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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep3エレニア平原Act29暗い運命に抗って

目覚めたミハルはアルミーアに願う。

自分を護るな、庇うなと。


そんなミハルにアルミーアは心に秘めた想いを固める。

決して忘れない堅い約束と共に・・・

「さあ、起きてミハル。時間だから」


アルミーアに起されたミハルが瞳を開けて、


「うん、アルミーアは休めたの?ごめんね、ずっと撫でてくれてたんでしょ?」


黒く澄んだ瞳で覆い被さって見詰めているアルミーアの顔を見上げて、


「アルミーア、お願いがあるの。額じゃなく・・・唇にして?」


はにかむミハルが、まるでずっと起きていて何もかも知っているみたいに求める。


「え?ミハル、ずっと起きていたの?どうしてキスしたのを知ってるの?」


眠っていたと思ってキスしたのを知っているミハルにドキっとして聞き返す。


「ううん、眠っていたよ身体は。

 でも、見えていたんだアルミーアも私も。

 ちょっと別の世界の人に呼ばれてたんだ・・・大切な話が有るって言われてね」


何故かミハルの瞳が潤んでいる。


「ミハル?何故泣いているの?」


アルミーアがその涙の訳を聞きたがった。


「お願いアルミーア、キスして唇に。私に感じさせて、アルミーアを」


半身を起こしてアルミーアの肩に手を廻して眼を閉じる。


「ミハル・・・」


アルミーアは戸惑いながらも求めに応じる。


((チュッ))


2人は唇を重ねる。


軽いキスを交わした2人がどちらとも無く離れ・・・


「どうしたのミハル。初めてだよね唇でキスを交わすのって」


アルミーアが頬を染めてはにかんで訊く。

そして気付いた、ミハルの顔が自分を見詰めて迷っているのを。


「何があったの?何を悩んでいるの?」


その顔の訳を訊くアルミーアにミハルは何かを伝えたいのか話し出すのを躊躇い、

何度となく口を開くが言い出せずに口篭もる。


「話してミハル。

 どんな事でも話し合える仲に戻れたんじゃなかったの、私達?」


アルミーアが真剣な瞳をしてミハルに答えを求める。


「アルミーア、信じてくれる?」


その瞳に答える様に重い口を開くミハル。


「勿論。ミハルを信じるって決めているから」


頷くアルミーアへ漸くぽつりぽつりと話し始める。


「私ね、この宝珠に宿る巫女に言われたんだ。

 あなたを失いたくなければ前へ進ませるなって。

 出来れば闘いに行かせるなって言われたんだよ。

 アルミーア、お願い。

 私達より前へ出ないで、私を護ろうって考えないで・・・」


挿絵(By みてみん)



ミハルは必死になってアルミーアに訴える。


「え?ミハル。どう言う事なの、それって。私がどうにかなってしまうって事なの?」


ポロポロ涙を零したミハルにアルミーアは驚いて訊くが、ミハルから出た言葉は・・・


「アルミーアが私のオデコにキスしてくれた時、

 この宝珠に宿る巫女が私に語り掛けて来たの。

 あなたの運命を。

 アルミーアが私を護る為に死んでしまう。

 アルミーアが心に秘めている約束を果たす為に。

 お願いアルミーア、その約束を捨てて。私を護るって約束を忘れて!」


ミハルに縋り付かれたアルミーアは言葉を失う。


ー  こんなに必死に私の事を心配してくれている。それだけで十分だよミハル・・・


瞳を閉じてミハルの心に感謝するアルミーアは再び眼を開けてこう言った。


「解った。ミハルがそれ程言うなら、その約束は忘れる。

 だから、もう泣かないで、笑ってよミハル!」


ー  そう・・・私は決心した。

   私が死んでもミハルは、ミハルだけは必ず護ってみせると。

   忘れたとしても何度も思い出すから。

   この想いは私が死ぬまで変わらない。

   譬え私が死ぬ事が運命だとしても抗ってみせる。

   もう二度と私から離れるなんて事はしないから。

   この想いを誰かに奪われる事なんてさせはしないからね


アルミーアは心に秘めた想いを口にする事は無かった。


「ホント?アルミーア。だったら改めて約束して。

 絶対私を庇ったりしないと。・・・もう嫌なの私は。

 私の事を護って、庇って何人もの友達が死んでいった。

 私は死神なんかになりたくない。大切な人をもう失いたくないっ!」


縋り付いて泣くミハルを宥める様に髪を撫でて。


「ミハルありがとう。大切な人って呼んでくれて。

 その一言だけで十分だよ。その一言で私は生きてゆける。

 譬えどんな事になったとしても、永遠に生き続けられるから」


ー  そう・・・譬え私が死んでも、あなたの記憶から失われる事が無いって知った今。

   何も恐いものは無くなったから。

   ありがとうミハル、私はあなたの中で永遠に生き続けられる


アルミーアの瞳は迷いも、死の恐怖さえも超えて澄み渡っていた。


ミハルの身体をしっかりと掴んで瞳に力を込めて言った。


「さあミハル、何も心配しないで。皆が待ってるわ、行きましょう」


諭す様にミハルに告げるアルミーアに。


「う・・・うん。」


ゆっくりと返事を返すミハルは、まだ歩き出そうとしない。

そんなミハルの手を握って、


「ほら。行くよミハル!」


引っ張って歩き出した。




「おっ、戻って来たか。アルミーア、照準器も修理を終えたぞ。調子を確認してくれ」


バスクッチ少尉が戻って来た2人を見て声を掛ける。


「バスクッチ少尉!」


アルミーアが返事を返す前にミハルが駆け寄り思い詰めた声を挙げる。


「ん?ミハル。何だ?」


「お願いがあります、少尉。

 絶対私達より前へ出ないと約束して下さい。

 絶対敵の射線に車体を晒さないと約束して下さい、お願いです。お願いします!」


必死に願うミハルを黙って見詰めたバスクッチが怪訝そうな顔で観る。


「何故だミハル?何故そんな事を言うんだ?」


真剣な眼になって訊き返す。


「そ、それは・・・言えません。言えませんがお願いします!」


本当の訳を口に出せず、苦しい胸の内を秘めたままバスクッチに願う。


「小隊長・・・」


見るに見かねたアルミーアが、バスクッチに目で合図を送る。

アルミーアの表情を見て、何かを感じたのか。


「そうか、ミハルがそこまで言うなら覚えておくよ」


髪に手を置いたバスクッチが、優しい声でそう答えた。



ミハルに願われたバスクッチの元に一通の暗号電文が届く。

その内容をバスクッチもアルミーアも決してミハルに教えようとしなかった。

中央司令部に近い部署のバレン中尉からの電文の内容とは・・・


次回 バレンからの暗号

君は願う、どうか友と何時までも一緒に居られます様にと

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