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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第7章 永遠に紡がれる物語 Together Forever EP2The heart that hauled in手繰り寄せる心の行方 Part1

挿絵(By みてみん)


連載も今話で600話までになってしまいました・・・・Orz

計算外だと感じたのは機械では無い部分の所為か。


それとも単に発生した出来事に計算が間に合わなかったというのか。


企画を頓挫された人工頭脳は新たな試算を試みる。


手に入れた<器>をどう使うか、どうやれば最短で堕とせるかを・・・



「「お前を貶める方法を思いついたぞ。

  お前の心までも悪魔に染めれる方法・・・それが見つかったのだ」」


操る者が細く笑う。


「「一旦は引き上げるが・・・次にはお前の心まで我のモノにしてみせよう」」


悪魔の声がミハルの心に覚悟を求める。

嘲笑う大魔王サタンの邪なる声で。


<ああ・・・そんな。

 そんな覚悟なんて出来っこないのに。

 どうしてそこまで私を貶めたいの?>


黒雲の中に隠されてある瞬間転送機に載り込まされる間中、ミハルの心は抗い続けた。


「「さあ、戻って次の闘いに備えるが良い。

  バリフィスの身体を玩具にしてやるが良いぞ!それでそなたの力は倍増されよう。

  憎しみと快楽と・・・そして絶望に染まって!」」


信じられなかった。

悪魔の声に気が遠くなりかけた。

自分を捨ててまで護ったつもりだったのに。

この悪魔は約束をたがえる事も意に反さないのか。


<酷い!約束でしょ?!

 リーンには手を出さないって約束したじゃない!

 だから私はあなたの物になるのを認めたんじゃないの!

 約束を破るなら身体を自由にしてよ!唯じゃおかないんだから!>


堪らず言い返したのだが。


「「なんとでも言うが良い。だが、闇の紋章は容易くは消えぬ。

  我が意を呑めぬのならそれでもよい、バリフィスを破壊するだけだ」」


頭の中が真っ白になる、絶望を感じて。


<嫌だ・・・嫌よ・・・そんな事。

 私はどうなっても良いから・・・リーンだけは壊さないで。

 私からリーンを奪わないで・・・お願いします・・・>


蒼白になる心で呟く。

絶望を感じて心が壊されていく。


「「善かろう、そなたが手を下す処を観るのも一興。

  そなたの手で辱め、そなたの手で壊すまで貶めるが良い」」


悪魔・・・そう、悪魔の声。

自分を捨ててまで護ろうとした大切な者を、自らが壊せる筈が無い。


・・・身体が自由であれば。

心は何とか保てていたが、身体の自由はもう利かなかった。

このまま神の神殿に帰れば、待っているのは想像もしたくない惨劇。


<嫌だ嫌だ嫌だ!リーンを私の手で穢すなんて・・・>


身体が自由であれば、死んででも抗っていたであろう。

無駄だと解っていても抵抗したであろう・・・


<こんな気持ちだったんだねリーンも。悲しくて辛くて・・・

 どうしようもない苛立ちや怒りの中で苦しんでいたんだね?

 それなのに・・・私って大馬鹿者なんだ・・・どうしようもない位の>


自分が穢されていく間中、女神バリフィスは厭らしい顔を浮かべて見詰めていた。

だが、その貌に流れる涙が教えてくれていた。

辛くて悲しくて・・・どうしようもない自分の情けなさを。

それが今度は自分が行うのだと告げられた。

死をも超えた屈辱、死ぬ事さえも叶わぬ身である事が今は耐えがたい想いであった。


<誰か・・・停めて。

 誰か私を滅ぼして・・・消し去って!

 リーンに酷い事をする前に・・・リーンを穢す前に・・・誰か>


消え去ろうと願う心。

いっその事、マモルの魔砲で消え去っていれば良かったと思う。


<マモル助けて!私を滅ぼしに来て!こんなお姉ちゃんを消し去って!>


目の前に現れ、対峙した勇敢で強くなっていた弟に願いを告げる。

届かないと解っていても願わずにはおられなかった。


<もう・・・助からないのなら。

 リーンを穢すなんて事になるのなら・・・いっその事。

 堕ちてしまう方が良いのかも。悪魔に心を委ねれば何も感じなくなる。

 自分が誰で何が願いであった事も忘れ去ってしまえば・・・>


恐怖さえも感じない。

死をも超越した闇の力に心を奪われかけていた。


黒雲を纏った転送機からミハルの姿が消えた・・・・





______________





「ええっ?!私だけが?何故ですかぁっ?」


慌てたチアキが分隊長に叫ぶ。


「知るかっ!私も今命じられた処なんだぞ?」


耳元で叫ばれたラミル中尉が声を荒げて言い返す。



ここは有志連合軍オスマン艦隊。

帰還したチアキ少尉にいきなりの派遣命令が下されていた。

行き先は・・・


「ここから400里もあるじゃないですか!

 そんな遠い所まで独りで行くんですか?

 絶対途中で迷子になっちゃうから!」


何も目印が無い海上を、計器も無く飛び続けて?


「それだよチアキ。

 私も無茶だと司令部に言ったんだが・・・あれに乗って行けってさ」


指先で背後の甲板を示し、それを教えた。

そこにあった物とは・・・


「・・・アレ・・・ですか?」


見詰めたチアキもため息混ざりに訊く。


プロペラが付いているから飛べるのであろう。

だが、そのプロペラは見知っている飛行機械とは別の所に付けられていた。

飛行機械なら翼がある筈なのに、それも見当たらない。

細長いプロペラが4枚天井部分に付いているだけだったから・・・


「あのぉ・・・これってオートジャイロの一種ですよね?

 それなら飛ぶ事は出来たとしても航続距離が短いような気が・・・」


躊躇うチアキに機体から声が落ちてくる。


「そういうなよチアキ少尉!

 こいつも乗れば善いもんだぞ?」


赤髪に飛行眼鏡をかけた操縦士が笑い掛けてくる。


「あっ?!リンさんじゃないですか!どうしてここに?」


パイロットを観たチアキの顔が綻ぶ。


「どうしてもこうしてもじゃない!

 こう見えても前世ではパイロットだったらしいんでな。今は魔鋼ヘリの操縦者パイロットだよ」


笑う赤毛の操縦者に、チアキが寄って。


「魔鋼?ああ、この機体にも魔鋼システムが搭載・・・って?!

 魔鋼ヘリですってぇっ?!」


驚いたように機体を見上げる。


ちっぽけにも観えるヘリコプターに、魔鋼の力が備わっていると訊いたチアキの前に。


「よっと!」


前部座席からリンが飛び降りて来た。

見詰めるチアキに何かを差し出して。


「これを。

 シャルレット様から預かって来た。お前に渡して欲しいんだとさ」


パイロットグローブが開かれると、そこに載っていたモノとは。


「あ・・・これって、ラル女王様の?

 もしかしてオスマン帝国門外不出の聖玉せいぎょく?!」


差し出されたあお色の宝石に見覚えがあった。

女王となられる折に一度だけ観た事のある魔法石。

ひし形を模った魔力を秘めた蒼の石。


「ああ、これをお前に託すんだと。

 闇を撃ち祓うには必要だろうってさ」


リンが差し出した魔法石を受け取った瞬間。

チアキの身体から蒼き光が放たれる。


「おおぅっ?!こいつは・・・大した属性だな!」


リンが眼を輝かせて魔砲少女を観る。


「うーん・・・だが、猫に小判・・・のような?」


ラミルが解っているのに冗談を仄めかした。

チアキの手に持たれた魔法石。

緑の力を表わした宝石を、チアキは胸に抱く。


「シャル・・・君が想ってくれたんだね?

 君が私に託してくれたんだよね?

 受け取るよ・・・シャルの想いを」


緑の光がチアキに宿る。

胸に抱いていた魔法の石がチアキの胸の中へと溶け込んで行く。


「おっ、おい!託されたと言ってもそれはオスマンの秘宝なんだぞ?!」


消えゆく魔法石に驚いたラミルが制したが、チアキへ溶け込むのを停めれなかった。


「大丈夫ですよラミル分隊長。

 時が来ればお返しに上がりますから、宮殿まで」


微笑んだチアキがラミルに応える、瞳の色が蒼に染まった状態で。


「おいおい?!そんな目になって大丈夫なのか?」


今度はリンが髪の色まで蒼く染まったチアキに訊いた。


「ええ、この石に秘められている魔力の所為ですから。

 剣聖チアキじゃなくなりますけどね・・・この石の所為で」


右手を翳したチアキが魔法衣姿にチェンジする。


(( パアアアァッ ))


神官巫女魔法衣だったチアキの衣装が次なる進化を遂げる。

今迄剣聖としての魔法衣だったものが、神に準じた魔法衣と変わる。


蒼きレオタードに装着されていくのは神から贈られる戦士の上着。

肩に付けられたガードは敵の魔力攻撃を防ぐ。

腰に付けられたシールドは飛んでくる魔砲を弾く。

白い上着は装甲を、蒼きニーガードはスピードを表す。

蒼き髪、碧い目。今迄以上に凛々しく感じる姿。


「どうでしょうか?これで相当パワーアップしたみたいですけど?」


くるりと一回転して二人に見せる新たな魔法衣。


「・・・ふーむ・・・」


リンがチアキの背後に近寄ると。


((むにっ))


チアキを背後から抱き寄せた。


「んなっ?何をするんですかリンさん?!」


ムニムニ身体を確かめるリンに言い募ると。


「魔法衣は確かに新調されたようだがな。

 中身はどうなのかと・・・揉んでいるんだ」


(( むにむに ))


チアキを背後から襲うリンの姿に、ラミルは絶句した。


「いっ、いい加減にしてくださぁーいっ!」


逃れる事も出来ず、チアキは眼を廻すのみだった。


挿絵(By みてみん)




・・・・・・


「それでは!これより発艦しますっ、前離れっ!」


前席に納まったリンが手を前で併せてから勢いよく開く。

合図を観た整備員達が車輪止めを外し、操縦者に安全を告げる。


「こちらリン中尉!これより400里北西のフェアリア艦隊迄向かいます!」


目的地を告げローターの回転速度を速める。


「後部席のチアキ少尉です、フェアリア艦隊に向かいます」


ややご機嫌斜めのチアキが報告すると、操縦者はニヤリと笑う。

飛行甲板で見送るラミル達が手を打ち振る。


「そんじゃ行くぞチアキ少尉。口を開くなよ?」


リンの言った意味が飲み込めないチアキが聴こうとすると。


((ババババババッ))


ローターの音に揉み消され・・・


「ひやあああぁっ?!」


絶叫をあげてしまった。

物凄いスピードで上昇する魔鋼ヘリの中で。


母艦である戦艦が一瞬の内に下方へと消えて行く。

リンに操られたヘリは飛び征く。


碧い空に・・・往く彼方に何があるのかも知れない空の向こうへと・・・


遂に「熱砂の要塞」からも援軍が?!

オスマン派遣隊として居残っていたチアキがやってこようとしています・・・


この期に及んで何を企むのか作者?!

まぁ・・・この章で最期だから。許してたもれ・・・・


ミハル奪還作戦が始まろうとしているようです?


次回 EP2The heart that hauled in手繰り寄せる心の行方 Part2

君はやって来た娘と邂逅する・・・久方ぶりの再会に心を和ませて?

人類に残された時間は少ない ・・・カウントダウン残り14日

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