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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第7章 永遠に紡がれる物語 Together Forever EP4Farewell Beloved people<さらば愛しき人々よ>Part2 

神の神殿・・・


やってきたのはミハル達姉弟だけでは無かった?!


そして・・・

身体が一瞬にして掻き消えた。


そう感じた・・・


まさか、本当にこんな事が出来るなんて・・・思いもしなかった。


白い魔法衣が、まだ身体に着せられている。

まだ、意識も体の自由も失われていない。

隣に佇む人も・・・


「中島さんっ!大丈夫ですか?」


蒼髪の少女が身体を揺さぶった。


「ああ、アンタは?大丈夫なんやな?」


右手に携えたデバイスを握り締めて訊き返す。


「はいっ!私はへっちゃらでした!」


元気な声が跳ね返って来た。

ぴょんと撥ねた癖っ毛が揺れている。


「チアキ少尉とかいうたな、アンタ。

 魔砲師としての力は相当なんやな・・・」


そう嘯く緑の魔法衣を纏うホマレ。

2人が辿り着いた処に、必ずいる筈の二人を探しす。


「この辺りには居ないみたいですね?

 もっと奥の方かもしれませんよ・・・往きましょう」


チアキ少尉に言われるまでも無い。

デバイスに納められた物を手渡す為に、此処まで来たのだから。


「うんこらせっと」


いつもよりも遥かに重いデバイスロッド。

持つ手に力を籠めなければ取り落としてしまいそうになる。


「そんなに?重いモノなのですか?」


振り返ったチアキが珍し気に訊いて来る。


「そやで?なんせ、1トン近いんやからな、こいつは」


意味ありげにホマレがロッドをみせる。


「そんなに?うわぁーっ、私には持てそうにもありません」


1トンと聞いたチアキの眼が丸くなって、


「でも、その<弾>が必要になれば。きっと成功するんですよね?」


訊かれた言葉に頷いたホマレが、


「そやけどな、肝心要の娘に手渡さんことにゃー、持って来た意味がないんやからな」


周りの気配を探りながら苦笑いを浮かべた。


チアキとホマレ。

2人が辿り着いたのは、ミハルとマモルが向かった神の神殿。


転送機械がまだ空中に残されていた・・・あの空に。

艦隊上空に残されていた転送機械を載せた飛行機械を拿捕したのは、ミノリの命令であった。


即刻、救援隊を派遣するに決したミノリからの意見具申が<フェアリア>へと届き。

艦長シマダ少将の裁可を受けて、人選されたのは。


「チアキ少尉、アンタ・・・かなりの魔砲師らしいな?」


ホマレが重そうにデバイスロッドを携えながら歩く。


「そうです、こう見えてもミハル分隊長から直に教わっていたんですよ。

 砲手としても、魔砲師としても・・・それに使徒たる者としても、です!」


笑う無邪気な笑顔に隠されていたのは、激しい戦いの末に掴んだ力なのか。

こうして言葉を交わすのも初めてなのだが、ホマレにはチアキとは初対面とも思えずにいた。


「アンタ・・・何を背負って此処に居るや?

 なぜこんな危ない橋を渡ろうとするんや?

 ミハルに・・・何を託されたと言うんや?」


自分なら・・・自分の事なら分かる。

ミハルに対して抱いてきた心が。

荒んでいた自分を慰め、心を開かせてくれた親友だから。


「そう言う中島さんは?なぜ?」


背を向けたまま、チアキが問い直して来る。


「ウチはやなぁ・・・約束やからや。

 ミハルとの約束・・・助けるって決めたんやミハルを。

 一度は見捨てるような真似をしてもうた・・・その罪滅ぼしや」


心の中では違うと叫んでいた。

声に出すのも野暮ったい・・・好きだからや・・・その一言が。


「そう・・・ですか。私は違います。

 私がここに来た理由はですね・・・あなたと同じですよ。

 ミハルの事が大切だから。あの人の事が大好きだからです」


挿絵(By みてみん)


見透かされた・・・でも、同じなのだと思った。

目の前で微笑む少女は、心からそう思っているのだと。

自分と同じ、自分よりもはっきりと感じているのだと。


「アンタ・・・ミハルと何があったんや?

 そうまで云い切れるほどの仲やったんか?」


訊いてから少し、後悔した。

でも、目の前に居る少女は首を振った。


「ミハル大尉は私の事なんて相手にしてもくれませんでした。

 初めて会う前から憧れの存在。

 逢ってからは厳しく接せられ、いくつもの訓戒を受けました。

 戦車で人と闘う時も、魔砲の力で闇の者と闘った時も・・・」


チアキが立ち止まってホマレに振り返ると。


「でも、ミハルはいつでも私の事を心配してくれていました。

 いつだってピンチの時には現れて助けてくださいました。

 いつだって温かく優しい目で見詰めてくださいました。

 こんなヘマな私の事を・・・優しく包み込んでくれていました」


真っ直ぐな瞳でホマレに告げる。


「だからっ、今度は私がミハルのピンチを救うんだって!

 大切で愛しい人を救うのが私に与えられた宿命さだめなんだって教わりましたから!」


澱みも霞みさえも無く、魔砲少女は言い切った。

それが自らに授かった力の在り様なのだと。

包み隠さずに言い切るチアキの瞳を見返して、ホマレも心を開く。


「そうなんや、チアキはん。

 ウチも同じなんや、ミハルに出逢えて・・・生まれ変われた気がするんや。

 死に損ないのウチの心を癒してくれた・・・ミハルが。

 死に急いでいたウチを諫めてくれたんやミハルっちゅー奴が。

 せやから、いつでもミハルの為なら死ねる。

 ミハルの為になるんなら、この命をくれてやる・・・そう思うてるんや」


口下手なホマレが心を曝け出してチアキに伝えようとしたのは・・・


「中島さん、ミハルならそんな事は望まないと思いますよ。

 女神となられた今なら尚の事。

 一緒に生き続けられるのを望まれるに決まってますから・・・」


ニコリと微笑んだチアキが教えたのは、ミハルの心。


「そうやったな・・・チアキはんの言う通りや」


微笑み返したホマレにも解っている。

ミハルはきっとそう言うだろうと。


「中島3尉、必ずミハル分隊長を。

 必ず・・・微笑みの女神ミハルを連れ戻しましょう」


敢えてチアキは女神と言った。

頷くホマレもそれが当然に聞こえた。


二人は連れ立って神の神殿を流離う。

大切な人を探し出し、連れ戻す為に。







__________







碧き魔法衣に絡みついて来る。

振り解けど振り払えど。


「お前なんかに!破滅兵器になんて捕まる訳にはいかないんだからっ!」


目の前に再び闇が現れていた。


「「抗う事など無意味。

  お前は私の一部分となる運命なのだMIHARUよ!」」


アンインストールフォルダ<MIHARU>を手中に納めんとする大魔王サタン

闇の下僕達が襲い掛かっていた。


女神の力を取り戻したミハルが、魔砲で応戦する。

寄せ来る者共を一掃するが、新たな闇の者が直ぐ様現れ出ては襲い掛かる。


ー マモル・・・何処なの?!


2人で神殿に転送された・・・筈だった。


マモルと共に闘える筈だった。


だが、マモルはどこかへ消され、大魔王の前に居るのはミハル唯一人。


「「助けなど来ん。

  呼んだとて誰もここへは入っては来れぬ。

  諦めるが良い、そなたは我が手中に帰したのだ!」」


悪魔の声が蝕んで来る。

悪魔の囁きが無情にも身体を弄ぶ。


碧き魔法石を着けていなければ。

MIHARUを宿した石を着けていなければ・・・


「でも、私は負けないっ!必ずあなたを倒して取り戻してみせる!

 機械に支配される世界から人の世界を!」


必死に抗うミハルに群れ集う闇。


「この石を<ケラウノス>に叩き込んで・・・終わらせるんだから!」


群れ集う闇に抗って、蒼き魔法石を手放さないミハルに。


「「いつまで持ち堪えられると思うのかミハルよ。

  早く渡してしまえ、そうすれば一思いに消滅させてやろう!」」


大魔王が言うのは。


「あなたが消滅させるのは人類ひと全てでしょう?

 そんなことさせる訳にはいかないんだから!」


ミハルが拒むのは消滅させられるのが全て・・・全ての記憶と共にだから。


大魔王ケラウノスが発動してしまえば。


「大魔王の求める<無>になってしまう!

 私を狙い続けて来た大魔王に屈する事になる・・・だからっ!

 私は最期の最後まで闘い続ける!」


嘲笑う大魔王を睨みつけて、ミハルは闘い続けていた・・・


挿絵(By みてみん)


 

ミハルは弟と別れさせられてしまった。

大魔王の罠に嵌められた姉弟・・・・


姉弟を救わんとしているのは魔砲師達だけでは無かった・・・


女神達が居た・・・そう、この神殿で待っていた二人が。


次回 EP4Farewell Beloved people<さらば愛しき人々よ>Part3

君は助け出す為に動き始めた・・・


人類殲滅まで・・・カウントダウンが始まる・・・残り140時間・・・


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