第7章 永遠に紡がれる物語 Together Forever EP3 sister and brother<姉弟> Part3
駆け上がってくる魔法衣をミハルは見守り続ける。
白い魔法衣、蒼き髪・・・そして力強い瞳。
弟の姿に心が跳ねる・・・
弟の姿を見守っていた。
駆け上がって来る白い魔法衣姿に、期待を込めて見入っていた・・・
<マモル・・・どうか私にチャンスを頂戴・・・>
願いは通じるだろうか?
弟は解ってくれるだろうか・・・
ミハルの手に魔砲弾が形成される。
紅い瞳で駆け上がって来るマモルを見詰めて・・・
「人間の少年よ、神に歯向かうのならば。
・・・女神の魔砲で排除されるがよい!」
マモルへと造った言葉。
チアキが伝えてくれているのならば、今のセリフに込められた意味が通じてくれていると思う。
「歯向かうのならば近寄ってみよ。
阻むというのなら、私の手元まで来るが良い!」
通じてくれているのなら、マモルにはきっと解って貰えると願う。
自分がまだ操られたままのフリをしている意味が。
白い魔法衣が眼に映える。
蒼髪、碧き瞳が心を射る。
<マモル・・・君を危険な目に遭わせたくないの。
ミハエルさんやリーンには悪いけど・・・連れて行きたくないんだよ。
だから・・・その石を私に譲って>
前とは違う。
この間は本当に体を操られていた。
再び逢えた今は、心も体も意志通りに動かせている。
だからこそ、弟マモルに教えたかった。
家族に知らせたかった・・・今こそ。
<私は生きている、女神となって。
家族の元へ帰れるかは分からないけど・・・此処に居るんだよって>
この先自分の身がどうなるのかもわからない事を憂いて、知らせて来なかった。
だけど、今は教えたいと願っている。
弟の口から父母に伝えて貰いたかった。
<ミハルは女神となっても家族が大切なのだと。
お父さんやお母さんと一緒に居たいのだと・・・マモルから伝えて欲しいの>
右手に現わせた魔砲弾をマモルに向ける。
それが合図だと言わんばかりに、弟も神の槍を向けて来た。
<マモル・・・いくわよ?!>
賭けだった。
もし、マモルも魔砲を放たなければ意味を為さない。
チアキの時と同様に、空に爆焔が拡がらねば監視の目を誤魔化せない。
<お願い!放って!>
紅き魔砲弾が手元を離れた。
願うのはマモルからも魔砲弾が放たれる事・・・だった。
「えっ?!」
息を呑んだ。
弟からは魔砲が放たれる事はなかったから。
神の槍を翳したまま、真一文字に突きかかって来たから。
<マモルっ?!なぜなのっ!>
紅き弾が弟に突き当たった・・・ように観えた。
(( ギイィンッ))
女神の放った魔砲弾を槍が弾き飛ばした!
「まっ、まさかっ?!そんな事が出来るのっ?!」
本当の戦いであったとすれば、この時点で次弾を用意しなければマモルに突きかかられて。
「斬るつもりなの?!」
神の槍で斬れる近さまで詰め寄られてしまうだろう。
しかし、弟は槍を片手で操ると。
「勝負あったな!」
まごついていた女神の後ろを執って来たのだ。
槍を剣の様に突き付けて、マモルはミハルの背に廻り込んでいた。
「うっ?!」
本当に驚きの声が漏れてしまった。
眼もくれぬ程の身の軽さと、槍操術に・・・
<ミハル姉、聞こえる?聞こえているなら返事してよ?>
背中に寄り付いた弟の声が心に届いた。
<チアキから聴いたよ?敵の眼を眩ませる作戦なんだろ?
チアキの時と同じ手を使ったらバレちゃうよ?>
さすが・・・マモル。
ミハルとは考え方が違い、爆焔の中で話す短さでは語り切れないと踏んだようだ。
接近戦で身体を触れ合う近さでなら・・・
<姉さん、これなら少しくらい時間を執れると思うよ?
少々手荒いとは思ったけど・・・我慢してよね?>
弟が直に触れて来た。
どうしてかは分からないけど、女神が身体に触れる者に口を使わず語れる事を知っているようだ。
<マモル、君って子は。
どんどん強くなるんだね?びっくりしちゃったよ>
微笑みたかったけど、我慢できた。
振り返りたかったけど、我慢した。
「きっ、貴様っ!」
身体を捩って抗うフリをした・・・まだ戦っているような声をあげて。
マモルには真似だと解って貰えているから。
「闇の女神から解放してあげるよ、ミハル姉」
弟の声に、本当の願いを感じてしまう。
マモルが自分をどう思っているのかが解ってしまう。
<駄目・・・だよ。そんな言葉を掛けないで・・・マモル。
そんな優しい言葉を掛けちゃ駄目なんだから・・・振り向きたくなるよ。
振り向いて抱きしめたくなっちゃうから・・・切なくなるから>
涙が溢れてきそうになるのを堪えて、心で訴えかける。
<僕だって!このまま姉さんをみんなの所に連れて行きたいんだよ?
今直ぐに抱きしめたい・・・もしも叶うのなら>
槍を持つ手が細かく震えているのに気が付く。
弟も同じ気持ちなのを解って、少しだけ・・・少しだけ、気が落ち着いた。
<マモルあのね、リーンがまだ捕らえられたままなの。
救い出すには力がいるの、強力な魔砲の力が。
君の持っているリング、お母さんから授けられた碧い魔法石を貸してくれないかな。
あの石に秘められた魔力が必要なんだ>
ミハルは敢えて石だけを貸して・・・と、言った。
ミハエルやリーンが求めたように、マモル自身の力までも貸してとは言わずにいた。
<姉さん、それってまた独りで立ち向かおうとしてるんだろ?>
図星だった。
弟には見破られていた、心の内を。
<それなら貸せないよ。
僕も一緒に闘うから。今度ばっかりは!>
マモルには隠し通せない・・・そう思った。
弟マモルには何もかも話すべきだと思った。
リーンを救う為だけでは無い。
人類そのものを救わねばならない・・・
例え滅び去ったとしても自分に課せられた宿命を遂げねばならない。
それが<理を司る者>として目覚めた女神の運命なのだと・・・
<マモル・・・お願い聴いて欲しいの。
私には人の世界を救わねばならない宿命が・・・>
そこまで言った時。
マモルの手に付けられていたリングが光を放った。
<そう・・・あなたには。
私の弟も探し出して欲しいのよ・・・ミハル>
弟の声とは違う。
弟マモルの心では無い者の声が届いた・・・
「だっ、誰っ?!」
思わず光の中へと叫んでいた・・・
ミハルは弟の声に耳を貸す。
マモルは姉の心に訴えかけた・・・
そして、蒼き珠は語りかける?!
次回 EP3 sister and brother<姉弟> Part4
君はとうとう出逢う事になる。この世界に降り立った娘と・・・
人類に残された時間は少ない 残された時間は後180時間!