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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep3エレニア平原Act14リーンのジェラシー

ミハルはアミー軍曹と別れた後、MMT-6の所へ向う。

そこには、いつもと違う雰囲気のリーンが・・・

記憶の中に居る自分はいつまでも寂しさを引きずっている。


ー  あれからもう一年近い日が過ぎたんだ・・・


ミハルの前に砲術学校で別れたアルミーアが居る。


甘く切ない思い出も、

やるせない仕打ちをされた思い出もごっちゃになってミハルに迫る。


「今となってはもうどうでもいい事ね。

 あなたはリーン中尉の砲手になった。

 魔鋼騎の砲手になった。結果的には能力を認められたのよ!」


ぐっとミハルを睨らむ瞳は、アルミーアと呼んでいた頃の瞳ではなかった。


何かを何かを訴えているかのような、

何かを求めているかのように女軍曹の瞳は澱む、救いを求めているように。

睨む瞳の中で何かが変わって行った。


「あの時は・・・知らなかった。

 私が能力者まほうつかいだったなんて。

 ・・・それに私が軍のモルモットだった事も・・・」


ミハルはアルミーアの瞳の変化にも気付かず顔を背ける。


「でも今は違う。

 この小隊に来て、私の運命を知って、そして闘う意味を教わった。

 もう、昔の私じゃないんだ。

 あなたの知っているシマダ・ミハルはここには居ない!」


自分を睨みつけているだろうアルミーアに、顔も向けずに言い放った。


「アルミーア。あなたが私を憎もうと構わない。

 けど、リーン中尉に悪さをすれば私は許さない。

 リーンとこの小隊に悪さをすれば私は決して許さない!」


昔とは違うとばかりに手を握り締めた。

そして返答も待たず、アルミーアに背を向けて新車両へと歩き出す。


決然と言い放って去るミハルの背に、

自分の知っている気弱で優しい少女の面影をダブらせて、

アルミーアは後悔と後ろめたさに瞳を曇らせていた。






「あっミハル、大変だ。中尉を何とかしてくれ!」


MMT-6の傍まで戻って来たミハルに、ラミルが呼びかける。


「え?どうかしたんですか、中尉が・・・?」


呼び掛けられたミハルが訊き返すと、ラミルは手を引っ張って車体の陰に連れ込む。


「ミハルにしか頼めないんだ、あれを見てくれよ」


影から2人でそっとリーンを見ると。


ー  うわっ。リーンがブチ切れてる?!


ラミルとミハルが見ているとは知らず、リーンは爪を噛んで片足で転輪を蹴り続けている。


「なっ、あんな状態がかれこれ30分も続いているんだ。

 バスクッチ少尉の砲手と別れてからずっとあんな状態なんだよ。

 何とかしてくれないか、ミハル?」


ミハルの眼でもリーンが異常をきたしているのが見て取れる。


「あ、はい。何とか話してみます」


ミハルはラミルに承諾し、リーンに近寄って声を掛けた。


「リーン中尉、何か心配事でもあるのですか?」


努めて明るく声を掛けて訊ねたが。


「あっミハルっ。聞きたい事があるのっ!こっちに来てっ!」


いきなりミハルの手を掴むとリーンは走り出した。


「えっ?ちょっ、ちょっとリーン。何?何なのっ?」


突然掴まれて、おまけに走り出されたミハルは驚いてリーンに訳を訊いたのだが。


「黙ってついて来るのっ!」


リーンは走りながら有無を言わせずミハルを連れ去った。


ー  あーあ。私、知ーらないっと・・・


その光景を見送ったラミルが無責任にため息を吐いた。


「いいんですかぁ、ラミルさーん」


涙目のミリアが操縦席ハッチから首を出して訊いたのだが。


「お前は車内に引っ込んでいろ!」


ラミルはもうどうにでもなれっと匙を投げた。






「ねえ、リーン。どうしたの?何があったの?」


誰も居ない窪地まで連れて来られたミハルが息を切って問い掛けると今度は・・・


「きゃあ!」


リーンがいきなりミハルを押し倒した。


「ミハルっ、あの女とどんな関係なのっ。答えてっ!」


リーンはミハルの両肩を掴んで問い質す。

リーンに押し倒され、両肩を掴まれてミハルは驚く。


「リ、リーン?」


何かの冗談かと思ったが、リーンの真剣な表情に更に驚きを隠せなくなる。


「答えるって何を?」


声が震えているのがミハル自身にも判る。


「ミハル。あのアミーとか言う軍曹に何をされたの?

 昔に何があったの?答えて、答えてよ!」


リーンの瞳にはミハルを想う気持ちで真剣な色が浮かんでいる。


「昔って・・・学生時代の事?」


ミハルは小声でリーンに訊き返す。


「そう、彼女との間に何があったのか、全て!」


リーンも落ち着きを取り戻したのか、静かな口調でもう一度訊き直す。


ふうっと息を吐いてから、ゆっくりとリーンに話し出すミハル。


「アミーとは同級生だった・・・仲のいい友達だったの戦争が起きるまでは。

 でも、彼女は変わってしまった。

 私が能力検査で撥ねられてから・・・

 アミーが陽性で私は再検査を拒まれ、進む道が別れた時から彼女は私を嫌いになったの」


ポツリポツリとリーンに彼女との仲を話すミハルに、リーンは掴んでいた手を放す。

起き上がろうともせずミハルは話し続ける。


「リーンも知っている通り、私は軍のモルモットとして砲術学校へ進んだ。

 そこで砲手としての訓練を受けて良い成績を収める事が出来て、あの連隊に配属させられた。

 私が彼女より高成績で砲術学校を卒業したのも、アミーには気に喰わなかったみたい。

 一足先に卒業する私にアルミーアは、アミーは何も言ってくれなかった。

 まるで早く死ねとでも言っているみたいな眼で、校門を出る私を見ていたもの・・・」


ミハルは辛い思い出に瞳を曇らせてリーンに話す。


「それ以来アルミーアに会う事は無かった。今日会ったのが一年ぶり位だから」


信じて欲しいと願う様にリーンの顔を見詰める。


「そっか。

 アミー軍曹とミハルの仲って、そうだったんだ。

 ・・・疾しい仲ではなかったんだ」


リーンが少しだけホッとしたような顔をみせた。


「ねえ、リーン。もしかして変な想像してたんじゃない?」


ちょっと咎める様な口ぶりでリーンに確かめると。


「ぜ、ぜんぜんっ。そんなこと想ってないから!」


図星を突かれて動揺するリーンに微笑んで。


「もうっリーンったら。

 今の私はリーンしか居ないから。これからもずっとだよ?」


ミハルが逆にリーンの手を取って招く。


「そうだね、ごめんねミハル。

 私どうかしてた、ジェラシーでどうかしてたわ」


リーンはミハルに謝りミハルに招かれたまま覆い被さる。

星明りに照らされた微笑む顔を見詰めて、自分もやっと笑顔を取り戻せた。


「リーン、心配しないで。私は何処にも行かない。

 誰の手にも染まらない。私はあなただけのものだよ」


微笑むミハルがリーンを求める。


「ああ、ミハル。私だけのミハル・・・」


リーンの身体がミハルと重なり、唇を重ねようと近寄ると、


「あーら、あら。とーんでもないもの見てしまったわ!」


二人の後ろからアミー軍曹の甲高い声が響く。


ミハルとリーンの前に現れたアミー軍曹。

アミーは仲の良い2人の姿に嫉妬心を滾らせる・・・


次回 理不尽な制裁

君は意地悪い仕打ちに黙って耐えられるだろうか・・・

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