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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第7章 永遠に紡がれる物語 Together Forever EP4Farewell Beloved people<さらば愛しき人々よ>Part5

ホマレの犠牲の上で・・・


救われた魂達が居た。

チアキは爆風に飛ばされて・・・・

目標地点まで僅か数十キロまで辿り着く事が出来た。


それは数ある砲塔の殆どを喪失するという代償を払って。


「機関損傷!出力80パーセント迄低下!」


黒煙が空に噴き上がる。


迎え撃って来た艦隊との交戦で2隻は破り去る事には成功したが。


「後方の<薩摩>速力を維持できない模様!」


ルマ少尉が副長のマジカ中佐に叫ぶ。

モニターを切り替えた副長が観た姿には。


「うん、<我に構わず>・・・か」


<薩摩>には最早戦闘を継続する力は残されても居ないだろう。

破壊された舷側から黒煙が噴き上げ、主砲は最期の敵を撃ったままの姿で停止している。


<フェアリア>でも、乗組員の半数近くに被害が及んでいた。

半数近くの乗員が大小の怪我に喘いでいる。


「本来ならば・・・撤退すべきだが」


マジカは艦橋から見下ろす艦上の惨状を目の当たりにしても怯まなかった。


「これからが最期の一戦なのだからな」


前方に拡がる敵地。

残された時間も限られている。


「我々に懸っている命運は、人類そのものを意味している」


人類が滅び去るか、敵たる神を滅ぼせるか。

勝利はどちらに転がるか、未だはっきりとは決められてはいなかった。


「我々がここで闘う事は、あの中に送り込まれた者達にも分かっている事だろう」


現れ出た神の大陸。

見え始めた神々の神殿と呼ばれる要塞都市。


高い壁に囲まれた巨大な機械帝国。

中心部に立つ尖塔の先に観えるのは赤紫に輝く巨大な魔法石。


この世界に魔砲力を与えた神が最期に放つ殲滅のいかづち

あの魔法石が輝く時・・・


「人類を殲滅する、悪魔の輝き。

 それを放てば<無>となる・・・か」


悪魔と<無>・・・

それが意味していたこの世界の真相。


そして。


「ミハルを追い求めて来た者が辿り着くのは終焉か、継続か。

 答えはあの中に居る者達で決められようとしている」


シマダ艦長が魔鋼機械に手を添えた・・・






_________________






爆発が身体を揺さぶった。

振動が辺りの空気を入れ替えた。



「「君、大丈夫かい?」」


基部を破壊した爆発によって意識を失っていたチアキに誰かの声が降って来る。


「チアキ?!しっかりするんだ!」


どこかで・・・どこかから懐かしく思える人の声が呼んだ。


<チアキ、まだ眠りにつく時じゃないよ?

 私の分まで闘うって約束したじゃない?>


この声は解る。だって・・・


「シャル・・・シャル?シャルレット?」


一番大好きな王女の声だったから。

自分を送出す事に反対していた大好きな王女様の声だから。


気絶したチアキを呼び返したのは、大好きな少女の言葉だった。


「あ・・・れ?シャル?シャルレットは・・・此処には居ない筈?」


やっと自分の眼が開いた事に気付いた。

ぼんやりした目を開けて、周りを見渡して・・・


「あ?ああっ?!マモル少尉じゃないですか!」


爆風に飛ばされたのか、先程まで澱んでいた空気も入れ替わったと言うのか。

マモルが佇む姿がはっきりと観えている。


「気が付いたかいチアキ?君がどうしてここに居るのか知らないけど。

 良くやってくれたね!助かったよ!」


マモルの言葉に、チアキの記憶が呼び覚まされた。


「違います、私なんかじゃありませんから。

 ここを開放したのも、巨大な機械の基部を破壊したのも。

 みんな・・・みーんな、中島さんですから」


別れの際に観れた笑顔を思い出し、チアキは涙ぐんだ。

チアキの傍に人の気配は残されていない。

つまりは・・・そういう事なのだ。


「チアキ、君はここから脱出するんだ。いいな!」


悟ったかのようにマモルが命じる。

中島ホマレ3尉と同じ目に遭わせない様にと。


「いいえ!ミハル分隊長を救い出すまでは還れません!」


即座にチアキが反撥する。

何の為にここに居るのかを教えようとして。


「いいかいチアキ。

 ここに居るのは人じゃない存在なんだ。女神と化した人達ばかりなんだぞ?

 ミハル姉だってそう、リーン様もきっとそうなんだ。

 だから、君は闘う事すら出来っこない・・・足手纏いなんだ」


暴言を吐いて、チアキを断念させようとした。

しかし、目の前に居る魔砲少女には効かなかった。


「いいえ、誰が何と言おうが。

 ホマレさんとの約束を守り通します!それしか報える方法がありませんから!」


真っ直ぐなチアキの眼に圧されてしまう。

犠牲者と交わした約束を果たそうとするこの子に、何を言おうが無駄な事だと思う。


「そう?それじゃあ勝手にしてろよ」


マモルがそう告げて離れると、掲げられたある紋章に手を翳した。


「あ、それは?もしかして・・・太陽神ラーの紋章では?」


オスマンに滞在していたチアキには見覚えがあった。

宮殿にも飾られてあった輝く太陽神のレリーフを覚えているから。


「ああ、コレだろ?

 確かに神の紋章だと思う、物凄い力を持っているようだからね」


翳したままでマモルが教える。


「待ってください!その紋章がこんな場所に保管されているなんて。

 おかしいとは思いませんか?ここは巨大な機械の基部なのですよ?」


なぜだとは分からない事も無い。

昔・・・姉にもこんな時があったのだと思えば。


「チアキは知らないだろうけど。

 ミハル姉には似たような時があったんだ。

 悪魔に捉えられて<無>に貶められようとしていた時が。

 ちょうど・・・こんな場所で・・・ね?」


先程まで薄暗く闇の霧に支配されていた。

それが強烈な爆発によって破壊された・・・魔鋼の破壊力で。


「この世界に魔砲があるのが。魔力というモノが存在するから。

 僕も君も・・・此処に居るんだ」


チアキは手を紋章へと翳しているマモルを観て。

話している相手が自分ではない事に気が付く。


「チアキ、これから僕がどうなろうとも手出しするんじゃないよ?

 この紋章に僕が同化して居なくなったとしたら、ミハル姉の元に届けて貰えるかい?」


全く・・・意味が解らなかった。

紋章と同化する?

マモル少尉が居なくなる?


「どういうことなのでしょうか?」


判らず訊ねるしか解答は得られそうにもなかった。


「チアキ、この中に居るのはね?

 自分が誰なのか分からなかった男の子。

 さっき・・・爆発でよろけた僕が掴んだ時に解ったんだ。

 この中に居るのは・・・<僕>だって事に。

 僕自身がこの中に居る・・・MIHARUの弟が・・・ね」


眼が見開く。

マモルが言った事を理解出来ずに。

だが、マモルはもう・・・消えかけていた。


「待って!待ってくださいマモルさんっ!あなたが消えちゃったらミハルが?!」


例えようもなく悲しむだろうと。


だが。


「いいや、僕はミハル姉を助けたいだけなんだ!

 いや、この中に居る<僕>も、助けたいと願うから!

 この紋章をミハルに届けて! <希望>をミハルに託して!」


挿絵(By みてみん)


消えゆくマモルの声だけが残った。


「嫌ぁーっ!マモルっ?!マモルゥっ?!」


(( カランッ ))


紋章が輝きを放ちながら床に堕ちた・・・



弟は・・・消失してしまった。

願うのは姉ミハルを救うことのみ。

後事をチアキに託して・・・


次回 EP4Farewell Beloved people<さらば愛しき人々よ>Part6

君は救い出すことに全精力を使い果しても悔いはないというのか?

人類消滅まで残された時間は幾許も無い ・・・後120時間!!

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