異世界のファッション事情
「ほほうこれは興味深い。この上げたり下げたりできるものはなんだね?」
「それはチャックと言って、ボタンよりも服の着脱が楽なので便利ですよ」
声をかけてくれたのは、この町で服屋を経営しているレリックさんだ。どうも異世界から来た僕の服は珍しく、気になるらしい。
「どうだね、この服を私に売ってくれんか?もちろん代わりに着る服は無料で上げるぞ」
悪くない話だ。目立ちすぎていて、この世界の服に変えようと思っていたのでちょうどよかった。
「もちろんいいですよ」
服をレリックさんに渡すと匂いを嗅ぎ始めた。
「レ、レリックさん??やめてください」
レリックさんは頭にはてなを浮かべ、何のことかわからないといった顔をしている。この世界では人の服の匂いを嗅ぐのが常識なのか?そしたら僕が慣れないといけないわけだし・・・いーや~さすがに無理かな?抵抗がありすぎる。
「あの~服の匂い嗅ぐのやめてもらっていいですか?」
「お~すまんのつい癖で。どのような材質を使っているのか気になったので嗅いでみた」
この人服の匂い嗅ぐだけで材質わかるのかよ、すごいなそれ。
「しかし、嗅いだことのない匂いだ何で作られているのだこれは??拓海くんはどこでこれを手に入れたんだい?」
ん~どうしようかな、異世界から来ましたなんて言えないしな。適当にごまかしておくか。
「旅の途中でいただいたものでして、よくわからないんです。申し訳ないです」
「なるほど・・むむむ」
突然レリックさんが険しい顔をし始めた。する裏から店員らしき人が出てきて
「いまレリックさんは新しい服のデザインがひらめきそうなのでそっとしておいてもらえますか?好きな服をもって言ってよいとのことですので、こちらが売っていただいた服の代金です」
金貨三枚を受けとり服を選び始めた。レリックさんは天才肌なのかな?いつも突発的にいいアイデアが浮かんでくるらしい。とりあえず、町の人が着ていたようなシンプルなデザインの服にしよう。
服を選び終えてまだレリックさんは自分の世界の中だったので、店員にお礼を言って店を出た。さて日も暮れてきたし宿舎にいきますか。