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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep2伝説の魔女と皇女 act6 2人の別れと闇の到来

伝説の王女リインはロッソアの軍を打ち破り、ミコトとの契約も終わりの時を迎える。


(作者・注)今回から真面目な物語になります。

お好きな方はごゆっくりと。

そうでない方にもそれなりに。では、どうぞ。

国境くにざかいで・・・


「これでよし。ロッソアの軍は国外へ追い出せたわ!」


リインが兵達の前で剣を突き上げ勝ち鬨を上げる。


「姫!漸く我々の国にも平和が戻るのですね!」


兵達が喜びの声を上げる。


「そうよ。我々の国は再び平和が訪れる。

 やっと闘わずに済む幸せが返ってくるのよ!」


リインが喜びに溢れる笑顔を、兵達の前で見せた。

その横で槍に腰を降ろした巫女姿のミコトが、少し寂しそうな顔をしてリインを見ていた。


「ミコト?どうしてそんな寂しそうな顔をしているの?」


リインが気付いて不思議そうに首を傾げると、ミコトが悲し気な瞳で観ていた。


「ねえリイン。これであなたの願いは叶ったんだね」


ミコトが遠く遥か彼方のロッソアの大地を見て呟く。


「え?願い・・・私の?」


リインはその時気付いた。

願いが果たされたらミコトは行ってしまう事に。


「ミコト・・・誓約の事を言ったのね?」


リインは槍に座って宙に浮きだしたミコトに訊く。


ロッソアの地を見続けていたミコトが頷く。


「果たされたのなら、私がもうここに居る理由が無いから」


ポツリとミコトは言ってリインに振り返る。

その瞳には大粒の涙が光っていた。


「ミコト!行っては駄目。

 あなたを離したくない。

 ミコトと別れたくないの。ずっと私の傍に居て!」


リインが手を伸ばしてミコトを求める。


「あははっ、駄目だよリイン。

 私はいかなくっちゃいけないんだ。

 だって早く印度へ行って経典を貰って帝へ渡さないと、

 今度こそお師匠様におしり百叩きされちゃうから」


悲し気なミコトは涙を零して微笑んだ。


「い、嫌よ。ミコトを離したくない。

 私はミコトとずっと一緒に居たいの。お願いっ行かないでっ!」


リインは両手を伸ばしてミコトを求めたが・・・


「さようならリイン。

 私がどうしても必要になった時、

 リインが苦しんだ時にはネックレスにお願いしてみて。

 もしかしたらだけど、私が現れるかもしれないよ」


ミコトが微笑みながら別れの言葉を口にする。


「神官巫女ミコト。フェアリア王国リイン姫の御多幸をお祈りしております。さようならっ!」


右手の宝珠を光らせて、槍に座ったまま上空へと駆け上がっていく。


「ミコト。ミコト!返って!私の元へ戻って来て!」


リインがミコトに叫ぶ。

魔砲の使い手は空を飛ぶ。

想いを断ち切るかのように・・・


大勢の兵士が見守る中、ミコトは空の彼方へ消えて行った。




リインは一人、涙に暮れて過ごした。


胸のネックレスと神器の剣だけが、

ミコトとの繋がり、名残だった・・・


ロッソアの軍が退いた後、王の体に異変が起きた。

急に病の床に伏せ、起き上がることも出来なくなったのだ。


国王が急に倒れてしまった為、政治が滞り始めた。

王はリインに後を任せようと考えたが、

まだ政治の事を良く解っていないリインの後見人として、

腹違いの弟、ルキフェルに執政を委ねた。


「叔父様。民にあの様な厳しい税を課せられても良いのですか?」


リインが国民の事を想って心配そうに訊ねた。


「リイン姫。

 その様な甘い事を言っていては、また他の国に攻め込まれてしまいますぞ。

 民からの税で国力を就けねばまた先の戦と同じ様に侵攻されるのです」


執権ルキフェルがリインに手厳しく説教する。


「は、はい。ですが民の暮らしを苦しめてしまっては・・・」


リインが悲しそうに俯く。


「姫。そんな哀れみの感情を持っていては国は治まりませんぞ。

 これは民を想っての事なのです。

 外敵から自国を守る。これが国の国たる由縁です。

 自分の身は自分で護らねばなりませんのですぞ」


そうリインに教えると、さっさと広間から出て行こうとするルキフェルに。


「そうでしょうか。

 それよりも他国と仲良くして争いなど無くしてしまう事の方が良いと思うのです」


リインはルキフェルに自分の想いを告げた。


「リイン姫はお優しい。

 ですがその優しさが自分の身を滅ぼさねば宜しいのですが・・・な」


ルキフェルはニヤリとリインを見て笑った。


ー  私はルキフェル叔父様が苦手。

   どうしてお父様が急に体を壊されたのか。

   戦勝の祝いの時、おじ様とグラスを交わされてから急にお倒れになった。

   何かの偶然?それとも・・・



リインはルキフェル公爵が急に現れて、父王に近付いた事が気になって仕方が無かった。


そのルキフェル公爵はリインの父フェアリアル国王の腹違いの弟で、

長らく公爵として国政から離れていた。

リイン達の活躍でロッソアを撃退してから急に王宮に現れ、

何かと王位の話を持ち出す様になったその先、現王フェアリアルが病に倒れた。


そして、歳若いリインの執政を任す様に王に迫り実現した。

今や、国政はこの執権ルキフェルの善い様にされ、国民はその悪政に苦しみ始めた。




「姫様、またお忍びですか?」


お付の女官に呼び止められたリインが。


「うん。お父様には内緒にしておいてね」


町娘の格好をしたリインが、背中に布で覆った長い棒の様な物を背負って宮殿を後にした。

その様子を物陰から見ていたルキフェルはニヤリと笑う。


町へ出向いて民の暮らし振りをその瞳で見るのがリインの唯一つの楽しみだった。


「ああ。この国もだんだん生活が苦しくなってきたなあ」


町行く人々から、こんな愚痴が出る様になって来ているのをリインは悲しく思った。


ー  これもおじ様の圧政のせいなんだ。

   どうして戦争の準備なんているのかしら・・・


リインが町をうろつきながら考えていると誰かの鳴き声が耳に入る。


「うわああん。うわあああんっ!」


声に振り向くと、一人の女の子が泣いていた。


「どうしたの?そんなに泣いて」


リインは泣き続ける女の子に話し掛ける。


「お母さんが病気なの。

 お医者様の所へ行ってお薬を貰おうとしたら。

 お金が足らないって言われて、お薬貰えなかったの」


粗末な身なりの女の子がリインに泣いている訳を話す。


「そう。それは困ったわね。お父様はどうされているの?」


リインが父親の事を訊ねると、泣き止んだ子が俯きながら答えた。


「お父さん、戦争で亡くなったの。

 だからお母さんと2人で働いていたんだけど、

 お母さんが病気になって働けなくなってしまって、食べる物も買えなくなって・・・」


女の子の言葉にリインは強い衝撃を覚えた。


ー  戦争でこの子のお父様が・・・やはり間違っている。

   戦争は人を不幸にするだけ。

   戦争に備えるより皆が泣かなくて済む社会を作る方が大事なのに・・・



少し考えていたリインはその女の子に。


「ねぇ、お医者様の所へ一緒に行きましょう。私が話をしてあげるから」


リインが泣き止んだ女の子に薬を貰いに一緒に行く様に勧めると。


「本当?お薬貰えるの?」


女の子が喜んでリインの勧めを受け入れた。



女の子と共に医者の元へ行って薬を出して欲しいと言ったのだが。


「駄目駄目。薬代を払ってもらわなきゃ。

 こっちも税金が高くてやっていかれなくなる。

 払ってもらわないと出せませんからね」


医者は代金を払えと言って譲らなかった。


融通の利かない医者に業を煮やしたリインが。


「解った。払えばいいのだな!」


泣き出しそうな女の子を見て、リインは金貨を一枚医者へ渡すと。


「さあ、この子の母親の薬を出して貰おうか!」


蔑む様な目で医者に言った。



薬を貰って喜ぶ女の子の頭を撫でてやりながら。


「これでお母様の病気が治るといいね」


優しい瞳で女の子を慰める。


「お姉ちゃんはお金持ちなの?

 見ず知らずの私にこんなに親切にしてくれて。お姉ちゃんのお名前は?」


女の子に言われてドキリと心が痛んだ。


「リイン・・・リインって言うの。私・・・」


女の子はリインをジロジロと見て、


「お姉ちゃんの名前、この国のお姫様と同じなんだね。

 でもお姉ちゃんのほうが優しいんだね。

 私はルー。また会おうね!」


女の子、ルーはそう言うと元気に手を振って走って行った。


「ああ。またね」


リインも走り去るルーを見て手を振った。



リインはその時気を抜いていたのかもしれない。

ルーを見送って手を振っている後ろから数人の男が近付いて来るのが解らなかった。


「お嬢さん。ちょっと聞きたいのですが、あなたはリイン姫ですよね?」


不意に後から声を掛けられて振り返ると。


((ボグッ))


腹部に強烈な痛みが襲う。


「あっ!ぐっ・・・」


息が詰まり声も出せずに倒れてしまう。


男達はリインが背負った布で覆った棒の様な物を取り上げ、中身を確認する。


「おおっ、これだこれだ。正しく神器の剣!」


布から出て来たのはリインの力を現す神具。

肌身離さず何時も持ち歩いている神の剣。


「さあ、これを持って行けば、オレ達は一生楽に暮せるぞ!」


男達は喜び勇んで剣を持ち去る。


霞む瞳で剣を持ち去って行く男達に手を伸ばす。


「ま、待って。それを返して・・・お願い返して!」


そう呟くのがやっとで、リインは街角で気を失ってしまった・・・




リインは命の次に大事な神の剣を奪われてしまい、失望のどん底に堕ちる。

そんな時に執権ルキフェルが本性を現して襲い掛かって来た。

伝説の王女リインの運命は。

フェアリア王国の運命は・・・どうなる?

次回 リインの闘い

君は立ち向かう術を知る・・・本当の願いと共に

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