第7章 永遠に紡がれる物語 Together Forever EP4Farewell Beloved people<さらば愛しき人々よ>Part7
大魔王に押し込められていたミハルの前で起こった爆発!
突然の爆発は誰が?!
それは・・・奇跡の幕開けだったのか?
その爆焔は希望への架け橋だったのだろうか?
並みいる闇の魔物達が一瞬の内に噴き跳ばされて行った。
「「なんだと?!馬鹿なっ?!」」
現れ出でた姿に、大魔王は計算が狂った事に気付いた。
だが、瞬時に対応策を練る。
即座に現れた者に対しての行動を起こす・・・
一瞬、何が起きたのか解らなかったが。
空間に光が差し込んで来た事だけは解る。
「あっ?!ああっ!」
現れた人を観た瞬間に涙が湧いて来る。
「リ、リーンっ?!」
そして。
「ミハエルさんも?!」
2人が魔砲を放ち、闇の者達を次々に打ち倒していく。
「ミハルっ!間に合ったみたいね!」
御主人様が仁王立ちでペットに微笑んだ。
「良く頑張ったわミハル!今、そっちに行くからね!」
女神ミハエルが邪魔な魔物を吹き飛ばす。
ボロボロにされた魔法衣姿のミハルの元へ駆け寄った二人の女神が、大魔王の前に立ち塞がった。
「これまでと覚悟しなさい!もう好き勝手にはさせやしないわ!」
リーンが審判を司る女神の錫杖を振りかざす。
「ミハルは、お前になんて渡さない!」
ミハエルが両刃剣を薙ぎ払う。
「「愚か者め!どうやって抜け出して来たかは知らぬが。
この場に来た事を後悔するが良い!!」」
大魔王は二人の女神を睨つけて、新たな闇を繰り出す。
空間に再び暗闇が集い始める。
「愚か者はお前の方だ大魔王!
どれだけ闇の者を繰り出して来ようが、女神3人には通用しない!」
魔砲力で続い始めた闇を一撃で吹き飛ばすミハエル。
「お前に欺き続けられた恨みを思い知るが良い!」
紅き瞳に貶められたミハエル。
元の綺麗な蒼き瞳には戻る事が出来ないのか。
「お前に因って与えられた力だ!
お前に誑かされた天使ミハエルの恨み、お前に因って貶められた身体。
今こそ、倍にして返してやるっ!
受けるが良い、これが殲滅の女神となったミハリューの魔砲だ!」
モニターに向けてミハエルの最大魔砲が放たれる。
デバイス剣から紅き魔砲弾が飛び征く。
モニターに吸い込まれた魔砲弾に因って大魔王の影が打ち破られた。
(( グオオンッ ))
爆焔がモニター自体を破壊する。
「思い知ったか!」
影を吹き飛ばしたミハエルが吠える。
モニターと影が消えた空間には闇の魔者達も潰え去っていた。
「ミハエルさん!リーン!ありがとう!」
傷付いた身体を奮い立たせ、二人に感謝したミハルへ。
「お礼は後で!早く停めないといけないのよ!」
リーンがミハルの身体を支えて教える。
「うん、この蒼き珠を<ケラウノス>に叩き込まなきゃ・・・だね!」
大魔王が消えた今が、そのチャンスだと思った。
この空間から抜け出て、コンピューター本体に埋め込まねば終わりは来ない。
そうする事でしか、世界は救う事にはならないと解っていた。
「ミハエルさん!この塔のどこにあるのか知ってる?」
ミハルが訊ねた時、ミハエルが振り返り言った。
「ミハル、覚えておくのよ。
破滅兵器を停めれるのはあなた。ミハルにしか出来ないという事を。
そしてこの塔にある赤紫色の魔法石に<ケラウノス>の本体が眠っているの。
その中にあるコンピューターこそが大魔王たる者の本体。
そこに行くには空を飛ばねばならない。
近付く事も、辿り着く事も空からしか出来ないの」
教えたミハエルの顔が険しくなる。
「いいわねミハル。
あなたがやらねばいけない。
他の誰でもない、ミハルが倒さねばならないの!
あなたが世界を救わねばいけないの・・・いつか、言った通りね」
ミハエルは昔の記憶を辿っていた。
蘇ってからの記憶を・・・フェアリアでミハルに告げた運命の事を。
「ミハル・・・あなたは強くなったわ。
こんなに・・・強くなった。私の想像を遥かに超えた存在になった。
天使ミハエルよりもずっと・・・ずっと強くなった」
再び闇が空間に現れ始めた。
ミハエルに因って一時的に支配出来なくなっていた回線を、復旧させた大魔王に因って。
「ミハル、最期のお願いだから聞いて。
ここから出て直ぐに<ケラウノス>を破壊して。
そうしなければ、また世界は振り出しに戻されてしまう。
何度も繰り返された誤りに・・・再び闇に支配される世界へと戻されてしまうわ」
闇を睨んでいたミハエルが二人の女神に振り返って。
「これが最期だから。
私に構わずに脱出して。そして人類の希望を取り戻すのよ!
人が闇に支配され続ける世界を終わらせて!
あなた自身の為にも、あなたの大切な想いの為にも!」
デバイス剣から紅き光を放ち、ミハエルが闇に立ちはだかった。
「ミ、ミハエルさんっ?!」
思わず手を差し出したミハルを押しとどめたリーンが。
「ミハル・・・行きましょう」
脱出を促して来る。
「リーン?!なぜ?どうして停めるの?」
ミハルにはリーンがなぜ停めるのか解らなかった。
伴に闘うべきなのではないのかと。
「ミハル・・・ミハエルさんはね、罪を償おうとしているのよ。
沢山の命を奪ってしまった事で穢された体と心の・・・粛罪を求めて」
審判の女神リーンが教えた。
「そんなの!そんなの私だって同じなのに!
ミハエルさんより私の方が罪深いのに!」
リーンを振り解いてミハエルの元へ駆け寄ろうとするミハルに、
リーンが消え入るような声で教えるのは。
「ミハル、解ってあげなさい。
ミハエルさんはもう人に生まれ変われる事が出来ないのよ。
愛する人に逢う事も、約束を果たす事さえも出来なくなってしまったのよ。
喪われたのは心だけじゃないの、希望さえも奪われてしまったのよ」
瞬間、何もかもが解ってしまった。
自分に因って、ある神が人に転生していた。
その神だった人と、ミハエルが相瀬を果たせなくなってしまった。
「つまりは・・・天使と悪魔。
相違う者として最期を迎える事になってしまった・・・の。
約束を果たす事も無く・・・」
リーンの声に、耳を奪われてしまった。
果たせぬと・・・
千年の約束は・・・成就する事はなくなってしまったのだと告げられて。
「そんな・・・嘘よ。
ミハエルさんは欺かれていただけなのに。
女神にされたのも、人を殺めたのも。
みんな・・・皆、私の所為なのに?!」
捕まれた手を振り解いて停めたかった。
だが、ミハエルはもう・・・
「早くっ!早く往きなさいミハルっ!何をグズグズしているの!」
大魔王との闘いを繰り広げようとしていたのだった。
自ら葬り去れれるのを受け入れて。
「ミハエルさぁ~んっ!」
伸ばした手に・・・叫んだ声に。
帰って来るモノは・・・悲しみ。
「ミハルっ!急ぐのよ!一刻も早く!」
振り返らず睨み続けた。
二人の女神が脱出していけるように。
2人が逃れ、二人が成し遂げてくれるのを願い。
「さよなら・・・ミハル。
ありがとう・・・ミハル。
生き続けて・・・私の分まで」
魔力では太刀打ち出来た。
だが、それも僅かな時間でしかないと解っていた。
「「抗うかミハエル!
そなたの身体は我に冒されておる。
気がついておろうが!お前の中にある闇に!
我の思うがままに弄んで来た体の中に!」」
世界を牛耳て来た者がミハエルを脅す。
「「さあ、もう善かろう。
MIHARUを手にする事が出来るようになった今。
お前などに構っておる程暇ではないのでな。
消滅するが良い・・・今直ぐに消し去ってくれるわ!」」
影がミハエルを指す。
「ふっ!聞いて呆れる。
お前が世界を思うが儘に出来たと思うのなら大間違いだわ!
私を冒したなんて思うのなら大馬鹿者よ!
体は操れたにしても心までは操る事なんか出来なかったじゃない!」
ミハエルの身体に闇が憑りつく。
「それはつまり、お前が神でも支配者でもない証。
心も思うように出来ない半端な事で全能の神だなんて、善くもほざけたわね!」
身体の自由を奪われたミハエルが嘲り嗤う。
「「おまえこそだミハエルよ。
今こそ滅ぶが良い・・・我を愚弄した罪を、身を以って知るが良い」」
大魔王が吠える。
しかし、ミハエルは嘲る。
我が身が滅ぼうと、心は滅ばぬとでも言うが如く。
「お笑い種だわ、大魔王!
滅ぼすだけに時間を掛けているのに解らないの?
あの娘達がお前を滅ぼせば私は報われる・・・というのに!」
大魔王がミハエルを睨む。
こうして時間稼ぎに付き合った自らの傲慢に気付いて。
「「お前には滅ぶまで、もっと苦しみを与えねばならん。
間も無く全てが終わる・・・その時まで苦しまねばならない」」
大魔王は選択した。
「「お前は人として滅びを迎えるが相当のようだ。
この場で滅ぶよりも尚、人間として絶望を味わわなければならん。
それが我に楯突いた者への処罰。
人間として苦しみ、惨めに死に絶えるが善かろう」」
間も無く<無>を拡散し、人類は全て滅ぶ。
その中のチッポケな一人として死に絶えるのが、女神として抗った者に対する厳罰だと。
大魔王は判断を下した。
<ああ・・・それならば。少しでも近付ける・・・>
ミハエルに浴びせられた闇の光。
女神が堕ちる・・・人へと。
闇の力に因って・・・ミハエルの魂は墜ちて行く。
身体を闇に冒され、朽ち果てて行く中を。
燃え残った女神の肉体に眼を落として確認した大魔王が嘲笑った・・・
朽ち果てて行く身体から墜ち行く魂。
その魂が導かれていくのは・・・<約束>の場所
ー ああ・・・ルシファー・・・あなたはどこに居るの?
墜ち行く魂が願うのは、唯一つ・・・
ミハルとリーンは脱出を計る。
ミハエルが残したヒントを胸に、最期の闘いへと走るのだった・・・・
その時・・・ミハルは・・・悲鳴を上げる・・・
次回 EP4Farewell Beloved people<さらば愛しき人々よ>Part8
人類消滅まで残された時間は幾許も無い 後10時間!!
いよいよ・・・来てしまうのか・・・胸アツだな