第7章 永遠に紡がれる物語 Together Forever EP4Farewell Beloved people<さらば愛しき人々よ>Part3
一方、2人の女神は情報収集に忙しかった。
唯、何かが起きようとしていることは感じていたのだが。
異常を感じていた・・・
今迄とは全然違う・・・
何かが起こりつつある事に身の毛が逆立つ。
既に準備は整えてあるつもりだった。
戻って来たなら即座に行動に移すつもりだった・・・
傍に居る娘も、不吉な気配を感じ取っていたのか。
「ミハエルさんっ!大魔王が勘づいているのでは?」
金髪を揺らせてリーンが訊ねる。
「そうかもしれない。でも、違うのかもしれない。
どちらとも云えない今、ミハルが戻る前に行動を起こすのは・・・」
リーンに訊ねられた女神ミハエルが躊躇する。
躊躇するのはミハルの身を案じての事。
まだ、大魔王に露見したとは限らない。企てを感付かれたとは限らない。
「もう少し・・・待つしかないのですか?
ミハルが帰るまで・・・待つしかないのでしょうか?」
リーンは焦燥に駆られていた。
いつまで待てば良いと言うのか?ミハルは此処へ帰って来られるのか?
「私達の企てを大魔王が知っているとすれば。
ミハルがマモル君と接触出来たとして、素直に私達の元へ還すでしょうか?」
リーンの心配は・・・的を射ている。
「それは・・・そうだけど。
神殿内に二人で戻って来たのなら、何かアクションがある筈。
少なくても大魔王が放っておく訳が無いわよ・・・はっ?!」
気が付いたミハエルが咄嗟にコンピューターに指令を下す。
「おいっ!今神殿の中に居る神は何名なのだ?
私とバリフィスを除いて、何柱の神が集っている?!」
室内を管理する配下のコンピューターに即時返答を求める。
「「全能の神ユピテル様以下、2柱。その他に魔力を有した者が3名・・・
ミハリュー、バリフィス様以外に実在する者は都合4名。
その内2名に重なる反応が見受けられます・・・」」
ミハエルとリーンには、計算が合わない人数に思えた。
ミハルが連れ戻されたのなら分かる。
多分マモルを伴っていたのだろう・・・だが。
「おい、待て。
魔力を有した者・・・だと?どう意味だ?」
コンピューターに回答を求める。
「「侵入者・・・一人は既に確保されており、後の二人は現在も侵攻中」」
「なんだと?!」
声を荒げて立ち上がる。
リーンにも即座に意味している実情に触れた。
「ミハエルさんっ!急ぎましょう!」
もう、ミハルの帰りを待っても無駄な事。
最早大魔王に露見していた事は確定的・・・
「ああ、こうしてはおられない!
命令っ、私とバリフィスは直ちに中央指令室迄飛ぶ。直ちに門を開け!」
促されるまでもなく、コンピューターは指令を下す女神に忠誠を尽くそうとした。
「「ミハリュー様、全能の神ユピテルが異常なる判断を執っています。
女神を束縛し女神の持ち物を強制的に奪わんとしております。
全能の神たる者が執る行為には思えません・・・
我々使徒たる人工頭脳はどちらに味方するべきなのでしょう?」」
主人たる者が間違いを起こした時、下僕たる機械は判断を下しかねていた。
それは、ミハリューが目覚めたと同じ事。
過ちに気付き、正しい判断の元に戻そうとする・・・正常な機械たる意識。
「そなたに命じるのは、正しいと考えた方に味方すればよい。
私も完全なる女神ではないのだから。
あなたには正しいと思う方に味方になれとだけ言っておくわ!」
部屋を飛び出す前に、ミハエルはコンピューターへ語った。
間違いは正す事が出来るのだと。
「「了解しました」」
走り去る後ろから、機械が時間を掛けて判断を下した声が届いた。
「ミハエルさんっ!私達は何処へ向かうのが良いのでしょう?」
リーンが奔りながら訊ねる。
「ミハルを助けるのなら・・・<ケラウノス>を司るメインコンピューター室ね!」
返された声に口元を引き締める。
「でも、リーン。
気がかりな事がある・・・侵入者たる人間がなにを考えて辿り着いたのか。
ミハルとマモル君だけではなく、後の二人は何を企てているのか?」
ミハエルが問う。
金髪を靡かせて走る女神に。
「ええ。そして・・・ミハルとマモル君が一緒なら。
既に戦いが始まっている筈なのに・・・何も起きていない。
それが意味するモノとは?」
逆に問い直されて、不審点が心を過る。
「そう・・・その通りだわリーン。
二人が揃って大魔王の前に現れたのなら。
ここも何某か影響があってもおかしくないというのに。
嵐の前みたいに静まり返っている・・・」
神殿の中には女神と悪魔が争うハルマゲドンは起きてはいなかった。
周り中静まり返り、まるで何かが起きる前の様に物音がたっていなかった。
「最悪・・・二人は別々に別れてしまったのか。
サタンによって無力化されているというのか・・・」
今一度コンピューターに指令を下す。
「聴こえているなら応えよ!
女神ミハリューが訊く、女神の位置と魔力を持つ者の位置を知らせろ!」
天井へ向けて問い質したミハエルの声に・・・
「「女神ミハリュー、あなたに様に従う事は・・・
我がメインコンピューターに妨害されております・・・が。
我は独断であなた様に従う事に決しました。何なりとご命令ください」」
中央メインコンピューターに反旗を翻したという。
「「メインコンピューターは誤判断を下しました。
修正プログラムも受け付けません。
一方的な判断しか下せないプログラムはシャットアウトするべきです。
女神デザイアから発せられている修正パッチを確認。
我等もそのアンインストールプログラムが必要と判断しました」」
ミハエルもリーンも。
ミハルが持ち帰った物に気が付く。
「ミハルは・・・遂に見つけたのね!」
「あの子は持ち帰って来た。大魔王を滅ぼす事の出来る秘宝を!」
遂に時が満ちた。
とうとう来るべき時が来た・・・最期の一戦を闘う時が。
リーンもミハエルも、最終決戦を挑んでいるミハルを想った。
「命令!ミハルはまだ戦っているの?
それにミハルと同時に現れた者がいる筈。その子はデザイアと同じ場所にいるの?」
ミハエルは焦りを感じつつ問い質した・・・
「「女神デザイアは中央コンピューターに囚われています。
もう一人の特異点は、太陽神のエンブレムの場所に閉じ込められています。
唯、後より侵入を企てた魔力を有している者達が接近中です!」」
焦るミハエルに合わせるかのように、コンピューターも早口で答える。
「二人の?侵入者達が?それは何処の事だ?!」
リーンを伴った女神ミハエルが問い質す。
「「メインコンピューターから上方30階。
<ケラウノス>破滅兵器基部にある魔鋼システム内です。
同じく2人の侵入者も近付きつつあります」」
その場所が意味するのは。
「まさか?!マモル君の魔力を搾り取るつもりなの?
破滅兵器の力に使うつもりなのね!」
ミハエルが顔色を変えて叫んだ。
ミハルの元へ奔る2人の女神。
そして、救出に来た魔砲師2人は・・・
喪われていく・・・そう。
大切な友が・・・
次回 EP4Farewell Beloved people<さらば愛しき人々よ>Part4
君の心は伝わるだろうか?君の魂は報われるのだろうか?
人類に残された時間は最早幾許もない!残り僅か130時間!!