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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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第6章 終わる世界 Ep9 Battle at Journey's End <旅路の果てに立ちはだかる者 >Part8

けしからん損な娘も・・・これで見納めでしょうか?


挿絵(By みてみん)



ミハル・・・フォーエバー


立ちはだかる者がゆっくりと右手を差し出す。

汚された金髪を靡かせて・・・


「リ・・・リーン!

 私だよっ、ミハルだよ?!」


剣を拾う事さえも忘れて、逢いたかった人に駆け寄るミハル。


「さぁ、ここから出ようよ。私と一緒に脱出しようよ!」


操られていると知りながらも、リーンの心に訴えかける。

突き出された右手に、紅き魔砲の弾が現れ出ても。


「お願いリーン聴いて!

 あなたは操られているの!今私が解放してあげるから!

 私の力で、解き放ってあげるからね!」


<理の女神>として覚醒した事をミハルは感謝する。

自分の力で愛しき人を取り戻せると思って。


すぐ傍まで来た時。

自分の考えが甘い事を教えられる・・・


((バガッ))


リーンの手から紅き魔砲が飛び来る。

瞬時に理の盾で防いだのだが、リーンの魔砲力を防ぐには完全ではなかった。


「ううっ?!」


強力な魔砲によって、ミハルの手から盾が零れ落ちる。


「リ・・・リーン。直ぐに解放してあげるね・・・」


痺れる左手を庇いながらも足を進ませたミハルに。


「解放・・・解放ですって?

 お前はこのバリフィスを解き放つというのか?

 審判を告げる者たる私を解放出来るとでも思うのか?」


邪なる紅き瞳がミハルに向けられる。

瞳に映るミハルの顔が悲しそうに眼を伏せる。


「リーン、可哀想・・・そんなに辛そうな顔をして。

 あんなに麗しかった顔が闇に染められちゃってるよ?」


心の中には、きっと自分の大好きなリーンが宿っているものとばかりに話しかける。


「ねぇリーン、聴いて?

 私はミハル・・・あなたのペットのミハルだよ?

 だから私に言って・・・ペットになれって。

 そうすれば思い出せるから、私の事が・・・私とリーンが愛し合っていたのが」


差し出す右手が言葉を求める。

魔法の合言葉を・・・繋がり合う心を。


ミハルに魔砲を撃たずに居るリーンに、少しづつ近寄る。

何かに気付いてくれたのかと希望を抱いて。


「・・・あなたは・・・私の何を知っているの?」


ポツリと漏らす声にミハルの眉が跳ね上がる。


「そう!リーン!あなたはリーン!

 私の愛してる大切な人なのっ!私を待ってくれていたのよ?!」


リーンの右手から紅き魔砲の光が消えたのを観たミハルが、一気に傍に寄る。


「だからっ!思い出して私の事も。

 あなたがリーンである事にも!今記憶を返してあげるからね!」


リーンが自分を認めようとしていると思い込んでしまったミハルが、

胸の魔法石からネックレスを取り出そうと手を翳した時。


「そう・・・そこに隠していたのね?

 いけない子だわあなたは・・・他人の記憶を持っているなんて・・・」


口元を歪ませ嗤うリーンに気が付いた時には・・・


「あっ?!」


叫ぶのがやっとだった。

近付いたミハルの胸に右手を突き立てたリーンが魔法石を掴んだ。

太陽神ユースティアの魔法石を。


「返して貰うわ!お前から!」


その眼は、その口は・・・闇に閉ざされたまま。


「リッリーン?!」


審判の女神バリフィスの魔力が、理の女神に注がれる。


「きゃあああっ?!リーンやめてぇっ?!」


邪なる力がミハルの魔法石を穢し、金色の魔法石を捥ぎ取ろうとする。

リーンの右手が更に力を加えると女神の魔法衣がほころび始めてしまう。


((ブチブチブチ))


胸元に着けられてある所から徐々に剥がされ始める。


「うあああぁっ?!リーンっ、壊れるっ壊れちゃうよぉっ?!」


全身を襲う激痛と愛する人に襲われている悲しさに、身を焦がすミハルの叫びも届かないのか。


「壊れる?そう・・・じゃあ・・・壊れちゃいなさい!」


苦痛に歪むミハルの顔を見下ろすリーンの顔が残酷に嘲る。


「そぉーらぁっ!これでも喰らいなさいな!」


左手を天に翳したリーンに、ユピテルからの魔力が与えられる。


「全能の神ユピテル様からの贈り物よ!あなたに注いであげるわ!」


苦痛に歪む目をリーンに向けるミハル。

今、目の前で苦しめているのがリーンなのか別人なのか・・・


悲しみと苦痛に歪む顔で必死に堪えていたのだが・・・


「うっ・・・うっ・・・お願いリーン。

 私の声が届くのなら、もうやめて・・・元のリーンに戻って・・・」


最期の抵抗の様に声の限りに訴えるのだった。


「良いわよ、戻らせて貰うわ!この記憶を取り戻してね!」


ミハルに預けた審判の記憶を取り戻す事になれば。


「そしてユピテル様に差し出すの!それで全ては終えられる!

 私も、あなたも。みんなみんな・・・消滅すれば良いのよ!」


バリフィスたる女神の言葉と共に、ミハルへ強烈な魔力が注がれた。


((バチバチバチ))


スパークがミハルの全身を襲う。

声に出せない程の苦痛と悲しさを与える電撃に因ってミハルの身体が仰け反る。


リーンに掴まれた太陽神ユースティアの魔法石がミハルから捥ぎ取られる時。


<ミハルッ!しっかりしてっ、今助けるっ!>


ミハルの惨状を見かねたリィ君が飛び出そうとしたが。


<駄・・・目・・・だ・・・よ、リィ君・・・

 約束だったでしょ・・・護って。お願いだから・・・その石を護って>


ミハルの心に停められる。


<なぜ?!ミハルはどうなっても良いと言うの?>


抗う龍の子は堪らず叫んだ。

助けたいと思うのが当たり前の事だと言いたくて。

しかし・・・ミハルは断る。


<違うよリィ君・・・二人がかりで闘っても。

 私の力ではユピテルには歯が立たない・・・残念だけど。

 リーンさえ助けられない私に・・・奴には勝つ事は出来そうにないんだ>


ミハルの心に龍の子が絶望を感じる・・・


<でもね・・・諦めてはいないよ。

 人の世界が滅ぶなんて思っちゃいないから・・・

 リィ君が居てくれるのなら・・・そこで護ってくれるのなら。

 きっといつかは大魔王サタンを倒せるはずだから・・・>


絶望を思いかけたリィ君に希望を教えるミハルの心。


<だから、お願いだよリィ君。

 私がどんな目にあったとしても、出てきちゃ駄目。

 どんなに穢されたとしても、闇に貶められても。

 きっと私の換わりが現れてくれる、希望の人が来てくれるから・・・

 その時まで護ると約束して・・・守ると・・・誓って?>


リーンの手に捥ぎ取られてしまう瞬間、龍の子リィ君は決めた。

ミハルの想いを無碍にしないと。


<約束するよミハル!必ず守り通してみせる!必ずミハルとの約束を果たしてみせる!>


奪い取られてしまった。

リーンの手の中に・・・


挿絵(By みてみん)


女神の魔法石を奪われてしまったミハルの姿が変わる。

白き女神の魔法衣が消え去り、魔砲師のレオタード姿へと。


「う・・・あぁ・・・」


力尽きるように、ミハルは崩れ落ちる。

絶つ事さえもままならなくなり、その場に寝そべってしまう。


「リ・・・リーン・・・」


震える手で愛する人の名を呼ぶミハルに。


挿絵(By みてみん)


「ふふふっ!手に入れたわ!やっと取り戻したのよ!

 これで私は壊されずに済むのよねユピテル様!

 さぁ!これで役目は終わったのよ、私の!」


紅き瞳でミハルを見下ろすリーンが嘲笑う。


「ついでにこの娘を壊しちゃいましょうか?

 抗う事さえ出来ない様に、滅茶苦茶にしてやりましょうか?」


右手を翳してミハルに迫るリーンが全能の神に訊く。


「「待てバリフィス。

  未だ目覚めてはおらんらしいのでな。壊してしまえば後の祭りだ・・・」」


残酷な者同士が力を失った女神を嘲笑う。


「それでは・・・如何なさいます?

 インターフェースを取り出してしまえば良いかと思いますが?」


リーンの眼が妖しく光る。


「「取り出したとしても起動回路のパスワードが解らぬ。

  やはり何かが足らんようだ・・・初めにはあった筈の何かが足らんのだ。

  それが解るまでこの娘を管理しなければならない」」


大魔王サタンの声がリーンを諫めたが。


「そうでしたら・・・この娘が逆らおうとしない様にしなければなりません。

 未だに歯向かう気を無くしてはおらないようですので。

 ・・・大人しくさせましょうか?

 歯向かう気が失せる様に、壊さないぎりぎりまで弄んでやりましょうか?」


妖しい瞳でミハルを見下ろしたリーンが迫る。


「う・・・あっ。リーン・・・やめて。お願いやめてぇっ?!」


涙を浮かべて哀願するミハルの身体に覆いかぶさるリーン。

紅き眼に浮かぶ邪な光に、ミハルの恐怖が倍増される。


「「好きにするが善い。壊さぬ程度なら構わぬ・・・

  諦めさせてやるが良い・・・思い知らせてやれば良い・・・」」


悪魔の声がリーンをけしかける。


「御意・・・」


覆いかぶさったリーンの顔がミハルのお腹に吸い付く。


「あなた・・・知っているみたいね?

 これから私が何をするのかを・・・玩具おもちゃにしてあげるわ!」


吸い付きながらリーンが言うのは・・・


「リ・・・リーン!嫌ぁーっ?!やだやだやだぁーっ!」


もはや女神の力を失った者の最期の力までもが、闇の力で吸い取られていく。

生きる力も、精神力も・・・そして。


「うっきゃぁああっ?!リーンっ苦しいぃっ!」


挿絵(By みてみん)


腹部に手を翳され、穢されていくミハルが必死に抵抗を試みるが。


「まだ逆らおうというのね?性のない子ねぇ・・・分かったわ!

 壊れない程度の責めを与えてあげるからね・・・覚悟しなさい!」


苦痛に歪むミハルの眼に、それが焼き付く。

女神の手に持たれた責め具。

何処から出したというのか、悍ましい姿をみせる物が。


「ふふふっ!これを知ってるかしら?

 闇の眷属・・・身体の中に潜り込んで暴れまわるのよ?

 あなたが壊れる程の苦痛を与えてくれるでしょうね、このスライムが!」


ヌチョリとしたスライムが足元に落される。

靴先に獲り憑いた半透明の異物が這い上がって来る。

力尽きたミハルには防ぐ手立ても、抗う力さえも残されてはいなかった。


「あああ・・・うそ。

 こんなの・・・嘘・・・だよね?リーン・・・」


脹脛から太ももまではいずり上がって来る、

気色の悪い物体に怯えるミハルが助けを求めてリーンを観る。


「そうね、あなたが私の物になると誓うのなら。

 そいつを消し去ってやっても良いわよ・・・私の玩具になると誓うのならね」


嘲るリーンが迫る間にも、ミハルの顔が真っ青になる。


((グチュル))


「嫌ぁあぁっ?!

 そんな・・・そんな事っ?!

 やめてぇっそっ、それだけは!

 ひっ?!いっ!・・・うわああああっ?!」


断末魔の叫びが響く。


這い上がって来る異物に、気が遠くなってしまう。

身体の芯に潜り込むもうとする瞬間に・・・


「あらあら。これからだって言うのに・・・

 気絶しちゃったの・・・つまんない」


スライムをひょいと消したリーンが、失神してしまったミハルを見下ろして。


「まあ良いわ。これからもっと無茶苦茶に弄んであげる。

 パスワードもインターフェースも全て曝け出させてあげるからね・・・

 審判の時までにね。

 ・・・あなたが耐えられる筈はないもの・・・私の責め苦にはね」


不気味に笑うリーンの足元に転がる娘は、もう気力さえも失ってしまった。


抗う事だけが自分に出来る戦いなのだと。

貶められない事だけが大切な人の為なのだと。


ミハルは・・・堕ちる。


いつかは・・・貶められて・・・


「あーっはっはっはっ!良い気味だわデザイア!」


闇に貶められている女神の嘲り嗤う声が神殿に木霊する・・・


挿絵(By みてみん)



ミハルが女神達の言うパスワードを喋ってしまうのが早いのか。

リーン達に壊されてしまうのが早いのか・・・

どちらにせよミハルには希望は失われてしまったというのか・・・


その前に誰が助けられるというのか?

神々に対抗できる力を宿した者が存在すると言うのか?


龍の子はひたすら待つ。

約束を守る為に・・・彼女と交わした誓いを果たす為に・・・

女神の魔法石の中で


希望は潰えたのか?

光は甦らないのか?


愛する者の手で貶められようとするミハルに救援の手が差し伸べられるのは何時の事か?


神々に抗う者達に新たなる希望が現れる・・・

世界の終わる時が近付いていた・・・その時に!


次回 終わる世界 ラストEP10 End Of The World<終わる世界に>Part1

君は倒せるのか?圧倒的戦力を前にして・・・

人類消滅まで ・・・ 後 28 日 !

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