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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep3エレニア平原Act4闘いの始まり

挿絵(By みてみん)

追加挿絵です(2020年8月15日・終戦記念日を祈念して)


リーンの通信を受けてユーリは作戦の変更を具申する為、参謀本部に来ていたが・・・

バレン中尉が怒りとも驚きともいえる叫びをあげる。


「馬鹿なっ!作戦再考の余地はないと?何故です中佐?!」


声を荒げたバレン中尉が、ユーリの後ろから作戦参謀に訳を訊く。


「今も言った通りだ。中尉の耳には聞こえなかったのかね」


メガネをついっと直してバレン中尉に言い返す作戦参謀が口を歪めて皮肉った。


思わず前へ出ようとするバレン中尉をユーリが片手で停める。


「では、作戦参謀。上申もして頂けないのですか?」


ユーリが静かに参謀を見据えて訊ね返す。


「当たり前だ。

 そんな不確実な情報を元に作戦計画を変更する訳にいくまい。

 どうせ前線の臆病者が言って来た戯言ざれごとに過ぎん」


作戦参謀は頭ごなしに拒否する。


「作戦参謀は前線の事を良くご存知になられておられる様で。

 ならば本作戦の意味も重々理解されておられる事でしょうね?」


ユーリが鋭い視線を作戦参謀に浴びせると。


「何が言いたいのだね大尉。

 君の所属は新機種開発の兵器部だろう。お門違いもいい加減にしたまえ」


中佐参謀がこれ以上の話は無駄だと言わんばかりに立ち上がりながら話を打ち切った。


「ならば仕方がないですね。直接閣下にお話申し上げるまで」


ユーリが踵を返して退出しようとする。


「誰なのだ、その閣下と言うのは?」


明らかに動揺を見せる中佐が訊く。


「バレン、行くぞ!陸軍省に!」


中佐には答えずバレン中尉を伴って作戦科長室を出るユーリ。


「はっ!お供します」


バレン中尉が先に立って外へ出てユーリに道を開ける。


「待て、大尉!貴様を陸軍省へ行かせる訳にはいかん!」


((ブブーッ))


中佐参謀が警報ブザーを鳴らして衛兵を呼ぶ。


「何をなさるおつもりですか、作戦参謀?」


静かに振り返るユーリに向って拳銃を構える参謀が。


「今、作戦を止める訳にはいかんのだ大尉。

 暫くの間、幽閉させて貰おうか!」


科長室へ来た衛兵に命じる。


「大尉を拘束しろ。別名あるまで独房に入れておけ!」


参謀の命令でユーリを捕えようとする衛兵に、

バレン中尉が止めさせようと立ちはだかったが。


「バレン、お前に頼みがある。

 彼と連絡を取って至急エレニアまで助けに行って貰いたいと伝えてくれ、頼んだぞ!」


バレンを制止し、自ら衛兵の元に進み出ながら<頼み事>を告げた。

自ら衛兵と供に歩き出すユーリの思惑が、バレンには理解できた。


「大尉!・・・解りました、必ず伝えます!」


ユーリの考えを察したバレン中尉は敬礼し、ユーリを見送り続けた。





_______________________





風を斬り、弾が飛ぶ。


((グオオーンッ バガガーン))


味方重砲が砲撃を続けてている。


市街地のかなり手前で爆焔が上がり続けている。



「準備射撃終了!

 各隊は指揮官に従い前進せよ。各員の奮闘を祈る!」


レシーバーから機甲師団命令が聞こえた。


「さてと、私達第3連隊は左翼に展開っと」


キューポラ上で呑気に呟くリーンを見上げ。


「中尉、そんなにのんびりしていていいのですか?」


ミリアが装填手側ハッチに腰を掛けて訊く。


「ミリア、いいんだよこれで。

 リーン中尉はこれ位でちょうどいいの。

 あまり張り切って貰わない方が私達には気分が楽でしょ?」


ミハルも砲手側ハッチに腰を掛けて2人に言った。


「ははは。それもそうですね。それじゃあ私、中へ戻ります」


ミリアは2人にそう言うと、装填手ハッチから中へ戻った。


「ミハル。どう思う?」


リーンが2人だけになるとマイクロフォンを外して真顔になって訊いてくる。


「そうだね、多分敵主力はこっちに来るんじゃないのかな?」


ミハルは右手の宝珠を見詰めながら答えた。


「・・・だろうね。どうやら作戦自体が敵に知られているみたいだから・・・ね」


リーンが爆煙を上げ続ける右前方を見て答えた。


爆煙の彼方には敵車両が少なく、

マチハが属している左翼の方には黒い胡麻粒に見える車両が群がっている様に見えた。


「敵は各個撃破を狙ってくる気かしら?」


車両数で劣る味方に対して、敵が取るであろう作戦を心配するリーン。


「どうでしょう?手当たり次第じゃないですか?

 数に任せて包み込む、前後左右から十字砲火を浴びせて袋叩きにする。

 ・・・こんなとこですかね?」


ミハルが敵方の作戦を予期して肩を窄ませて見せた。


「そうだね。

 数が少ない相手がわざわざ固まって突っ込んで来てくれるんだから、

 当然包み込む作戦を取るわよね。一匹でも逃がさない為には・・・」


リーンも同じ様に考えているようだった。


「それじゃあ、その作戦を打ち破るには、どうすればいいと思う?」


ニヤリと笑ってミハルに答えを言わせようとする。


「ふふっ、穴を開けてやればいいんですよ。

 そうすればバケツの底に穴を開けたみたいに流れ出る。

 ・・・でしょ、リーン中尉殿?」


ミハルの答えにリーンも笑う。


「では、私の魔女様に任せようかな。食い破って貰うのを!」


ミハルに右手を伸ばして微笑んだ。


その手に自分の右手を当てると。


「うん。じゃあ見せてあげましょうか<双璧の魔女>の闘いぶりを!」


微笑み返して頷くミハルの宝珠が、碧く輝く紋章を浮き立たせていた。






_________




ここはエレニアに続く街道上・・・


「おい、ラコス。後どれ位掛かる。

 急がないと間に合わんぞ、始まっちまったみたいだ!」


車内で操縦手を急がせる無線手が作戦が始まった事を告げる。


銀髪のラコスが、茶毛の無線手に向いて。


「これで目一杯です。あと20分位で陣地に辿り着く予定です。

 後ろの3両は付いて来てますか?マーク兵長」


茶毛の無線手マーク兵長がペリスコープを廻し後方を確認して、


「ああ、しっかり付いてきてる。訓練の賜物だな!」


ペリスコープのレンズには3両の新型中戦車が全速で併走しているのが映る。


「どう思います?間に合うでしょうか、アミー軍曹?」


無線手のマーク兵長が砲手席を振り返る。


「間に合わすんだ。

 この命令は直々に下されたんだからな大尉殿から」


銀髪の少女が無線手に向って答えてからキューポラを見上げる。


「間に合わせましょう、彼女達を救う為に。そうですよね小隊長!」


キューポラに立つ無精髭の小隊長に微笑んだ。


「ああ、そうだともアミー!」


キューポラで前方を見詰めるバスクッチ少尉が頷いた。


いよいよ戦車戦が始まった。

リーン率いる第97小隊中戦車通称マチハも激戦を闘いつつあった。

敵の重包囲網に苦戦を強いられたリーン達は魔鋼騎にチェンジして戦う。

今、エレニア平原で彼我の戦車があいまみえる。


次回 エレニア戦車戦 第1次攻撃

君は生き残る事が出来るか!?

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