕にとっての精一杯だった。


(もう疲れたな・・・いつまでこんな生活がつづくのだろうか)


 真っ暗になった空を見上げながら街灯りを頼りに寝るだけの部屋に帰る日々が長く続き、疲れと諦めで何度死のうかと考えたかも分からなくなっていたが、いざとなるとその勇気も無くて結局いつもの時間と命を売る日々に流されていた。


 しかし転機はいきなり訪れた。


 その日の僕は僅かな生活費を下ろすために来ていた銀行でよりにもよって強盗にでくわしてしまったのだ。


 銀行内は騒然となりへたりこむ者、泣きながら命乞いをする者がいる中で強盗達の怒号だけが響いていた。


「オラー!さっさと金を準備するんだよ!こいつらの事がどうなっても良いのかよ!おっと警察に連絡なんざすんなよ!警察のやつらが見えたらこいつらをひとりずつ殺していくからな!!」


 強盗達は手にした拳銃を人質にした女性行員の頭に突きつけて店長を脅していた。


 今時の銀行のセキュリティはいちいち非常ボタンなど押さなくても防犯カメラの情報から警備会社を通じて警察に通報されるに決まっている。


 男達は拳銃を所持している強盗集団なのでおそらく警察の特殊部隊が突入してくる事になるだろう。


 警察としても被害者は最小限に抑えたいだろうから人質になっている女性は特殊部隊が突入した際に強盗が激情すればおそらく命は無いだろう。

 だがそんな事は構わずに鎮圧を優先させるのが特殊部隊のやり方だった。


(あの()も可哀想に、まだ勤め出して間もない新人行員だろうに)


 表情を引きつらせながら涙を流して命乞いをしている姿が痛々しかった。


 だが、こんな危険な状況だというのに僕には不思議と死に対する恐怖心があまり無く周りがよく見えていたように感じていた。


【ガシャーン!ドカドカドカ!!】


 その時、突然大きな窓ガラスの割れる音がしたかと思うと僕の予想通り特殊部隊と思われる人影が複数飛び込んできた。


「何だテメーらは!?ちくしょう!コイツがどうなっても良いのかよ!!」


 激情した強盗は人質の女性の髪を掴み自らの盾としながら迫りくる人影を睨みつけながら出口の方へ後退りを始めた。


「無駄な抵抗は止めろ!すでにお前以外のメンバーは鎮圧した!武器を捨てなければ射殺する!!」


 人質ひとりの犠牲で多くの人が助かるならば躊躇(ちゅうちょ)なく人質ごと射殺するのが特殊部隊のやり方だと知っていた僕は思わず息を飲んだ。


「嫌ぁー!!助けてー!!」


 人質になった女性行員の悲痛な悲鳴を聞いた瞬間、僕は叫びながら強盗の拳銃めがけて飛び込んでいた。


「うわぁぁぁ!」


【バーン!!】


 いきなりの僕の行動に驚いた強盗は女性行員に向けていた銃口を咄嗟(とっさ)に僕に向けて発射していた。


「突入!!取り押さえろ!!」


 ひとりの特殊部隊の人影が強盗の顔に拳を入れ、もうひとりの人影は銃を持つ腕を特殊警棒で打ち付け銃を叩き落として確保した。


(なんだ?胸が熱い。僕は死ぬのか?あの咄嗟の状況で心臓に当たるなんて僕はどんな凶運を持っているんだ。

 まあいいか、どうせ自分では死ぬ勇気もなかった僕だ。

 最期に人助けが出来ただけで満足だ。

 次の人生はもう少し自分に自信の持てる能力(ちから)をつけて大好きだった某ラノベみたいな誇りある人間になりたいな。

 現実的にチートは無理だろうけど・・・)


 近くで誰かが僕を呼んでる声がする。


「君、大丈夫か!おい!要救護者一名、救急車を早く!胸を撃たれていて心肺停止状態だ!」


 僕は薄れゆく意識の狭間で誰かの声を聞いた気がした。


「勇敢と無謀は紙一重なのよ。

 運の足りない者が無理をすると取り返しのつかない事になるのです。

 でも、あなたのその勇気だけは認めます」


 それは何かの大きな力が気まぐれで起こした小さな種のはじまりだった。


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