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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第7章 永遠に紡がれる物語 Together Forever EP2The heart that hauled in手繰り寄せる心の行方 Part5 

目の前に来たのは・・・


ミハルは呼びかけられた声に助けを求めるのだった・・・

大魔王の呼びかけでバリフィスが現れると思った。

悪魔の企てに身を焦がして、その人が現れるのを待った。

しかし・・・


「ユピテルの親爺!まだこんな事をやっていたの?

 早く巨大戦艦を出動させなきゃ、大変な事になるわよ?」


闇の中から現れたミハエルが言った。


<ミハエルさんっ!どうしてここへ?!>


正に・・・大天使に思えた。

本当の神が救いに現れたように感じた。


声を掛けた女神ミハエルの事が、闇の中で光る灯りにも思えた。


「ユピテルゥー、良いのかしら?

 あなたが派遣した神々は潰え去ったようだけど?

 人間共に負けちゃったみたいだけど・・・ほっておいても良いのかしら?」


モニターに映る大魔王ユピテルへ、戦闘経過を教えるミハエル。


「「なんだと?!確かか?」」


戦闘に興味を示さなかった大魔王も、流石におざなりにはできなくなったのか。

新たに出現させたモニターで戦況を確認した。

モニターに映ったのは・・・


「「馬鹿な?!人間共が?

  我々神の艦隊と互角に?・・・いいや。

  打ち破ったというのか?!あれだけの艦隊を?!」」


モニターに映るのは有志連合軍連合艦隊の雄姿。

戦艦が砲撃を加え、護衛艦が雷撃する。

神の艦隊は黒煙を吐き出し炎上する・・・ほとんどの艦が最早行動不能と化している有様に。


「「なんと・・・こんな事が?

  人間共がこれ程までの艦隊を・・・破ったというのか!」」


モニターに映る人間の艦隊は、神々が座乗する艦隊を叩きのめして進み来る。

最早、神の神殿がある暗黒大陸まで数十キロの至近距離まで迫りつつあった。


「どうするのよ?このままだと此処へも砲弾が届くんじゃないの?

 そうなったら・・・撤退する?ここを放棄して?」


ミハエルがそれ見た事かと嘲笑う。


「「そんな事が赦される筈がなかろう。

  随分調子に乗っているようだが・・・アレには太刀打ち出来まい」」


巨大空中戦艦<ジェノサイド>がモニターに映し出される。


<えっ?!なによあの巨大な戦艦は?!>


眼に留まったモニターに映る巨艦。

ありとあらゆる場所に備え付けられた砲塔。各部に観える発射管・・・


<あんなのと闘えば・・・いや、闘える筈もない>


ミハルでも巨艦と闘えば間違いなく損害は計り知れないと感じた。

その巨艦が動き始める・・・空へと。


「「我が神軍に立ち向かった事だけは褒めてやろう。

  だが、そこまでだ・・・人間共よ」」


大魔王ユピテルが言い放った。

<ジェノサイド>に拠って滅ぶ事になるだろうと。


「あらぁ?そう言い切れるかしらね?

 あれだけの艦隊をしても負けちゃったのよユピテルの親爺。

 しっかり操作しなきゃ、またもや・・・やられちゃうんじゃないの?」


機械に任せっきりの戦闘が齎した失敗を、ミハエルは忠告した。


「私もそうだったけど。

 コンピューターに任せっきりにしたら・・・失敗しちゃうわよ?

 人間共は時にとんでもない行動をするからね?

 自爆攻撃も考慮に入れておかなきゃいけないかもね?」


機械任せの戦闘が齎すのは硬直した戦術。

ユピテル自体が機械だと知ったミハエルの言動に惑わされたか。


「「それならば・・・私自身がそうさせねばならん。

  <ジェノサイド>は私の指示にしか反応せぬからな・・・」」


モニターからの返事にミハエルは下を向いた。

その顔にはしてやったりと細く笑みを浮かべたのが観えた。


「そうね、先ずは人間共の艦隊を駆逐してから。

 ユピテルが直々に戦闘を行っている間は私が二人を貶めてやっておく。

 私にも遊ばせて貰わないとね、この二人には随分舐めた真似をされ続けたんだから!」


ニヤリと嗤い、モニターへ向けて言い放った。


「「そなたがか?

  そなたに任せるのは気が進まんのだがな」」


ユピテルはミハリューとして飼い慣らした女神を見据える。


「だってさぁ、ユピテルが居ない間に二人を放置しておけるの?

 間違って覚醒でもされちゃえば・・・まずい事になるんじゃないの?」


女神ミハリューの言葉にはある意味、本当の事が含まれていた。


「もし・・・よ?

 バリフィスがMIHARUを呼び覚ましちゃったらどうする気なの?

 この神殿の中で目覚められたら・・・一巻の終わりじゃなくて?」


大魔王たるユピテルにもそれが気がかりの為だと読んでの一言。

嗾けるミハエルの作戦は如何に?


「「ううむ・・・已むを得まい。

  私が監視を途切れさせる僅かの間・・・そなたに任せる事にしよう」」


モニターの中で大魔王が苦渋の選択を下した。


「そうね、ゆっくりでも良いわよ?

 その間・・・私が弄んでやるから。たっぷりとこれまでの恨みを晴らすんだから」


嘲笑うかのようにミハリューが答えるのを。


「「言っておくが。壊しでもすればどうなるか・・・解っておろうな?」」


釘を刺した大魔王に、ミハエルが睨み返す。


「そんな事言われなくったって解ってるわよ!」


応えたミハエルは大魔王の気が変わらぬうちにと、ミハルの首根っこを掴み。


「じゃあねユピテルの親爺。

 私は早速二人を辱めるからね・・・覗き見をするのなら声を掛けなさいよ?!」


意味深な言葉を置きみあげに、ミハルをひっぱり立ち去る。


「「ふむ・・・何を考えて居るというのだ?

  ミハルを救う事など出来ぬというのに。闇の紋章が消える事は、ないというのに」」


挿絵(By みてみん)



大魔王に因って刻まれた紋章。

それを解除出来るのは大魔王自らか、操る術以上に強い魔法でしか方法が無かった。


「「それだからこそ・・・お前の企てに乗ったまでの事。

  この大魔王サタンの術を破れる魔法などは存在せんのだからな」」


余裕をみせる大魔王。

ミハエルの企てに乗るのも、唯の一興だと嘲笑っていた。





ミハエルは直ちに行動を起こした。

時間が制限されている・・・だからこそ。


「いいか!如何なる者にも応えるな!

 私が許可するまで護り通せ!私が命じるまで死守しろ!」


部屋を司るコンピューターに厳命を下す。


「「了解しましたマスター!」」


機械は主人たる者の命令に服従する。

人工知能を持つ機械は主人たる者に絶対の服従を誓っていた。

それが機械本来の目的でもあったのだが。


扉を閉じる・・・鍵が施錠される。


連れ込んだ者を椅子に腰かけさせると。


「お待たせリーン!もういいわよ?!」


それまで息を殺して隠れていたリーンがベットから跳ね起きる。


「ミハル!ミハル!!今助けてあげるわ!」


見開いた瞳が愛する人の声を聴く。


「ミハル、リーンは私が救ったから。今度はあなたの番よ!」


信じられなかった・・・けど。


<本当・・・なんだね?本当にリーン自身で言ってくれたんだね?>


闇に堕ちかけた心が疼いていた。

本当だと信じる心と、まだ信じ切れていないあやふやな心が混在していた。


「ミハル・・・ごめんね。辛かったでしょう?苦しかったでしょう?

 でも、ミハエルさんがチャンスを造ってくれたの!助けてくれたのよ?!」

 

リーンが女神のマントを脱いでミハルに縋り付く。

それは自分を取り戻した女神である証。

闇に染められた自分を取り返し、大切な人に少しでも寄り付きたい証。

邪魔なマントを脱いだリーンがミハルを抱きしめる。


<ああ・・・リーンだ。私のリーン・・・優しい女神様・・・>


瞳の中も耳に聞こえる声も・・・懐かしい。

始まりの時よりずっと聴いて来た温かい温もりに溢れたリーンの声。

抱き寄せられた身体に伝わる鼓動。


<ああ・・・この身体が自由なら。

 この口が利く事が出来たのなら・・・叫びたい。

 リーンに思いっきり叫びたい・・・愛する人の名を>


自分の身体が恨めしかった。

リーンに停められたのに言う事を訊かなかった自分が恨めしかった。


<謝りたいのリーン。許して欲しいのリーンに。

 自分勝手な私の事を・・・どんなに叱られたって善いから・・・>


抱き寄せられているのに指先一つ動かせない。

どんなに見詰めたくても顔一つ動く事もない・・・やるせなさ。


<リーン、リーン!私の愛する人。

 どうかこんな私を叱って。お願いだから私を赦して・・・>


心だけが蘇った。

闇に貶められかけていた心が取り戻せた。


(( ぽろり ))


ミハルの眼から涙が零れ落ちる。

抱きしめているリーンの腕に涙が落ちる。


「ミハル、聴こえているんでしょ?

 体の自由が利かなくったって、心はミハルなのでしょう?」


リーンの言葉に頷きたかった・・・でも、動けない。


「あなたは闇に奪われた訳じゃないのよ?

 体の自由が利かないだけ・・・この部屋では大魔王でも操れないのよ?」


リーンの傍からミハエルの声が教える。


「だからねミハル。

 術を破ってみなさい。身体を取り戻すのよあなた自身で」


ミハエルは半歩さがってリーンを促す。


「リーン・・・思い切って叫んじゃいなさい!」


ミハエルの声に促されたリーンがミハルから離れ・・・


<えっ?!リーン?何をしようと言うの?>


なんとか身体を動かそうとしているミハルが離れて行くリーンに訊ねた。

自分に掛けられた術は大魔王に因って掛けられた極大魔術。

それを解き放てる魔法がこの世に存在している筈は無いと思えた。


<私自身で解かなくっちゃ・・・リーンにも無理だろうから>


身を捩る様な歯がゆさの中、ミハルの前でその一言が放たれた。


「・・・ミハル・・・ペットになぁ~れぇっ!」


何度も聞きたかった言葉。

操られたリーンに求めていた言葉。

偽物なら・・・自分は変わらない。

偽物のリーンが何度言ったとても変わりようがない一言の呪文。


だが・・・その言葉は・・・永遠に解除出来ない呪文。

リーン自身が解除を願わねば解けない、

・・・ミハルにとっては最強の呪文。


 ((  ぽんっ ))


尻尾が出た。


 (( ぽわんっ ))


ケモミミが飛び出た。


「うにゃぁ~っ?!」


驚きのケモ声が喉から迸った。


・・・ついでに・・・目が回った。


挿絵(By みてみん)


「やったわねリーン!やっぱ・・・あなたの魔法は世界最強だわ!」


呆れたような声でミハエルが感嘆の声をあげた。


「ええ!これが私の最大契約だから。

 ミハルを手放さない為に・・・いいえ。

 誰かさんに奪われない為に施したんですから!」


ミハエルを飛り返ったリーンが毛玉との経緯を思い出す。


「ミハエルさんの彼に手を即けられそうになったミハルに・・・

 渡すもんかって・・・人生一番の魔法だったんですよ?」


あはは・・・と、笑うリーン。

あはは・・・と、苦笑いするミハエル。


その横で・・・


「にゃぁっ?!いきなりな展開で着いてけないにゃー?!」


ケモミミ娘と化したミハルが眼を廻しながら起き上がる。


「うわっ?!ミハルっどうしてそうなった?!」


尻尾まで生やしている損な娘に、強力過ぎる魔法を放った(?)リーンが驚く。


「ふむ・・・人間の時とは違って・・・女神だから?」


魔法を放ったのも女神なら、受けた方も女神。

強力なるハーモニーと言う奴か?違うだろ?


「にゃんっ!リーンにゃぁ!リーンにゃぁ!

 わらひのリーンにゃぁ!逢いたかったニャー!」


「・・・・・・」


抱き着いて来た猫娘に、感動も潰されてしまったか。

泣きながら抱き着く猫娘にリーンは顔を引き攣らせていた。

・・・ニャ語を連発するミハル猫。


やっと・・・やっと逢う事が出来た。

やっと・・・辿り着けた。

主人リーンとペットなミハル・・・邂逅の一瞬


「嬉しいにゃ!」ミハル


・・・善かったのかミハルよ?その姿で??


次回 EP2The heart that hauled in手繰り寄せる心の行方 Part6

君は辿り着けたのだ!君はご主人様に因って取り返されたのだ!さぁ!これから逆襲だぞ?!

人類に残された時間は少ない ・・・残りとうとう10日!!

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