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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第7章 永遠に紡がれる物語 Together Forever EP1The Blue Jewel<蒼き珠> Part5

闘い終えたマモルは仲間達と話した。


ミハルに纏わる伝説を・・・蒼き珠に纏わる伝承を・・・

マモルの蒼き珠・・・


魔力が秘められた魔法の石。


嘗て母ミユキからミハルへと贈られたブレスレット・・・




「これ・・・本当はミハル姉の物なんです。

 ある時から僕が持つようになったんですけど・・・」


<薩摩>までホマレを送って来たミハルの弟が話す。

ミノリとホマレ達魔砲師仲間に。


「僕もついこの間教えられたんです、母さんと父さんに。

 この石が持つ秘密・・・秘められてある力ってモノを。

 フェアリアに伝わる伝説と、日の本に伝わる神々の教えを」


黒髪に戻った少年が皆を観ながら順々に話し出した。


「神々の教えだって?日の本の・・・かい?」


ミノリ艦長が腕を組んだまま宿りし狐神を呼び出す。


「おっコーン。

 そうじゃ、日の本に古くから伝わる神話。

 その中に伝わる<月華>の章・・・月の民に纏わる神話じゃな?」


ミノリの口からイナリが答える。

頷いたマモルが話を続ける。


「そうです、神楽耶かぐやの物語。

 月の姫に纏わる伝承とでも言えば分かりやすいと思いますが。

 月から降りて来た女神が人の世に出でるお話を聴いた事はありませんか?

 竹取の翁が拾い上げた輝夜かぐや姫。彼女に纏わる物語を」


聞き入っていた殆どの者が頷く。


「あのお伽話は神話から発祥したとも言われています。

 伝えられた神話を着色し、お伽話にしたのでしょう。

 本当の神話はお伽話ではなく、現実に起きたものだというのです。

 月の民がある目的で送り込んで来た<使者>だというのです」


マモルはそこで話を一端切り、集まった者を見回してから。


「ここからのお話は誰にも口外しないと約束してください。

 僕と、ミハル姉。それに家族みんなに関わる事なので」


マモルが言った。

家族みんな・・・と。

両親と姉、それに自分も秘密にしている訳があるのだと。

聞き入っていた全員が頷いたのを確認して、弟は重い口を開くのだった。





__________





月の裏側にあるコロニー・・・

その中では地球から脱出に成功した人類が保管されていた。


保管・・・そう、保管されている。


人体が老化しないよう、冷凍保存されて。

地下保管庫に並べられた容器の数は保管限度を満たしている。

数千平米に亘る倉庫に並べられた冷凍保管器の中に眠る人々。

そのどれもが若く幼い、未来のある筈だった男女。


保管器が並べられたコロニー地下で、一つの容器が開け放たれていた。


開け放たれた容器に記されてあるのは名前か?

英語で記された文字が読み取れる。


  <<MIHARU ・ OHGAMI>>


名前なのか、何かの暗唱文字なのかは判らないが。

記された容器に入って居た者は何処へ行ったのか?

なぜ容器から出てしまったのか?



「弟は既にロストしているのね?あなた達は一体何をさせたというの?」


モニターが空間に浮かんでいる中で、独りの少女が立っていた。

金髪を靡かせた少女が蒼い目を向けていた、モニターへと。


「「千年前、彼は地上へと向かった、我々の使者として。

  もう無益な試みを辞めるように命じる筈だった。

  我々も待つ事に限界を感じている。我々人類の希望を取り戻す為に降りた。

  その筈だった・・・だが」


モニターに映るのは人類補完計画を司る研究者・・・

眼鏡をかけた男性が映るモニターを見上げた少女が訊いた。


「弟はどうなったの?

 私のたった一人の弟は、どうなったというの?

 あの<ケラウノス>を停めれなかったのなら、今どうしているというの?」


<ケラウノス>・・・人類と敵対する機械人類を諸共に滅ぼす破滅兵器。

人造人間も残された人類をも、破滅させるべく作動させてしまった悪魔の所業。

月の民となった脱出者達にとって、今一度地上へ戻れる日は近いとされていた。

だが、未だにこの地で眠り続けている。


「弟はなぜ失敗したというの?

 どうしてロストしてしまったというの?

 ここから地上へ降りたまでは解っている筈なのに?」


モニターの研究者が姉に教える。

弟がなぜ現れなかったのかを。


「君の弟は進んで目的を果たしに地上へと舞い降りた。

 だが、アクシデントが発生してしまった。

 彼が宿る筈だった者自体が物質世界に現れ出れなかったのだ。

 彼の地で神を名乗る者として精神世界に留まってしまったのだ。

 つまり人としてではない存在になってしまった・・・」


研究者はそれをアクシデントと呼んだ。

現れ出る筈だった者に宿ってしまったからだという。


「「弟君は彼の地で一番強い力を持つ者に憑依する道を選んだ。

 彼の地で存在する魔法を持つ者の中で最強の人材に宿る予定だった。

 だが、その者はあろうことか神となってしまったのだ。

 地上を支配する<ケラウノス>のコンピューターに現れたバグに因って。

 魔法を与える時に発生した僅かな差誤さごによって・・・」」


人類から戦争という惨禍を取り除くようにインプットされた<ケラウノス>という破滅兵器。

その人造知能は繰り返される人類の愚かな行為を停めるように造られた。

破滅してしまった過去の教訓を活かす為に、

どうすれば人類からパンドラの箱から戦争の破滅から救えるかを問い直す人造知能が組み込まれていた。


それが今となっては邪魔な機能となってしまっていたのだ。

人造知能は千年周期に人を滅ぼす悪魔となり果てた。

彼の悪魔は千年毎に人類を駆逐し、新たな人類を創造するだけの存在と化していた。


造っては滅ぼし、新たな機能を加えては消し去る・・・まるでゲームを楽しむかのように。


「じゃあ、弟は既に機能しなくなってしまったの?

 地上で滅んでしまったというの・・・千年前に?」


蘇ったのは・・・弟を探す為だと思っていた娘が確かめる。

しかし、研究者の思念は首を振る。


「「それは今もって判らない。

  だが、地上から送られ続けている信号は途絶えてはいない、微かだが。

  地上に降り立った弟君は今も彼の地で眠り続けているのだろう。

  千年前に起きたバグで精神世界に閉じ込められたまま」」


金髪の娘は蒼き瞳を見開く。

研究者が求める意味を感じて。


「私に弟を探し出せと言うのね?」


「「それが君の願いならば。

  君に願うのは<ケラウノス>を停める事。

  それの延長上に弟君の救出もある・・・そう思ってくれればよい」」


人類補完計画を頓挫させる事にも為る研究者の言葉。

蒼き目を見開いてモニターを観る少女は、固い決意を即座に返した。


「破滅兵器を破壊する事になっても良いのね?

 もう二度とやり直しが出来なくなっても文句は言わないと約束して。

 月の民が地上へ降り立てるのがどれだけ先になるか判らなくなっても責任は執れないから」


暗に地上で戦争の災禍が残るかもしれない事を言葉に含ませた。


「「構わない。そうだとしても同じ事なのだから。

  だが、地球は最早限界に近付いている。

  繰り返された破滅の報いが本当に来る日が近づいているのだよ。

  もう3度と持たないであろう・・・<ケラウノス>が発動してしまえば」」


研究者の顔が苦渋に満ち、娘へと向けられる。


「「このまま地上を<ケラウノス>が支配し続けるのならば。

  我々月の民が地上へと戻れる日はやっては来ないだろう。

  いや、その前に地球は近く破滅する、完全に。

  繰り返された中性子波の侵食によって・・・」」


地上から本来の人類が脱出して、早数世紀が訪れようとしていた。

冷凍保存された人類にも限界が訪れようとしている中、

地上では相も変わらず戦争の惨禍が繰り返され、千年毎に<ケラウノス>が発動していた。


前回の千年周期に送り込まれた少年は、あろうことか眠り続けているのだという。

その少年を探し出し、且つ悪魔と化した破滅兵器を停めるように託された少女は。


「私が停める。

 だから、弟を探し出すのを認めて。

 <ケラウノス>を停めて弟を探し・・・戻って来る。

 成功すれば直ちにここへと連れ還す事を約束して!」


蒼き目に力を秘め、モニターの研究者に誓約を求めた。


「「約束しよう。君と弟をこのコロニーに迎え入れると」」


誓約は為され、少女は地上へと降り立つ・・・


「「君の力、君の想い。

  それを封じる・・・この珠に。

  これを授けられし者が君を誘う・・・弟君の元へと。

  そしてこの珠を以て<ケラウノス>を停めるのだ、破滅から。

  修正プログラムによって停止できないとあれば・・・破壊しても良い。

  そのどちらもが無理と判断されたのならば・・・君を以てして破壊して貰う」」


蒼き珠


蒼く輝く魔法の石・・・


その中に少女の魂・・・いや。

記憶というメモリーと共に、秘密のデバイスが組み込まれた。


「「君はこれより<<MIHARU>>と呼ばれる。

  君と弟君によって世界は終わる事になるだろう・・・

  彼の地に降り立つ事を夢見る月の住人全員の希望。

  彼の地で生きる仮初かりそめの人類に与える希望デザイア・・・

  終わる世界と新たなる世界の懸け橋となって貰いたい・・・」」


遠く月の裏側より、一つのポッドが放たれる。


夜空に舞い落ちる流れ星の様に。

地上へと舞い落ちる前に消えて行く。


表面摩擦に因って燃え尽きたポッドから、蒼き珠が地上に落ちて行く。


<私もこの地で最強の魔法を放てる者に宿ろう。

 弟を探し出すには同じ力を持つ者に託そう。

 支配者たるモノに立ち向かえる清き心を持つ者に私を委ねよう・・・>


金髪の娘を秘めた蒼き珠が細長い島国へと墜ちて行く。


<私はMIHARU・・・地上へ墜ちた後で封印する。

 私を託した後に眠りにつく、その時が来るまで。

 この後、ケラウノスが動き始めるまで・・・>


蒼き珠は輝きを放ち続け、彼の地に在った豪族の元で御印みしるしとなった・・・


挿絵(By みてみん)



_____________





「こうして・・・日の本に伝わる神話となったのです」


マモルがイナリの証言と共に話し終えた。


「ワシも、このような話を聞いたことがある。

 月の民は地上へと還らんとしておる・・・とな。

 千年毎に記憶を消され、千年毎に違う者と化す・・・人類の歴史はまやかし。

 千年以上前の記憶など、誰も知らない訳じゃ」


造られた歴史。

造り替えられる人類。


千年というスパンの中で、人類は愚行を繰り返すだけの者となっていたのか。

度々繰り返された殲滅に因って、地球の生存権でさえもが脅かされているという。


「ちょっと・・・ええかな?」


黙って聞いていたホマレが手をあげる。


「ほなら、ミハルがその救世主とか聖者とか云うんなら。

 もう助け出すほかには方法がないってことなんやろか?」


マモルが言ったように、地上へ舞い降りた者がミハルに宿っていると思った。

だから、ミハルを助け出さねば、あの神には勝てないと考えた。


「中島3尉、それは一つは正解。一つは未だ不確定です」


「?!どういう事や?」


マモルの答えにホマレが疑問を返す。

マモルはイナリと化しているミノリに向かって言った。


「ミハル姉に宿っている訳じゃないと思います。

 確かにミハル姉は女神と呼ばれるほどの力を授かっているみたいですけど。

 月の住人が宿っているのはこの蒼い珠なんですから」


差し出したブレスレットに輝く魔法の石。

ミハルの始りの刻から持たれていた不思議な石。


世界を破滅から救えるのは・・・石の力だけなのか?


マモルの手にある蒼き珠


真実は何処にあるというのか?

ミハルを取り戻さずともケラウノスを破壊出来るというのか?


今、古の伝説は終末の時を教えていた


次回 永遠に紡がれる物語 Together Forever EP1The Blue Jewel<蒼き珠> Part6


君はあたらなる希望を宿せるか?贈られた力を発揮出来るのか?!

人類に残された時間は少ない 残り16日!

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