第7章 永遠に紡がれる物語 Together Forever EP4Farewell Beloved people<さらば愛しき人々よ>Part8
遂に・・・
作者注・)遂にこの時を迎えてしまいました。フェアリア書いてきて一番辛い時が。
二人は塔を抜け出す為に階上へと走る。
螺旋階段を上り切らねば塔から抜けだす事は適わない。
リーンに手を曳かれるミハル。
自分の為にまたしても友が犠牲になっていくと思って・・・
「ミハル!しっかりするのよ!」
励ましの声にも虚ろな顔を向けて、唯頷くばかりだった。
「ミハエルさんはあなたに叶えて欲しいから、立ち塞がったのよ」
何を言われても空しかった・・・どんなに励まされたにせよ。
「うん・・・解ってるから。
私に掛けられた願いも、ミハエルさんの心の内も・・・」
解ってる・・・そう思っていた。
そのつもりだった・・・リーンに言われるまでは。
ミハルが答えた瞬間、リーンが立ち止まった。
握られた手が震えていた・・・リーンの。
「ミハル・・・あなたは解っていない。
あなたは自分の中でそう思っているだけなのに気がついてはいない」
リーンの声が震えている。
大切な人が悲し気に見詰めている。
「何に?私の為に死を選んで逝く人の事を?」
問いかけたミハルに、リーンが首を振った。
「あなたは自分を責めているだけ。
自分の運命を呪って悔やんでいるだけ。
人が死をも恐れず、受け入れる時を知らないだけ。
その先に待つ光を手にしようとするのを憐れんでいるだけ・・・」
語り掛けてくるリーンの声が、一つの想いに気付かせる。
「光?死んでから光を手にする事が出来るの?」
自分も・・・死を甘んじて受け入れそうになった事がある。
大切な人の願いを果たしてあげられる・・・そう思った時が確かにあったと。
ルシファーの願いを最期の瞬間に果たせたと思った時の事が、思い出される。
ー あれは・・・ルシちゃんの願いを果たしたかったから。
死んでしまうなら一つでも善いから大切な人の願いを果たせてあげたかったから。
自分を滅ぼしても大切な人の希望を取り戻してあげたかったから・・・
そうか・・・と、気付いた。
リーンの言いたい事が少しだけ伝わって来る。
ミハエルが望んでいる事に。
自らを滅ぼされても、誰かの願いを果たさせてあげたいと願った事に。
「ミハル、ミハエルさんはね・・・罪を拭いたかったんだと思う。
数多くの罪を・・・グランとの約束を果たしたかったんだと思うんだ」
リーンが悲し気な瞳で友の名を言った。
「グランは眠る私の中でミハエルさんと闘って散ったの。
私を邪な者から護る為に闘ってくれていたグランを・・・殺めてしまったのよ」
初めて聞かされた。
克て自分と契約し、友として接してくれた聖獣グラン。
彼がリーンと共に行方知れずになった事は聞いていたのだが。
「グランが?ミハエルさんに?」
信じられなかった。信じたくなかった。聞きたくなかった。
今、自分の為に自らを滅ぼす決断を下した娘が、友を滅ぼしたなんて。
「そう、大魔王に操られたミハエルさんに因って。
グランはミハエルさんの事を解っていたと思う。
だから、最期の瞬間に託したんだ・・・光を取り戻す為に。
彼は確かに私を護る為に滅んだ。
それは間違いのない事・・・でも。
でも、本当は希望を取り戻そうと願ったんだ。
自分の死を以てミハエルさんの光を取り戻そうとしたんだ。
そうすることで、誰かの希望になろうとして・・・」
それがリーンの言いたかったこと。
誰かが誰かに願いを託す。
自分が失われる事になろうとも誰かに希望を託す・・・
<< 絆>>
死しても尚、受け継がれていく。
失われる事のない<希望>への架け橋・・・
「・・・<希望>・・・それが<真理>なんだね。
それこそが、本当の<理>なんだね?」
気付かされた女神の眼に、光が取り戻された。
「そうとも言える。
だけど、それに気付いたあなたは今、成し遂げねばならない。
<理>を司る女神として・・・人の世界を救わなければならないの。
愛を教える者として、<理>の絆を世界に広める者として」
大魔王が<無>を司る者だとすれば、ミハルは<絆>を司る者。
両極の戦いの終止符は、今から起きるハルマゲドンに因って閉じられるだろう。
最期の瞬間。
どちらが残るというのか。
「リーン・・・私を紋章の所まで。
奪われた太陽神のレリーフを取り戻させて?」
遂げようとする願いの為、自分が闘わねば報われない人の為。
「あのエンブレムを取り戻さないと、魔砲力が発揮出来ないの。
私に紋章を取り戻させて!私の全力全開魔力を取り戻させて!」
リーンに願うのは、太陽神たる者のレリーフ。
希望の魔砲を放つ事が出来る、力の象徴。
「ええ、勿論よミハル。
あのエンブレムは此処より上にある魔鋼機械に納められてあるの。
そこにはあなたのエンブレムを護っている宿りし人も封じ込められているわ!」
既に機械はホマレに因って破壊されている事に気付いていないリーンが情報を話す。
「うん、解った!
紋章を取り戻せたら急いで赤紫の魔法石に珠を投げ込もう!」
右手に着けた碧き宝珠を掲げてリーンに応えた。
階段を駆け上がる二人の女神に、大魔王配下の防御システムが作動する。
(( ガガガッ ))
機銃とレーザー砲が、射撃を開始する。
魔法障壁で防げるだけ防ぎ、手にしたデバイスから魔砲を放つ。
リーンの錫杖から、審判の女神バリフィスの力<ジャッジメント>が放たれる。
集う機銃座が魔砲で高熱に焼かれ、砲弾が誘爆する。
ミハルの神の槍から、蒼き<エクセリオ・ブレイカー>が放たれ、レーザー砲が噴き跳ぶ。
少しづつ。
少しづつ階段を昇りつめて。
「ミハルっ、もう少し。あと少しで辿り着けるから!」
ミハルの前に立つリーンが励まして来る。
「リーン?!どうしたのっ?どこかに怪我でも・・・」
砲撃に集中していたミハルには観えていなかった。
「いいえ・・・大丈夫よ。
ミハルにだけは当てさせたりしないから」
気が付くのが・・・遅過ぎた。
自分の前に立つリーンが、護ってくれていた事に。
螺旋階段で・・・ミハルは眼を見開いた。
愛しい人が護り続けてくれていた姿に気が付いて。
「ミハル・・・もう直ぐ・・・辿り着けるからね」
振り返ったリーンの微笑みが意味しているのは・・・
「い・・・嫌っ、嫌ぁああああぁっリーーーンっ!!」
悲鳴が闇に木霊する。
永遠を誓い合った2人の間に・・・
別れが襲い掛かろうとしています・・・
リーンはどうなるというのでしょう?
ミハルは・・・その時。
次回 EP4Farewell Beloved people<さらば愛しき人々よ>Part9
君は忘却の彼方に言ってしまうのか?愛する人を残して・・・
人類消滅まで残された時は幾許も無い 残り9時間!!カウントダウン開始!