第7章 永遠に紡がれる物語 Together Forever EP3 sister and brother<姉弟> Part2
チアキに突きかかれたミハル。
思わぬ強さに舌を巻くのだが・・・
爆焔が空を染めた。
紅き弾と蒼き剣波が鬩ぎ合った・・・
眼を見開く女神。
突きかかる魔砲少女。
「でやあぁっ!」
チアキは聖剣を振りかざし闇の魔法衣を纏う女神に斬りかかる。
「うっそぉっ?!」
魔砲力を放った女神ミハルがたじろいだ。
女神の魔力と同等の剣波により、相殺されてしまった。
少々手加減はしていたと言うものの、女神の力にも劣らないチアキの実力を知って。
「まさか、あのチアキがこれ程まで腕をあげていたなんて?!」
操られるフリなど忘れてしまったかのように、ミハルは突きかかって来る魔砲少女に備える。
聖剣を振りかざすチアキの姿に驚きを隠せずに・・・
「聖剣よ!闇を切り裂け!」
猛烈な速さでミハルより高度を執って薙ぎ払って来る。
「わぁっ?!馬鹿チマキっ!マジに闘う気なのっ?!」
寸での処で剣波を防御障壁で避けたミハルが叫んでしまう。
おそらくモロに喰らっていたら女神といえど、相当のダメージを受けた事だろう。
それは魔法障壁が一撃で夢散した事で容易に判断できた。
「逃げるんじゃありません!
私の剣で闇を切り裂いてみせます!少々痛いでしょうが!」
チアキが逃れるミハルに追い縋る。
「馬鹿ぁっ!そんなの勝手に決めるなぁ!」
最早、女神と魔砲師二人の立場は逆転しているのか?
絶対の魔力を誇るミハルに対し、怯むこと無く突きかかる魔砲師チアキ。
「逃げるのなら・・・奥の手を切りますよ!」
空中で鬼ごっこを繰り広げていたチアキが剣を頭上に翳した。
「なっ?!何をする気なのよチマキっ?」
女神たるミハルが普通に話しに答える。
<おお~いっ!いい加減に気が付きなさいよね!>
内心舌打ちしたくなる。
オスマン以来の部下でもあり同じ魔砲師として闘った経験があるミハルには、
チマキの成長は嬉しくもあったのだが、今この場で闘う事になろうとは思いもしていなかった。
掲げられた聖剣に、胸の魔法石から光が集められていく。
<おいおい・・・まさか・・・だよね?>
ミハルにはその光が集う様を観た事があった。
そう・・・自分も放った事のある魔砲弾だったから。
「これで・・・お終いです!闇の女神ミハルっ!生まれ変わるのです!!」
・・・・
目が点。
「はぁ?!」
振りかざされた剣の先に蒼き弾が現れ出た。
その光の弾が意味するモノは・・・
「エクセリオ・ブレイカー!」
・・・マジか?
ミハルの最終奥義、魔砲師最強の魔砲。
「馬鹿馬鹿馬鹿っ!そんなの喰らったら死んじゃうでしょーがぁっ!」
慌てて全力魔砲を用意するミハルに、
「シュートォッ!」
チアキが躊躇いも無く全力全開魔砲を放ってきた。
「阿保かぁ~いっ?!死んじゃうよぉっ?!」
悪魔なら・・・確かに一撃で滅ばせられる。
並みの魔王ならば一撃で戦闘不能と出来るであろう。
では・・・女神にならば?!
「そっちがその気なら・・・受けて立つわ!」
ミハルも放った・・・理の女神が放てる全力魔砲を。
右手から紅き光が迸る。
現れ出たのは今現状で放つ事が出来るデバイスショット。
女神ミハルの魔砲力は半端じゃなかった・・・
再び空に爆焔が奔った。
「どうです!これが剣聖たる者の魔砲!」
全力全開で放った魔砲に、絶対の信頼を抱いていた。
爆焔が晴れたら、ミハルは相当のダメージを喰らっているだろうと考えて。
((シュンッ!))
何かがチアキの胸元に迫った。
爆焔を突いて何者かが手元まで迫った。
「チアキ、良く聞きなさい!
私は闇から既に解放されているの、だから邪魔しないで!」
爆焔を纏う女神の声が耳元で聞こえる。
「え?ええっ?!」
両者が放った魔砲が空で爆焔と化した中、
チアキに悟られずに近寄ったミハルが耳打ちする。
「良い事チアキ、この魔砲の爆焔が晴れたら、ここから離脱しなさい、良いわね?
私は今とある作戦を遂行中なのよ、あなたが居れば邪魔になるの。
あなたが居ればマモルにも手が出せないんだから!」
爆焔が大魔王から自分の姿を隠している間に、チアキに教えようとした。
「この爆焔が消えたら、もう話せなくなるの。
一回しか言わないから憶えておいて。
リーンも私も闇から解放されたの、今は大魔王に操られているフリをしているだけ。
マモルに逢いに来たの、だからマモルに替わって貰ってくれないかな?!」
一気にそう教えると、チアキの耳元から離れる。
「えっ?!ええっ?えっと・・・了解!」
どうやらミハルの言った事を理解したのか、チアキが剣を下げる。
爆焔が風に流されて二人の姿が空に浮かんで見えた。
「どう?女神の力を知った?
ならば、もっと強い力を持つ者と替わりなさい!」
促そうと試みたミハルの言葉に。
「いいえ!私で十分です、闇の女神よ!」
チアキは抗ってきた。
<むぅ・・・なによ、全然解っちゃいないじゃないの!>
頬を引き攣らせたミハルが本気でチアキを睨む。
「うっ・・・でも、先達にも手伝って貰う事にしましょう(棒)」
ミハルの顔が怖かったのか。
何かを思い出したのか・・・漸くチアキが行動に移した。
「そ・・・そうよ、それで良いのよ!
さっさとその先達とか云う者を呼んで来なさい!」
背を向けて退くチアキを見送って、大きくため息を溢す。
<はぁ・・・疲れるぅ。
でもこれで。これでマモルには伝わると思う。
私の身を案じて余計な事を考えなきゃいいけど・・・>
退いた魔砲少女チアキが、ちゃんとマモルへ伝えてくれるかだけが気がかりだった。
海上の艦隊へと戻っていくチアキに注意を向けていた・・・その時。
「ミっハっルゥっ!」
もう一人、厄介なのが降って来た。
<げっ?!ホーさんっ?!>
デバイス機銃を構えたホマレが単騎で突きかかって来た。
<うぎゃあぁっ?!機銃を向けちゃ駄目ぇっ?!>
専守防衛だけを身体に許してある。
それはさっきも語った理由で。
「ミハルっ!これをっ!これを受け取れぇっ!」
機銃を離した手が持つのは・・・
<あ。それは・・・私のリボン?>
紅いリボンがホマレの手に握られていた。
必死の形相で突っ込んで来るホマレに、どう対応していいのか悩んでしまう。
「ウチに預けていたリボンや!
これを髪に着けてみるんや!そしたら思い出す!ウチの事も!!」
突っ込んで来るホマレ。
手に持たれた紅いリボンが眼に映える。
<うわぁっ?!なんて事なのよぉっ?どうすりゃ善いのよぉっ?>
突っ込んで来るホマレの手が目前に迫っても、ミハルは動きを執れないでいた。
「受け取れぇっ!ウチの大切なミハルゥ!」
急接近したホマレが・・・
「ほえっ?!」
ミハルの傍を素通りして・・・
((ふわっ))
紅いリボンを手放した。
「おっと?!」
通り過ぎたホマレにも目を繰れずに、ミハルは目の前にあるリボンを咄嗟に掴んでしまう。
一航過で目的を達したホマレが振り向き様に確認した。
ミハルは自分の放したリボンを受け取った・・・のを。
「そうか・・・何かあるとミノリ姉さんが言っていたんやが。
ミハルはもう自分に戻っとる・・・ちゅー事なんやな?!」
確かに、闇の女神のままだとすれば。
戦いに何の必要もない紅いリボンに執着したりはしない筈。
ましてや、手に取る事など操られていたら絶対にする筈もない。
つまり、あそこに居るのは・・・
「ミハル・・・お帰りやで?」
自我を取り戻し、何かを行う為に現れた。
敵と闘う為に何かの必要で操られたままの姿を見せているだけ。
ホマレは艦に戻って報告するべく、身体を揺すってバンクを繰り返した。
そうすればミハルには伝えられると思って。
<そっか・・・今ので。
ホーさんは私が戻っている事を見破ったんだ・・・流石だよホーさん>
紅きリボンを握り、魔力で仕舞い込んだ。
バレてしまっても、それだけは奪われない様にと。
「さて・・・ちゃんと報告してくれたようだねチマキ」
ホマレが去った後。
艦隊から金色の魔砲力で飛び上がって来る者の姿が目に入った。
白い魔法衣・・・蒼き髪。
そして・・・神の槍。
「来てくれたんだ・・・マモル」
ミハルは飛び来る弟に向けて呟いた・・・
チアキは退き、ホマレは納得して戻って行く。
そして・・・弟が駆け上ってくる。
姉、ミハルの元へと・・・
次回 EP3 sister and brother<姉弟> Part3
君は弟の強さに感動を覚えるだろう・・・そして、頼るのだった
人類に残された時間は少ない アト 190時間!!