その1 就職について
皆様は『ネクロマンサー』をご存知だろうか?ネクロマンサーは死者蘇生といわれる禁忌の魔法を使う魔術師のことだ。世間一般的な印象は悪く基本的には忌み嫌われている。ではそんなネクロマンサーがホワイト企業なんてしていたらどう思うだろうか、明らかに怪しいと思ったり裏があると考えるのが当たり前だ。これは剣と魔法がある中、営業功績が優先されるファンタジーな世界で世間からのイメージを覆すために企業経営する一人の社長の話である。
~朝~
「ふぁ~‥‥」
ネクロマンサー(社長)の朝は早い、朝5時には起きてまずはその日のスケジュールを確認する。その後朝食を作って食べ、シャワーを浴びる。そして6時には会社に到着しておかなければならない。
会社に着いたらその日の仕事をする、仕事はその日その日で内容が変わってくるが、例えば他社との交流があるときは基本的にはどのようなおもてなしをするのか等を考える、ライバル会社が現れれば当然対抗手段を考える、その他にも経済面や企業面のことについて考えたりする。当たり前だがこういったことが大事なのだ。勿論、社員への指示、書類の整理、新商品の開発案等々、その他にも様々なことをしている。社員にやらせれば楽な事も自分で出来ることならやる。何故ならそれが信頼を得るために一番大切なことだと思っているからだ。
そしてこの日は新しい社員の面接がある。この会社の面接は社長との一対一で行われる。これはネクロマンサー自らが提案したものでその方がよい人材かどうかを判断できるとのことらしい。
「新しい社員の子か‥‥出来ればいい人だと嬉しいんだけどな‥‥‥」
そんなことを呟きながら一人椅子に腰を掛けて面接の時間まで待っていると、
『ガチャ』
「失礼します。面接を受けに来ました、名前は犬塚 由良です、宜しくお願いします!」
面接の始まる5分前に元気で明るい声が室内に響いた。
その子はパッと見は女子高生だが、よく見ると犬の尻尾があったり、猫耳ならぬ犬耳がはえてたりと、いわゆる獣人と言われる種族の子だった。容姿はとても綺麗で、ピンクのボブヘアーに大きすぎず小さすぎずの胸、スリムなくびれに、細く長い足。上から下まで見ても全てが整ったように美しかった。だが、面接は美しいから入れるなどそんなに甘くはない(いや、そんなところもあるのだろうが、うちは違う)。
「えーっと、犬塚さんそれではまずこちらの席にお座りください。それでは今から面接を始めさせていただきます。」
ネクロマンサーは犬塚が座ったのを確認して面接を始めた。
「それではまず、何故この会社の面接を受けに来たんですか?」
「えーっと、この会社が、ネクロマンサーの社長が経営してると耳にしたので興味を持ちました。そしてとってもここがいい会社だということを知り面接を受けることを決めました。」
「その情報はどこから聞きましたか?」
「友達からです、『ネクロマンサーが経営してる会社ってどんなところだろうね』っていうように話題になっていたので気になりました。」
「なるほど、では何故この会社がいい会社だと思われたのですか?」
「それは社員さんからです、たまたま通りすがりの社員さんから『やっぱ、社長はスゲーよな何でも出来るし、社員に無理はさせない、それどころか社員に気遣って無理してるって感じだもんな』『本当にな、でもなめられないように社長としての威厳もしっかりとあるもんだからな、俺はこの会社に就職出来て良かったと思ってるよ』『同感だ』と言う会話が聞こえたので、ほかの会社でもなかなかここまでの信頼を得ている社長はいないと思いますので、それにとても社員さんが嘘をついてるようには聞こえなかったですし、何より話している二人の社員さんは笑いながら話していましたから。」
そうまだこの会社は設立してから半年しか経っていない、それなのにこんなに社長が支持を得ているのはやはり、ネクロマンサーが努力している証なのだろう。そして、犬塚はこれを理解した上でこの会社に就職しようと決めたのだ。
(うーん、性格は良いんだけどどこに所属してもらうかだな‥‥)
この時点で犬塚の就職は決まっていた、しかし問題は何の仕事をしてもらうかだった。獣人は基本的に人間より身体能力が高い、だから主に工事現場等で力仕事をする場合が多い。
(この会社は力仕事を必要としないんだよな‥‥)
しかしこの会社では力仕事は必要とされなかった。
(力持が働ける方法か‥‥‥‥ん?いやまてよ、獣人はあくまで身体能力が高いだけで、力持限定にこだわることはない‥‥‥‥つまりその高い身体能力を生かす方法を考えよう!)
先ほど獣人には工事現場で働いてるタイプが多いと言ったが全ての獣人がそうと言うわけではない。例えば、スポーツ界でその身体能力を活かして金メダリストになったものもいれば、目や鼻の良さを活かして災害救助隊に入って活躍しているものもいる。ごく一部ではあるがこれらのように身体能力の高さを力仕事ではなく違うベクトルに伸ばしている獣人もいるのは確かだった。
この作品を読んでいただき、誠にありがとうございます。学生という身分ながら書かさせてもらった作品でございますが、面白いと感じてもらえたなら光栄です。この作品が一作目となっておりまだまだ未熟な部分が多くありますが、これをきに気に入っていただきたいです。次の作品はいつになるかわかりませんが気長に待っていただけるとありがたいです。これからもよろしくおねがいします。