魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep3エレニア平原Act3抗う想い、闘う想い
師団命令が届く。
リーンもミハルも一縷の希望にすがっていた。
2人が話し合っていた後ろから声が掛けられる。
「リーン中尉!ミハル先輩、ここに居られたんですか。
命令が届きました、来てください!」
ミリアが2人を呼びに来た。
リーンもミハルも一縷の希望を持って皆の居る所へ駆け寄る。
「中尉。これを・・・」
暗い表情のキャミーを見て、その希望が打ち砕かれた事を悟る。
「駄目だったの?」
リーンがメモを見ると、
「明日は予定通り攻撃を始めるようです」
キャミーが力なく教えてから。
「我々が危惧した以上に事態は深刻です」
目を伏せてしまう。
「そんな・・・馬鹿な。
こんな命令って・・・
これじゃあ作戦なんてものじゃあない。自殺行為よ!」
リーンが怒りに体を震わせて怒鳴る。
「リーン・・中尉?」
ミハルが近寄るとメモを差し出すと。
「こんな命令、受け入れられないわ。
まるで突撃して死んで来いって言ってる様な物だわ!」
怒鳴るリーンからメモを受け取って文面を観たミハルの眼に飛び込んで来た文字は。
「「師団各隊はエレニア正面に集中セヨ。
一点集中ニテ市街地ヘ突入スルベシ。
各員ハ被害ニ省ミズ突撃スベシ。
後退ハ認メズ、唯突撃セヨ。各員ノ奮闘ニ期待スル」」
「正面突破?敵の防衛線に?どう言う事なんです?」
あまりの理不尽な指令にミハルは呆れてしまう。
「あたし達に死ねって事なんじゃあないの」
キャミーがポツリと呟く。
「そうだな。
こちらが敵の何倍も戦力があればこの命令は間違っちゃいない。でも・・・」
ラミルも失意に瞳を曇らせる。
「でも、こちらは戦力を半減している。
敵はいまだ200両近い戦車と、手付かずの歩兵隊。
陣地は対戦車砲と地雷で護られている。重砲も狙ってくるだろーしな」
ラミルがどかっと座り込んでしまった。
「そんな所へ突っ込んだら、たちどころに撃破されてしまいます。
例え魔鋼騎の力を使っていたとしても・・・」
ミリアも力なくうな垂れてしまう。
「しかも敵の主力戦車は4号より性能のいいM4型だ。
重戦車だってKG-1が居るんだから、
こちらの魔鋼騎が奮戦しても数で押されたら対処不能になる・・・」
座り込んだラミルが肩を落して一人愚痴た。
ー このままでは士気が落ちる。
みんなの闘志がなくなってしまう。何とかしなくっちゃ・・・
ミハルは皆を見回してそう思うが直ぐにいい考えが思い浮かばない。
「わっはっはっはっ!」
隣に陣取っている4号F型の乗員達の笑い声が流れて来た。
はっとして皆が耳を澄ますと、周りの車両から笑い合う声が流れてくる。
ー 何故?皆笑っているの?
命令は全車に向けて発せられた筈なのに・・・
座っていたラミルまで立ち上がって味方野営地に集う車両達に耳を澄ます。
「あいつら、死ぬ気なんだ。死を決して笑ってやがるんだ・・・」
ラミルが隣の車両と乗員達を見て呟いた。
肩を組み合い、笑い会うその姿。
しかし瞳は悲しさを滲ませ涙を零している。
ー どうして、そんなに笑えるの?何の為に死にに行けるというの?
ミハルは呆然と周りの光景を見入ってしまう。
「何で、何の為に・・・どうしてっ?」
その笑いの答えを求める。
「国の為、大切な人を護る・・・と決めたんだろう、心の中で」
キャミーがポツリと呟く。
「あたしは駄目だな。
ウォーリアとの約束があるからさ。死んで堪るかっての」
瞳を吊り上げて死に行く事を認めなかった。
「ああ。キャミーの言う通りだ。
私も認めるものか。
誰が犬死して堪るか。こんな無茶な命令で!」
ラミルも瞳を決して反抗する。
「私だって嫌です。
まるで誰かの私欲を満たす為の様な作戦で死ぬなんて!」
ミリアも2人に同意する。
ーそう・・・私も嫌だ、こんな命令。
私一人が生き残ってしまったあの戦いと全く同じ命令。
誰かが誰かを殺す為に命じた命令と同じ。
そう、私とリーンを殺す為の命令だとしか思えない・・・
ミハルはじっと宝珠を見詰めて考える。
ー これは呈のいい殺人命令。
リーンを戦死させる為に命じた中央軍司令部の罠。
そんな事誰がさせるもんか。
リーンは私が必ず護ってみせるんだからっ!
ミハルの闘志に火が点く。
「私は・・・私は闘います。
みんなを護る為になら・・・みんなと共に生き残る為に!
絶対諦めませんから、絶対護りきって見せますから!」
ミハルが右手の宝珠に願う。
リーンを護る力が欲しいと・・・
「ミハル・・・」
「お前って奴は・・・」
「ミハル先輩・・・」
3人の前で魔砲の力を右手から放つ。
紋章が輝きミハルの姿が変わった。
魔鋼機械が作動している訳でもないというのに。
それはこの世界の中でも数人しかいないとされる高位の魔法使いの証。
自らの力を奮い立たせる魔砲少女の開眼。
ミハルの魔法衣姿を見詰める3人には、どれ程力強く想えたのか。
「だって、私。みんなと共に生きたいから。
どんなに苦しくても辛くても約束したから。
みんなを護るって決めたんです!」
微笑むミハルに3人が寄り添う。
「お前が闘うなら、あたし達だって闘う!」
キャミーがミハルの肩に手を置いて誓う。
「そうだ、お前だけじゃあ動かせんだろ!」
ラミルが親指を立てて笑い掛ける。
「先輩が撃つ弾は誰が込めるんです。私しか居ないですよね?」
ミリアが腕を掴んで力を込める。
「みんな・・・」
ミハルの瞳に更なる力が集う。
「うん、みんなで力を合わせて勝とう。
これからは私達が生き残るための闘いなんだから!」
3人に力一杯頷いて応えた。
「待ちなさい。4人共っ!」
リーンが声を掛ける。
振り向いた4人に言葉を絞り出すように。
「ラミル、キャミー、ミリア、ミハル・・・いい?」
何かを念を押す様に訊くリーン。
「明日の闘いで味方は全滅する事になるかもしれない。
それでも闘いに行けるの?こんな無茶な命令を受け入れて」
リーンの瞳はどこか遠くを見ている様に彷徨っていた。
「でも、それでも行かなくてはならない。
仲間が行くと言うのなら仲間を助ける為に、友と一緒に」
キャミーがリーンに決意を告げる。
「私も仲間を見捨てるなんて嫌です。
例え一人でも行くと言うのなら、ほってはおけませんので」
ミリアも戦友を見捨てる事は出来ないと言う。
「そう、我々の友が突撃するのなら、私も伴に突っ込みます」
ラミルが当然の事のように呟く。
「リーン・・・中尉?」
ミハルが心配そうに声を掛ける。
「ふふふっ、あはははっ!」
突然リーンが笑い出した。
「リーン中尉?」
4人が笑うリーンに驚いて見詰める。
「あはははっ、みんな馬鹿ね。ほんと馬鹿正直なんだから。
私みたいな馬鹿指揮官にはちょうどいいわ!」
大笑いしながら4人を見回しながら。
「では、馬鹿者供!
明日は馬鹿正直の闘いを見せてやろうじゃないっ!」
力一杯右手を高く伸ばして4人に言い放った。
「おうっ!」
4人も手を掲げて気合を込めるのだった・・・
作戦は計画通り始められる事となってしまう。
ユーリ大尉は中央軍司令部に意見具申の為出頭するが・・・
次回 闘いの始まり
君は無謀な闘いの中で抗う、生きる残る為に!





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