表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
596/632

第6章 終わる世界 EP10 End Of The World<終わる世界に>Part9 章完結話

悪魔ミハル獣耳バージョンを< 加純 >様が描いてくださいました。

挿絵(By みてみん)

本当にありがとうございました


<加純>様のマイページはコチラ↓

https://mypage.syosetu.com/793065


第6章  最終話

 終わる世界

第3艦隊にフェアリア皇国艦隊が加わった。

しかし、第3艦隊旗艦<金剛>では・・・


「もう応急修理だけでは戦闘継続は不可能と思われる・・・」


仁科司令官が苦渋の選択を決めていた。


「本艦と護衛の夕立で生存者を後方へと退避させる・・・宜しいですね」


通信士官に配下の駆逐艦へと下令するように命じる。


「あの子の事だから、なまじ普通の事では引き下がらないでしょうけど。

 今度ばかりは命令を聴いて貰わないとね・・・夕立」


たったの一隻だけ無事に生き残った駆逐艦も、魚雷を撃ち尽くしては闘い様もない。

フェアリア艦隊に一隻だけで加わったとしても足手纏いになるだけであろう。


そう考えた仁科司令官の決断に、迷いは感じられなかった。


「反転180度!これより手近な港まで後退する。

 各員は浮遊者に注意せよ、救難配置となせ!」


<金剛>自体も左舷に傾斜した状態で航行している。

無事なように観えていた夕立も、航空攻撃で至近弾でも喰らったのか速力が低下しているようだった。


「「夕立!我に続行せよ!」」


信号機を掲げた旗艦が舵を切って、進路を変えていく。

付き従う駆逐艦も舵を切った。


夕立が続行して来るのを観た仁科司令が、<薩摩>も続くとばかり思っていたが。


「司令!<薩摩>が着いてきません!」


見張り員の声に振り返る。


「源田2佐に命令せよ、本艦に続けと!」


仁科が命じた時、先に通信士官が報告を入れる。


「<薩摩>艦長源田2佐から通信!

 <<我、敵本拠地への侵攻作戦に加わるモノとす>>・・・です」


仁科少将は艦橋から後方が観えるブルワークまで走り出た。


「源田艦長!傷ついた艦で・・・なぜ?」


後方に観えていた<薩摩>がすれ違う様に近寄って来ると。


「おい、誰か双眼鏡を貸してくれ!」


近くの見張り員に双眼鏡を借りると、<薩摩>の第1艦橋へ視線を向ける。

疵付き、煙を薄く靡かせて進み来る<薩摩>艦橋で・・・


「そうか・・・お父様と一緒に闘うのだな?

 それがミノリ艦長の希望なのだな・・・」


倍率を挙げた双眼鏡に艦橋内部が映った。

こちらに向かって敬礼している娘たちの奥に、艦長帽を被ったミノリがこちらを観ていた。


その顔に仁科はハッとする。

・・・訣別。

そう、はっきりと分かる・・・死を賭してでも闘う決意の表情が。


「父と共に果てる気か?

 それとも乗員達を想って・・・」


そこまで言った時、自分の考えが間違っている事に気が付いた。


「違う・・・あの子達は・・・もっと大きな事を果たそうとしているのだ。

 ミノリ達は世界を護る為に闘い抜こうとしているのだ。

 大切な人の為、大切な家族の為・・・そして友と共に闘おうとしているのだ」


一蓮托生・・・友と仲間と・・・

自分が進むべき道は世界を救う事なり・・・そうとでも言うのか?


仁科司令官は双眼鏡を降ろし、<薩摩>に向かって敬礼を返す。

命令に従わず、一艦でも多く戦力たらんとする決意。

仁科司令官は艦橋へと戻ると。


「<薩摩>に信号!

 <<貴艦はこれよりフェアリア艦隊と合流、指揮下に入れ>>・・・以上だ」


通信士官に速やかなる伝達を命じるのだった。




「<金剛>より通信!本艦はフェアリア艦隊に合流されたしとのことです!」


ミツル航海長が通信士からの報告を復唱する。


「よし、只今よりフェアリア旗艦に続行する!おもぉーかじぃ!」


ミノリは右舷に観える巨大戦艦に近寄らせる。

日の本戦艦に良く似た形状の塔型艦橋。

前部に2基備えつけられ後部にも1基配された主砲。

巨大な戦艦に搭載されてある主砲塔から延びる3本の砲身が眼を惹く。


「大きいな・・・どれくらいあるんだろうか、砲径は・・・」


砲術長のレナ3尉がモニターに映った砲身に興味を惹かれて呟く。


「大きさの割に早いな・・・何ノットだせるのかなぁ?」


航海長のミツル3尉が艦首に上がる波の高さを観ながら首を捻った。


士官達の疑問も当然だった。

フェアリア海軍にあれ程の巨艦があったとも思えない。

それに、あの艦体はどうみても日の本海軍の造艦に観える。


「もしかして・・・あれが噂に聞いていた<大和型やまとがた>なのか?」


しかし、日の本から遠く離れたこの海上に新鋭戦艦が現れるとも思えない。


「まさか・・・まさか。あの艦も?」


自分達が乗っている艦と同じ。


「航宙戦艦なのか?!」


世界に一隻しかないと思い込んでいた航宙戦艦が、新たに造られていたのでは・・・


ミノリの疑問は直ぐに判る事になる・・・敵の出現で。




空の上で・・・魔法衣を着た者同士が話し合う。

助けられた者と助けに現れた者同士が。


「中島3尉、ミハル姉は独りで行ったんですね?」


少年の口から辛い一言が訊ねてくる。


「そうや。ウチが停めれへんかったのが悪かったんや。

 ウチの目の前でミハルは消えたんや・・・奴等に連れられて・・・」


後は言葉にならなかった。

弟を前にして、罪の意識にさいなまされて。


「そうだったんですか・・・やっぱり。

 それで・・・何処に連れて行かれたか判りませんか?」


ホマレはマモルの言葉に驚く。

姉が連れて行かれた事を知っていたかのように話す弟に。


「マモル君、アンタは・・・ミハルが連れて行かれたのを知っていたんか?

 どうしてなんや?なぜそう平然と聞けるんや?」


ホマレは肉親の行方がまたも失われたというのに、驚く事もしない弟に訊いた。

なぜ、そんな風にしていられるのかと。


「いえ、知っていた訳ではありません。

 それに平然と聞いた訳でもないですから。

 僕も本当は驚いたし、悲しかったんです・・・けど」


マモルは答えて右手を差し出すと。


「これが・・・教えたんです。

 この石が心に告げたのです、ミハル姉は死んではいないと。

 僕がここに来たのもこの石の所為せい

 僕が空の上で闘えるのもこの石のおかげ・・・」


ホマレの前に差し出された右手に光るのは。


「魔法石・・・デバイス。

 アンタのデバイスが教えたと言うんやな?」


蒼く輝く魔法石に眼を惹かれ、力を示す強さを感じ取った。

差し出していた魔法石を胸元に戻したマモルが首を振る。


「いいえ、中島3尉。この石は母さんの物なのです以前は。

 でも・・・本当はミハル姉の物なんです、双璧の魔女が宿っていた魔法石。

 この石がミハル姉の在処を教えてくれているのです」


そう答えたマモルが前方の空を見上げる。


「そうなんや・・・ミハルの石やったんか?

 で?その石はミハルがどこに居るのかも教えるんやな?」


蒼き空を見上げる弟に、魔法石は何を示しているのかを訊ねる。


「はい、教えてくれてますから。

 近づけば・・・近づく事が出来れば。

 だから僕は此処まで来たのです・・・ミハル姉を助けに」


蒼き空を見上げるマモルが、魔法石からデバイス槍を取り出す。


「その槍が・・・アンタのデバイスなんやな?

 それが双璧の魔女から授かった槍なんやな?」


槍を手に持つマモルが顎を引いて頷いたように観ていたが・・・


「中島3尉、もし弾がないのなら。

 直ぐに母艦へ戻ってください。新手が現れますよ!」


頷いたように観えたのはマモルの石が敵を察知したから、上目使いに見据えての事の様だった。


「なんやて?!新手やと?何処から来たんや?!」


マモルが見据える空には、何も観えはしていなかったが。


「うん?!あの雲は?いつのまに?」


マモルが見据える先に、黒雲が流れ飛んで来ていた。


「あの雲が。あの中に何者かが居るんです。

 しかも・・・かなりの力を持っている・・・神みたいなのです」


デバイス槍を機銃に替えたマモルが振り向き。


「中島3尉は直ぐに母艦へ戻って!

 艦隊にこの事を知らせてください、僕に構わず!」


目上の魔砲師に向かって頼んだ。


「なんやて?!君をほったらかしにして戻れやと?!

 そないな事が出来る訳があらへんやろ!」


たちどころに断るホマレ。

しかし、弟は姉にも増して気が強かった。


「いいから戻って!

 あなたが居れば足手纏いなんです!

 僕が行ってくださいと言ってるんだから、早く母艦へ戻って!」


有無を言わさない一声で、ホマレを睨む。


「うっ・・・解った・・・アンタの言う通りにする」


年下なのに、まるで兄か父が命じた様な気になる。


「すみません・・・大きな口を利いてしまって。

 でも、僕がここで闘うのはミハル姉の為なんです。

 みんなでミハル姉を助け出すって約束したから・・・」


空を睨んだまま、マモルは謝る。

右手に持った機銃の安全装置を解除しながら。


「マモル君・・・みんなって?誰と誰の事なんや?」


後退りながら弟に訊くホマレ。

離れて行く魔砲師ホマレに、ふっと息を吐いたマモルが振り返り、


「僕の仲間・・・大切な友と・・・僕の両親ですよ!」


教えた弟の顔が微笑みを浮かべていた。




「「そう・・・私の娘を取り返す。

  大切な・・・とても大切なモノを・・・」」


戦艦<フェアリア>の魔鋼機械が呟く。


「そうだな・・・ミユキ」


艦長が頷き・・・


「主砲魔鋼弾装填!目標、現れ出る<魔神>!」


戦闘を下令する。

主砲が生き物のように鎌首を擡げる。


「もし敵が手強いのならば・・・魔鋼状態へ移行する!」


艦長マコト少将がメインコンピューターにインプットを命じた。


「了解!本艦只今出力120パーセント!

 いつでも魔鋼化可能です!」


操艦を司る魔砲師が茶色の髪を振り立たせ答える。


「宜しい、防御シールド展開用意!マジカ君、用意はいいかね?」


金髪の少佐は艦長に指を立てると。


「良いですわよマコトおじ様。いつでも防いでご覧にいれますわ!」


ニヤリと白い歯を見せて笑う。


「「あなた・・・マモル一人に闘わせないで」」


<フェアリア>が現れる<魔神>との決戦に備える時。


「来た・・・やっぱり。

 闇の波動が溢れているね・・・周りに向けて放っているんだね」


マモルの前に現れる。

黒雲を纏った<魔神>・・・


闇のベールに包まれ、弟の前に現れ出る。



・・・茶色に染められた長い髪を振り乱し。


・・・妖し気な魔法衣を着た娘が・・・



「「・・・あなた・・・」」


ミユキが求める。


「ああ・・・その時が来てしまうのか?」


マコトが神の神託を思い出す。


「・・・倒す。倒さないといけないんだ・・・僕が」


マモルがデバイス機銃を握り締める。


紅き澱んだ瞳を向けている<魔神>。

その姿は・・・紫に澱んだ・・・悪魔の・・・ミハル


挿絵(By みてみん)

ミハルは大魔王サタン下僕しもべと化した・・・


人類に残された希望は潰えたのか?


人類ひとに残された時間は最早幾許もない・・・

ミハルを助け出そうとする者は何処に居るというのか?


今。

人類の未来を賭けた闘いが、最期を迎えようとしていた・・・

最後の時を迎えんとするのは人類か?

それとも<無>を希求する悪魔なのか?


次回 第7章 永遠に紡がれる物語 Together Forever EP1The Blue Jewel<蒼き珠> Part1


君は蒼き珠に何を願うのか?始まりの魔法石に何を求めるというのか?


人類消滅までにミハルを救い出せるか?!残りは20日!!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ