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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep3エレニア平原Act12秘められた力

ミハルとアルミーアが幼年学校の寮で出会ってから早、

半年が過ぎようとしていた。

それから半年が経った頃・・・


下級学年も終了が近付いてきた。


上級生が検査を終了し検査で陽性と判別された数名が砲術学校へ進む事が決定され、

下士官服を身に纏い総員が見送る中を卒業していった。


残りの男子と女子生徒はその姿を複雑な思いで見送っていた。


「紛争も拡大の一方だし、残った生徒も徴兵されるって聞いたし。

 どっちにせよ軍へ行かされるんだよね」


ミハルは心もとなくアルミーアに話しかける。


「こうなると検査でパスして下士官になった方がましね。

 一般の兵で軍に入るより下級士官の道を歩んだ方が、ずっと人間扱いしてくれそうだもんね」


アルミーアも心配そうに上級生を見て言った。


「特に男子生徒の目を見て思ったわ。

 まるで家畜小屋に入れられる前の豚みたいに瞳が死んでるもの・・・」


哀れみの篭もった瞳で男子生徒を見るアルミーアに同意して。


「戦争なんて嫌。誰だって行きたくないのに・・・」


ミハルは俯いて呟いた。


「私もそう思う。

 けど、私達には止めれない。

 国と国がぶつかり合う事を止める術なんて私達には持たされていないもの」


諦め顔でアルミーアがミハルの肩を掴んだ。


「これから行われる検査で2人が能力者だと判ればいいのにね。

 そうしたら2人で下士官になれるのにね。

 また2人で一緒に居られるのにね」


希望を抱いたアルミーアの言葉に対して。


「うん。そうだといいのにね」


自分なんかに能力は無いと思い込んでいるミハルが小声で頷き返した。






検査の日が近づいたある夜。


「はあっはあっはあっ、ねえミハル・・・」


赤い顔で汗を垂らすアルミーアが呼んだ。


「うん?何アルミーア。苦しいの?」


荒い息を吐きながらベットに横たわるアルミーアを、心配そうに見詰めるミハルが訊く。


「ミハル、ごめんね。二日後には検査があるのに・・・

 こんな大切な時に身体を壊してしまって。私は検査を受けられない。

 一緒に検査をパスしようって言ったのに。・・・ごめん」


ミハルは微笑んでアルミーアの汗を拭いてやりながら。


「何謝っているの。検査なんてどうでもいいよ。

 アルミーアが早く良くなる方が私には大切なんだから。

 そんな事気にしないで、早く元気になってね」


優しく銀髪を撫でて、汗を拭いてあげる手にアルミーアは手を添える。


「ありがとうミハル。

 あなたの手がとっても気持ちいい。あなたの心が心地いいよ」


涙を溢れさせるアルミーアが荒い息の中でも礼を言う。


「そうだ、アルミーア。

 おまじないしてあげようか。元気が出るおまじない」


ミハルがアルミーアの手を取って勧める。


「え?おまじない?」


「そう!元気になれるおまじない。

 私もお母さんから教えてもらったんだよ。良く効くんだこのおまじない」


ニッコリ笑い掛けてアルミーアに勧める。


「そう・・・。ミハルのお母さん直伝ってやつね」


アルミーアが拒まないので早速始める。


「あのね、アルミーア。

 私が胸に手を翳して呪文を唱えるから祈るんだよ。元気になります様にって!」


手をすっと伸ばしたミハルがアルミーアの胸の上に翳す。


「聖なる光を受け継ぎし我の力を持って祓い清めん。

  強き光と優しき光を持って闇を祓わん。

   大いなる力持って宿す闇を斬り祓わん!」


ミハルの手に翳されたアルミーアの胸がすうっと軽くなり、

息苦しかった胸の痞えも無くなった。


「アルミーア、どうかな。楽になった?」


アルミーアの顔を覗きこんで微笑み掛けるミハル。


「うん。胸がすうっと軽くなった感じ。不思議な感じ・・・」


アルミーアはミハルの手から放たれたまほうを感じた。


「ねえ、ミハル。あなた本当は魔法使いなんでしょ?

 まるで魔法みたいに胸が軽くなったもの」


真面目な顔をして言うアルミーアの眼が輝く。


「あはは。

 私が魔法使いならアルミーアだってそうじゃない。こんなおまじないが直ぐ利くなんて」


手を引っ込めてパタパタ振るミハルが笑った。


「そうかも!2人供魔法使いなのかもしれないね」


真面目に受け取るアルミーアに笑顔で応じた。


「早く良くなってね、アルミーア・・・」


記憶の中で。

ミハルの能力を知ったアルミーアと能力者検査に臨む二人が直面した理不尽。

その理不尽さに怒るアルミーアと諦めてしまったミハルの間に溝が開く。


次回 裂かれた仲

君は諦める事の恐さを知る・・・

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