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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第7章 永遠に紡がれる物語 Together Forever EP5 Soreceress transcends time and space<魔法使いは時空を越えて>Part2

最期の突撃。

戦い散り逝く命・・・


仲間の死を乗り越え、進むのは<フェアリア>!

モニターに映るのは、<希望ひかり>だった。


赤紫色に妖しく光魔法石に向かうのは・・・・



「ミハル姉!あれは間違いなくミハル1尉ですっ!」


歓喜の叫びがルマ少尉から溢れた。

<フェアリア>艦橋にどよめきが起きる。


「主砲っ!女神ミハルを援護しろ!急げ!」


副長のマジカ中佐が間髪を入れずに命令する。

3連装3基の46センチ魔鋼砲が測敵を急ぐ。


「魔鋼弾!ミハルの前に聳える尖塔を叩け!本艦の被害に構わず撃ち続けろ!」


マジカが手を差し出し命じる。

各員が持ち場を守って職務を果たさんとする。


「副長!<薩摩>が突っ込みます!」


異変を知らせる声が聞こえたのはこの時だった。


「なにっ?!<薩摩>が?!」


艦橋の全面ガラスを通して、その光景が観えた。


「辞めるんだ!源田2佐!」


モニターを観ていたマコト艦長の叫びが届く訳もなく・・・




「後は・・・頼みますよ。皆さんで世界を護ってください!」


それは死に逝く前に告げたかった心根こころね

通り過ぎていく仲間に対して、挙手の礼を贈るミノリの本音。


「お父様・・・待っていて。今から往きます!」


先に散った桜を追う様に・・・


「残る桜も散る桜です!」


女神ミハルの先駆けとなって尖塔に突き進む。

ミノリに微笑むレナとミツルが同じように挙手の礼を贈った。



「<薩摩>が?!ミノリ艦長っ?!」


直ぐ脇を巨艦が突き進んで往く。


「待って!待ってください!」


ミハルが押しとどめようと声の限りに叫び、艦橋の中を観た。


<あの人達はね、ミハル。誰かの為に死ぬ事を恐れてはいないの。

 むしろ、逆なの。誰かの為に死ぬ事を喜んでいる・・・そうは観えないかしら?>


リーンに言われて、ミノリの笑顔に納得する。


「でも・・・死ぬ事は諦める事になってしまうんじゃ・・・」


そこまで言って口を噤んだ。

自分も今からそれを行おうとしていたから。


<だからねミハル。みんなの想いを無碍にしては駄目。

 必ず大魔王を滅ぼして世界を救うの・・・解った?>


リーンの言葉に頷いた。

そして・・・手にデバイス槍を取り出し。


「槍よ!新たな力となれ!」


リーンの力を授かったミハルに因って、槍と錫杖が交わし合さった。

手にある槍の形が錫杖のように丸みを増す。

二股になっている穂先の中心に蒼き魔砲の玉が現れる。


「マモル!リーン!これが最期の闘いだよ!」


終わらせる・・・全てを。

ミハルの決意に呼応する紋章が金色の光を放つ。




空中に浮かぶ戦艦2隻が突っ込んで来る。


最終段階に突入したのは<ケラウノス>も同じだった。


「「くっくっくっ!来るが良い愚かな人間共!

  お前達には消滅を与えてやろう、我の力に因って・・・」」


赤紫の魔法石。

その中に納められてある中性子発生装置。

全地球に放つ事の出来る出力を持つ悪魔の兵器。

装置は完全に整えられて発射の時を待っていた。


後は・・・


「「MIHARUプログラムを手中に収めれば良い。

  月の住人に二度と企てられなくしてやれば良いだけ・・・」」


大魔王は嘯いたが・・・


「「だが、最早適わぬというのならば。

  それを持つ娘諸共に消滅させる・・・までの事」」


手中に帰さなかった場合、殲滅の光を放つ事も辞さなかった。


「「もう間も無くだ・・・もう時は満ちておるのだ・・・」」


歯向かう戦艦をモニターに映した機械の中枢が断じていた。

赤紫に輝く魔法石の中で・・・他の演算処理機の干渉に気付かず・・・




大魔王の指示に従う防御砲火が一層激しく艦体を撃ち抜いた。

最早誘爆を喰い止める手段も無くなり燃えるに任せて突っ込んでいく。


目の前で繰り広げられる戦闘は一方的にも思えたが。


「「なっなんだとぉっ?!」」


大魔王は判断を誤った。

空中戦艦を撃沈出来なかったからだ。

人類に自ら与えた魔砲の力に因って造られた空飛ぶ戦艦。

自らが与えた神の力に因って、計算外の撃たれ強さを誇る人類の戦艦が体当たりを目指してきたのだから。


だが、まだ大魔王には余裕が残されていた。

外壁たる赤紫の魔法石を壊されたくらいでは内部の破滅兵器には影響が出ないと。


鉄壁を誇った防御を破られたのはショックだったが、最期に笑うのは自分の方だと判断した。


一瞬の演算停止が起きるまでは。



<薩摩>が赤紫の魔法石に突き立った。

4本ある艦首を突き立てた戦艦が内部に装填されてある主砲弾庫から誘爆した。


猛烈な火炎、真っ黒な煙・・・そして魔鋼機械による破壊が魔法石にひびを入れた。


モニターに映る爆焔が晴れた跡に残されたのは。


「源田2佐の死を無駄にするな!罅割れた箇所に集中砲火を!」


マジカが指示する。主砲が箇所へ目掛けて火を噴く。

罅割れた先に観えるのは、殲滅兵器本体。


「あれさえ、あれを破壊すれば!あの悪魔を倒せれば何もかも終えられる!」


マジカが身を乗り出す様に睨む。

だが、目の前まで迫って放った主砲弾では罅割れを拡大する事も出来ずにいた。


「最早・・・最期の手段を執るしかないのか?」


目の前で散って、後事を自分達に託した<薩摩>と、同じ事を行わなければならないのか。


「人類を救う為、生き残る人の為に・・・我々が為すべき事を行わねばならん!」


マジカが断じた・・・周りに居る皆を観てから。

どの顔にも憂いは感じられなかった。


「すまんな・・・みんな」


ふっと息を吐くマジカが突撃を命じようとした時。


「総員前部から離れよ!<フェアリア>最終兵器発動!」


艦長シマダ少将の下知がスピーカーから流れ出た。

マコトの声で、マジカが我に返って命令を復唱する。


「艦前部に居る将兵に告ぐ!直ちに持ち場を離れ後部に移動っ急げ!」


艦橋に集う士官達に向かって更に命じた。


「本艦の最後の武器を使われる!総員ショックに備えよ。

 使用後は直ちに離艦っ、総員退去準備をなせ!」


マジカが艦長命令を先走る。

だが、いみじくも間違いでは無かった。


「艦長シマダ少将だ、艦首ドリル作動開始!全速でぶち当たりドリルをめり込ませる。

 しかる後に自爆し、罅割れを増大するものとする!

 総員退艦準備!直ちに救命隊を組織しろ!」


次々にシマダ艦長からの命令が飛んだ。

まるで準備されてでもいたかのように・・・


艦橋に務める者達が艦首内に備えられてあるドリルの作動準備に掛る。

艦首部分に居た兵員達が即刻艦後部に避難する。

指揮を執るマジカ副長が、救命隊を組織して脱出準備を始めた。



「「あなた・・・私はミハル達とここに残るわ」」


寝かされた体をモニターで見詰めて、マコトに退艦を拒否した。


「ミユキが残るなら私の残るよ」


抜け出た魂の在処でもあるミユキの身体を抱き起こして、共にあろうと願った。

二人の旅路は<フェアリア>で終わるというのか・・・



「駄目・・・駄目だよお母さん・・・」


機械に残るミユキの心に誰かが話しかけて来た。


「「ミハル?!あなたなのね?!」」


<薩摩>自沈の後、ミハルはマモルの言葉に従い<フェアリア>に手を触れていた。


「お母さん・・・ごめんね、私・・・」


それ以上口に出したくなかった。出せなかった・・・


「「ミハル・・・あなたは<希望ひかり>の子。

  あなたが産まれる時に光を感じたの。この子はきっと<希望きぼう>なのだって。

  闇の世界を終われせてくれる<希望ひかり>だって・・・」」


機械なのに涙が溢れてくるのが感じられる。

お腹を痛めて産んだ子が、今自らから別れを告げに戻って来たのだから。


「お母さん、お父さんと一緒に・・・一緒に生きて」


涙ぐんでいるミハルの声を聴いた。

別れだと解っている娘が最期に話す声を聞き逃すまいと耳を傾ける。


「私・・・お母さんの子供で善かった。

 お母さんに産んで貰って嬉しいの・・・だから、悔やまないで。

 お母さんの子供であった事を誇りに思うから。

 お母さんと過ごせた日々を決して忘れたりはしないから・・・」


娘が今生の別れを告げに来た・・・

愛する我が子が去って行く・・・二度と逢えなくなると告げて。


言葉には出してはいない・・・だが、声はさよならを告げていた。


「お母さん、マモルだけは返してみせる。

 私のたった一人の弟だけはお母さんへ返してみせるからね。

 だから私の分までマモルを愛してあげて・・・」


訣別・・・最期に願うのは愛する人達の幸せ。

自分が叶えてあげれなかった想いの継承。


「「ミ・・・ミハル、帰って来て!いつまでも待つわ。だからっ!」」


母は娘を求める。


「うん・・・ごめんねお母さん・・・もう行かなくては」


娘は旅立とうとした・・・遥か遠くへと。


「「ミハルっ!死んだら駄目、死んじゃったら駄目なのよ!」」


母は娘を抱きしめたかった。繋ぎ止めたかった・・・叶わぬと知りながら。


「お母さん・・・私は死なないよ、消えちゃったりはしないから。

 少しの間だけ・・・遠くに行くだけだから・・・

 ミハルはみんなの中に居るから・・・お母さんの中でいつも笑ってるからね」


娘は最期まで<さようなら>の一言を告げなかった。


「「ミハル!あなたはミユキの娘、人間ひとの子ミハルなのよ!」」


女神なんかじゃない、人なのだと母は呼んだ。

そう・・・神ならば。

神だったら・・・死などない・・・別れが訪れる事も無い。

だが、娘は人の子・・・自分の娘なのだと叫びたかった。


「往ってきます・・・お母さん・・・」


艦に添えられていた手が、悲し気に離れた。


挿絵(By みてみん)


「「ミハル!待ってミハル!」」


母の叫びが白い魔法衣の後ろから無情に流れた。


戦艦<フェアリア>は突貫する。

最期の瞬間を迎える為。


母と娘の想いを断ち切る様に・・・

母との別れ・・・ミハルの心に過ぎ去るのは?!


ミハルは心に決めていた。

誰にも話はしなかったが・・・


遂に突入を図るミハル達!だが・・・


次回 EP5 Soreceress transcends time and space

        <魔法使いは時空を越えて>Part3

君は最後の最期まで諦めない!たとえこの身が滅び去ろうとも・・・

カウントダウン! アト 30分!!

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